第162話 ニーアとバーバラとの再会
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ギルドから宿へと帰っている途中、俺の肩に座っていたミカミさんが、1つ大きなため息を吐いていた。
「はぁ〜……な〜んか上手いこといかないなぁ〜。」
「どうしたんですか?そんなため息ついちゃって。」
「今回ね、ウォークマッシュを倒してレベルアップとか、スキルの獲得とかができれば良かったんだけど……全然レベルアップもしなかったし、何かしらのスキルも入手できなかったからさぁ……。向こうの世界みたいに、上手くいかないなぁ〜って思っていたところだったのさ。」
「あはは、俺からしたらこっちの世界のほうが、人生上手くいっているような気がしますけどね。」
向こうの世界にいた時よりもよっぽどお金も稼げているし……何より今は生きていて楽しい。
「柊君がそう言ってくれると、私も救われるんだけどさぁ。」
少し表情を明るくしたミカミさんは、こちらを見上げて微笑んだ。落ち込んでいたミカミさんさんを宥めながら、宿へと向かって帰っている途中……突然後ろから声をかけられた。
「あっ!!そ、そのひ、ヒイラギさんとミカミさんですよね?」
「あれ、その声は……。」
後ろを振り返ってみると、そこには以前この町で、たくさんエルフの国の野菜や果物を売ってくれた、ニーアさんと、その姉バーバラさんが立っていた。
「あっ!!ニーアちゃんに、バーバラちゃん!!」
「ご無沙汰してました。あの時のお礼をしたくて、お2人をずっと探していたんです。」
「別にいいのに〜、ねっ?柊君?」
「はい、別にお礼なんて……。」
「いやぁ〜そう言わないでよ〜。可愛い妹のお願いってのも勿論なんだけどさ〜……。」
バーバラさんは、ずいっとこちらに顔を近づけてくると、コソコソと耳打ちしてくる。
「じ、実は族長がキミ達の顔を見てみたい〜って、言って聞かなくてさ……。」
「な、何でまたそんな事になってるんです?」
「まぁ勿論、ニーアを助けてくれたキミたちの顔を見てみたいっていうのが、族長としての本心なんだろうけど……その本心の隣に、何か違う思惑がありそうなんだよね。」
「ちなみにさバーバラちゃん、その族長の人って私達に会いたいっていう事の他に、何か違うこと言ってなかった?」
ミカミさんがそう問いかけると、バーバラさんはその族長の人の言葉を思い出して口にした。
「あ、何かキミ達の作る甘味を今一度食べたいって言ってた気がする。」
「甘味?……もしかしてお菓子のことですかね?」
「何かキミ達自身も心当たりある感じ?」
「寧ろ心当たりしか無いよね柊君。もしかしてその族長って人、お客さんとして来てたのかな〜?」
「その可能性は全然ありますね。」
そうミカミさんと話していると、ニーアさんとバーバラさんに両腕をガッチリと掴まれてしまう。
「まっ、そういう訳だから、これからエルフの国に来てもらうね?」
「えぇ!?い、今からですか!?」
「勿論、族長が癇癪起こしちゃったら怖いし……ウチらもお礼をしたいし……ねっ?」
「お、お願いします。一緒に来てください。」
絶対に俺達を逃がすつもりのない2人……。
「わ、わかりましたから、行く前に準備しないといけないので……1回宿に戻らせてください。」
「そ、そうしたらついてきてくれますか?」
うるうると涙目になりながら、上目遣いでそう問いかけてくるニーアさん。こんなの断れるわけがない。
「はい、約束します。」
約束する……と言った瞬間、ニーアさんはパァっと笑顔になって微笑んだ。
「あ、ありがとうございます!!」
「そ、それじゃあそういうわけで1回宿に……。」
そんなこんなあって2人を連れて宿に戻った後、ルカに事情を説明し、俺達がエルフの国から戻って来るまでの間、ミハエルさん達の護衛を務めてもらうこととなった。
最初は渋っていた彼女だったが、ミカミさんがお給料に色を付けることを約束すると、ビシッと敬礼して役目を全うすると言ってくれた。
そして留守の間をルカに任せることになり、シアとグレイスを連れて宿を出ると、宿の前でニーアさんとバーバラさんがこちらを待っていて、俺達の姿を見るとホッと安心したように、胸を撫で下ろしていた。
「準備はもう大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です。」
その答えに満足したのか、バーバラさんは大きく頷くと、腰に提げていたマジックバッグらしき物から、雫のような形をした、緑色の宝石を取り出した。
「バーバラちゃん、それは何?」
「これは転移石。族長から直々に任務をもらったエルフだけが借りられる、エルフの秘宝だよ。これに魔力を流すと……。」
バーバラさんがその転移石に魔力を込めると、転移石に小さな魔法陣が映り、それと全く同じものが俺達の足元に現れた。
「じゃあ行くよ〜っ。転移っ!!」
バーバラさんが天に掲げた転移石がキラリと光り、足元の魔法陣が光り輝いたと同時に、一瞬フワリと浮いたような感覚を感じた。
その次の瞬間……俺達は先ほどまでエミルの町中にいたはずなのに、爽やかな緑の森の中へと移動してきてしまっていた。
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