第167話 エルフとの宴席
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大広間に戻ると、俺が料理を運んでいるのを見て、シアが大喜びしながら駆け寄ってきた。
「キノコの匂いするっ!!キノコご飯作ってくれたの?」
「あぁ、もちろんだよ。」
「やったー!!」
そしてみんなで一つの大きなテーブルを囲んで座ろうとすると、すかさずカリンさんとニーアさんが滑り込むように俺の隣にくっつくように座った。
「くっくっく、ヒイラギ殿今宵はワシがもてなす立場故、隣……失礼するのじゃ。」
「せ、精一杯おもてなしさせてもらいます。」
すると、普段俺の隣を独占していたシアがニーアさんの膝の上を通って、俺の膝の上にちょこんと座る。
「シアは今日ここで食べるっ!!」
「ん、いいぞ。」
「えへへ~♪」
シアの頭を撫でていると、ニーアさんからスッとお酒の入った徳利のような瓶が差し出されてくる。
「これは、エルフの国でしか流通していないお酒なんです。エルフは100歳になると、これをカリン様と一緒に飲むのが、成人の儀式なんですよ。」
「そうなんですね。」
こちらもお酒を注ぐために置いてあった盃を手に取って、その徳利のような瓶に近づけると、ニーアさんが綺麗な翡翠色のお酒を少し注いでくれた。ふわっとハーブのような香りが鼻を抜けていく。
「では残りはワシが注がせてもらおうかの。ヒイラギ殿、こちらへ盃を。」
「あ、ありがとうございます。」
カリンさんの方に盃を向けると、今度はなみなみとそのお酒が注がれた。
「ミカミ殿も酒はいけるかの?」
「あ、ぜひとももらいたいな~。」
「ではこちらの妖精用の盃に注がせてもらうのじゃ。」
驚くことにちゃんと妖精用の盃というものがあるらしく、カリンさんはどこからかミニサイズの盃を取り出した。
「あえっ!?ちゃんと妖精用の器ってあるんだ!!」
「この国ならば普通に妖精がエルフと共に暮らしておる故、妖精用の食器なども売っておるぞ。」
「え、それめっちゃ欲しい!!柊君、帰る前に買っていこうよ!!」
「ですねミカミさん。」
「ん、なんじゃそういうものが望みならば早く言えばこちらで用意したというに……。」
カリンさんが控えていたフィースタさんに目配せすると、彼女はスッと立ち上がり、ぺこりとお辞儀をしてどこかへと行ってしまった。
「さて、では宴を始めるとしようかの。人間の酒の様式に合わせるならば、乾杯……でよいかの?」
「はい、乾杯です。」
「かんぱ~い!!」
お酒が飲める面々で盃を軽く合わせ、まずはどんな味なのかを確かめるために、少量そのお酒を飲んでみた。すると思った通り、ミントのような爽快感のある香りが口いっぱいに広がる。そして後からウォッカを飲んだ時のような、強烈なアルコールを感じた。
「おぉっ、い、意外と強い……。」
「くく、我が国が誇る薬酒と呼ばれる特別な酒じゃ。なかなかキクじゃろう?」
「はい、久しぶりにこんな強いお酒飲みました。」
久しぶりに喉がカ~っと熱くなる感覚を味わっていると、俺の肩に座って、妖精用の盃に注がれた薬酒を飲み干していた。
「ぷっはぁ~!!いやぁ~、これ美味しいねぇ~。柊君、もう一杯注いでくれないかな?」
「ミカミさんってお酒強いですよねホント……。」
さて、じゃあ食前酒も頂いたことだし……そろそろ目の前に広がるたくさんの料理を頂こうかな。
「さてと、じゃあ料理の方もいただきます。」
「いただきま~す!!」
「うぉぉ食べるっす~!!いただきま~っす!!」
俺と同時にシアとグレイスもエルフの人達が作ってくれた料理や、キノコの炊き込みご飯を食べ始めた。
「ん~~~っ!!キノコご飯美味しいっ!!ヒイラギお兄ちゃん、おかわりある?」
「あぁ、多めに炊いたからたくさんお食べ。」
「自分も絶対おかわりするっす~!!」
美味しい料理に舌鼓を打っているシアとグレイスの様子を眺めながら、俺もキノコの炊き込みご飯を頬張った。
「んっ、やっぱり炊き込みご飯にすると、ご飯がキノコの旨味と出汁の旨味を全部吸ってくれるから、最高に美味しいな。」
「んね~、これおにぎりにして食べたい。」
「ちょっとした軽食に良いですねそれ。後で作っておきましょうか。」
俺達が並べられた料理を頬張る中、カリンさん達は俺が作ったキノコの炊き込みご飯を一口食べて、カチンと固まってしまっていた。
それに気が付いたとき、俺は思わず脳内に不安がよぎった。
「あ、あの……もしかして口に合いませんでしたか?」
そう問いかけると、カリンさん達はハッと我に返ってこちらを向いた。
「こ、これはどこの国の料理なのじゃ!?素材はわかる。このモチッとした食感の粒々は獣人族の主食のホワイトライスじゃろ?じゃが……こんな繊細な味の料理は、獣人族の国でも食ったことは無い。獣人族の料理はもっと野性味あふれるものじゃった。」
「こ、これすごく美味しいです……。」
「ね~、めちゃくちゃ美味しいよこれ。こんな味の料理ウチも初めて食べたかも。」
「よ、喜んでいただけたなら何よりでした。」
よかった……エルフの人達の味覚でも、俺が作った料理は美味しいと捉えられるらしい。最初の反応を見たときは不安だったけど、それも一気に吹き飛んだ。
嬉しいことに作った料理を絶賛されながら、カリンさん達との食事会は続き、順調に体にお酒も回ってきて、テーブルの上に並べられた料理が無くなる頃、俺は世界樹の果実で作ったデザートを準備するのだった。
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