第164話 エルフからのお礼
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カリンさんの屋敷の中に招待されて、大広間に案内されて驚いたことが一つ。この世界に来て、初めて畳という馴染みの深い存在と対面することができた。
「あっ!!畳だっ!!」
俺よりも先にその存在に喜びの反応を示したのはミカミさんだった。
「むっ、物知りじゃな。これはワシの屋敷にのみ使われておる、エルフの技術の結晶じゃ。国外への技術の漏出も禁止しておる故、知る者は僅かのはずじゃが……。」
くつくつと愉快そうに笑いながら、好奇の目線をカリンさんは俺とミカミさんに向けてくる。
「まぁ良いか。」
一度話を切り上げると、カリンさんは大広間の中心に置かれた巨大なテーブルのほうに歩いて行き、上座にある柔らかそうな座布団の上に腰を下ろした。その隣に寄り添うようにフィースタさんが座る。
「さ、好きなところに腰を掛けて良いぞ。」
そう促されると、ミカミさんが俺の耳元であることを囁いた。
「柊君。ここは一応下座に座っておこう。下座の場所はわかるね?」
「はい、大丈夫です。」
俺達は一応下座と呼ばれる場所にある座布団に座ることにした。その座布団もふかふかで柔らかく、座り心地はかなりいい。すると、一瞬カリンさんが驚いた表情を浮かべたが、すぐにまたくつくつと笑い始める。
「くっくく、バーバラの報告通り……お主らは人間らしさというものが無いのぉ。」
カリンさんはそう言いながら、パンパンと手を叩く。すると一瞬にして俺達とカリンさん達が座っていた場所が入れ替わる。
「座る場所はこうで良い。ワシらはそなたらをもてなす立場なのじゃからな。」
そして場所を入れ替えた後、カリンさんが早速ニーアさんのことについてお礼の言葉を述べてきた。
「まずはニーアを助けてくれたことに礼を言うぞ。ヒイラギ殿にミカミ殿。お礼はいらんと申されていたようじゃが、こちらとしてもそういうわけにはいかん。何か欲しいものがあれば、応えられる限りで用意させてもらうぞ。」
「そう言われても……。」
「特に欲しいものも思い浮かばぬか?別に金でもよいぞ?」
そう言うなり、カリンさんは手から大量の白金貨を溢れさせた。そしてこちらの顔色を窺ってくるが、彼女が思っていた反応ではなかったらしく、表情をしかめる。
「ふむ、莫大な金銭をちらつかせても表情一つ変えぬか。やはりワシの知っている人間の印象と、ヒイラギ殿とでは大きく違うようじゃな。」
「さっきから少し疑問だったんだけどさ、カリンちゃん……柊君を試してるのかい?」
「む、そう捉えられてしまっても仕方のないことをしてしまったな。あまりにワシの知っておる人間と印象がかけ離れておった故、少々興が乗ってしまったのじゃ。気分を害してしまったのならば、すまなかったの。」
「い、いえ、全然大丈夫ですよ。」
「……実のところ、ニーアとバーバラから聞いた話で、ヒイラギ殿であれば何を欲しがるのか、大体の予想はついておった。」
今度はパチンと指を鳴らすと、俺の目の前に魔法陣が現れて、そこから金色の桃のような果物が現れた。
「これは?」
「この国には世界樹と呼ばれる木があるのじゃ。世界樹は一年に一度金色に輝く実をつける。」
「も、もしかしてこれが……。」
「うむ。世界樹の果実……しかも今年採れたものじゃ。ヒイラギ殿であれば、こういう物の方が喜ぶのではないかと、この場にいるエルフ一同で話し合って決めておった。良ければ受け取ってくれるかの?」
「ぎゃ、逆にそんな貴重なものをもらってもいいんですか?」
「別に構わんぞ。どうせ採れた果実はワシが食うだけじゃしの。」
「じゃ、じゃあいただきます。」
「うむ!!」
世界樹の果実という金色の桃をそっと手に取って、マジックバッグの中にしまう。それを満足そうにカリンさんは見つめていた。
「さて、では一つ目の礼を受け取ってもらえたところで、今度は二つ目の礼を受け取ってもらおうかの。」
パンパンとカリンさんが手を叩くと、スッと襖が開いていろんな料理をエルフの人達が運んできてくれた。
「エルフが誇る料理と酒を、た~んと味わって帰ってもらうぞ。」
料理が配膳されていくと、下座にいたカリンさんが座布団を抱えて俺の真横に座り、グイッと肩を寄せてくる。
「ヒイラギ殿は酒はいけるクチかの?」
「まぁほどほどには……。」
「くっくっく、それはつまり強いという事じゃな?」
ニヤリとカリンさんは笑うと、徳利のような瓶をエルフの人から受け取って、こちらに見せつけるように目の前で揺らした。
そしてお酒が注がれようとしていた時、俺の膝の上に座っていたシアが、おずおずとしながら上を向いて問いかけてきた。
「ヒイラギお兄ちゃん、キノコご飯も食べたい。」
「良し来た。」
ぽんぽんとシアの頭を撫でてから、俺はカリンさんにあるお願いをした。
「カリンさん、このお屋敷のキッチンをお借りしても良いですか?」
「なんじゃ?料理の数が足りなかったかの?」
「いえ、そういうわけじゃなくて、実は今日作るって約束していた料理があったんです。」
「それはもしや甘味かっ!?」
「あ、お、お菓子じゃないんですけど……。」
「むぅ、そうか……。キッチンならばこっちじゃ、付いて参るのじゃ~。」
お菓子が無いと聞いて、カリンさんは少し残念そうな表情を浮かべていた。もてなしてもらってばっかりだし、ちょっとしたお菓子でも作ってあげようかな。
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