第161話 薬師グライ再び
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ミースさんと何気ない会話をしている最中、俺が討伐したポイズンナーガの話題が上がる。
「そういえばヒイラギさん、ポイズンナーガの皮って……捨てちゃいました?」
「ポイズンナーガの皮ですか?確か取っていたような気が……。」
マジックバッグに手を入れると、記憶通り、ポイズンナーガの赤と紫色の鱗が入り混じった蛇皮がズルリと出てきた。
「これのことですよね?」
「そうですそうです!!あの、こっちの方は素材として売るつもりはありませんか?」
「逆にギルドでこれを買い取ってくれるのかいミースちゃん?確か、ギルドで買い取ってくれる素材のリストには、蛇皮なんて無かったよね?」
「実はついこの前、ギルドで買い取る魔物の素材の幅が広がりまして……。」
ミースさんは、分厚いファイルを腰に着けていたバッグから取り出すと、それをパラパラと捲っていく。
「あっ、ありました。ポイズンナーガは、以前までは毒袋のみの買い取りだったんですけど、今回のリストの改定で皮と牙も、素材として買い取れるようになったんです。」
「あぁ……き、牙も買い取ってくれる素材だったんですか。」
それを聞いて、思わずがっくりと肩を落とした。というのも、俺はポイズンナーガの頭を落とした時に、その頭を塵よりも細かく細切れにしてしまったからだ。
「牙は討伐の時に、一緒に壊しちゃった感じですかね?」
「は、はい……。」
「できればその情報は、もっと早く知りたかったね柊君。」
「ですねミカミさん。」
「ミースちゃん、今度最新版の素材買取リストの写しとか、もらえないかな?」
「もちろん良いですよ。今私が見てるのも写しなので、こちらを差し上げますね。」
「んっん〜、ありがとー。」
ミカミさんでは持てそうにない大きさだったので、代わりに俺が受け取って、テーブルの上に広げると、ミカミさんはそれをじっくりと読み始めた。
その間に、俺はミースさんにポイズンナーガの皮を買い取ってもらうことにした。
「じゃあ、このポイズンナーガの皮は売ります。」
「はいっ、ありがとうございます!!それじゃあ状態の方を確認させて頂きますね。」
ミースさんが虫眼鏡のようなもので、細部までポイズンナーガの皮を調べている間に、誰かがドタドタと階段を降りてくる音が聞こえてきた。
「あわわわっ!!ぷぎゅっ!?」
どうやら途中で階段を踏み外したらしく、薬師のグライさんが、ゴロゴロと階段から転がり落ちてくる。
「いたたた……ハッ!!ぽ、ポイズンナーガの毒袋の完品が手に入ったと聞きまして、駆けつけました!!」
ポタポタと白衣に鼻血を垂らしながら、グライさんはこちらに駆け寄ってくる。
「ぐ、グライさん……鼻血出てます。」
「ふへ?あ、あぁっ、ご、ご心配なく。こ、これを飲めば……。」
グライさんは白衣の内側から光る緑色の液体を取り出して、それを一気に飲み干した。
「ぷはぁ……。」
それを飲んだと同時に、ポタポタと垂れていた鼻血は一瞬で止まる。
「ちなみに、今飲んだそれは何だったんですか?」
「ふへへ、こ、これは私が独自に研究して完成させたポーションです。市販の物の数倍回復効果があります!!……ちょ、ちょっとだけ副作用はあるんですけど……ふへへへ。」
副作用も気になったけど、なんだかそれは聞いてはいけないと、体が制止の声をかけてきている気がしたので深く聞くのは止めておいた。
「と、ところでポイズンナーガの毒袋はどこにありますかっ!?」
「あ、それならここに……。」
ポイズンナーガの毒袋が入った袋を指差すと、グライさんはどこからかガスマスクのような物と、真っ黒な手袋を取り出して装着した。
「あ、ど、毒耐性の無い方は、は、離れていてください。」
グライさんがそう言った瞬間、俺以外のミースさんとミカミさんの2人は、その場から凄まじい勢いで離れていった。
「ひ、ヒイラギさんは大丈夫なんですか?」
「あ、俺は大丈夫です。毒耐性あるんで……。」
「そ、それは羨ましいですねぇ。私もいつか毒耐性欲しいんですよ。」
そう言いながら、グライさんが結ばれていた毒袋を開くと、中をジッと覗き込みながら、また白衣からピンク色のリトマス紙のような物を取り出し、それを毒液に浸す。
「す、素晴らしいです。み、見てください、真っ赤に色付きましたよ。」
「これはどういう意味なんですか?」
「こ、この紙はですね、毒液に含まれる毒素の濃度を量るものなんです。色が濃くなればなるほど、強力な毒ってことになります。そ、そして、ポイズンナーガの毒は強ければ強いほど、調合で素晴らしい薬になるんですッ!!」
興奮しながら解説したグライさんは、再び毒袋を閉じると慎重に袋の中に戻して、ガスマスクと手袋を外した。
「み、ミースさん。こ、これいくらで売って頂けますか?」
「え、えっと〜、計量しないと詳しい金額は……。」
「ど、毒袋の臓器の重さは1.2kg……毒液は5.8kgです。」
そういうスキルがあるのだろう……グライさんは見ただけで、重さを完璧に把握しているようだった。
「ミース、グライの観察眼はホンモノだよ。」
「あっ、ドーナさん!!」
遅れてやってきたドーナさんは、ミースさんにグライさんの見立ては、間違っていないことを念押しした。
「さ〜てと、いくらで売ってやろうかねぇ〜。話だと、こいつはずいぶん良い薬になるらしいじゃかい……ねぇ?」
ポンとグライさんの肩に手を置いたドーナさんは、ニヤリと口角を吊り上げている。
「で、できれば、け、研究応援価格でお願いしたいところなんですけどぉ……。」
「さぁてねぇ、その辺はまぁ……酒でも飲みながらアタシと話し合おうか?なぁグライ?」
「ぜ、ぜひとも奢らせて頂きます、はいぃ〜。」
その後、ポイズンナーガの皮は状態が良かったため、白金貨1枚。毒袋の方は白金貨3枚でギルドに買い取ってもらった。
白金貨3枚で買い取られた毒袋が、いくらでグライさんの手元に渡るのかは、これからドーナさんがグライさんとお酒を飲みながら話し合うらしい。
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