第160話 毒袋の買い取り依頼
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一先ず材料がなくなるまでケーキの販売をミハエルさん達に頑張ってもらった後、本日分の給料を支払って、彼らには宿に戻って休んでもらう事となり、シアとグレイス、ルカも彼らに続いて先に宿に戻り、ギルドに残ったのは俺とミカミさん、そしてドーナさんだけとなった。
「いやはや、一安心だね柊君。ミハエル君達がこんな短期間で売り物にできるようなクオリティのケーキを作れるようになってさ。」
「ミハエルさん達の何でもやってやるっていう気持ちが、こういういい結果に繋がったのかもしれませんね。」
「確かにそれもあるだろうけど、キミの教え方が良いからっていうのも理由の一つじゃあないかな?」
「俺はほとんど何もしてませんよ。ただ丁寧に説明しながら手本を見せただけです。」
「そんな謙遜しちゃってさぁ~、説明や手本だけじゃなく、キミがミハエル君達に配ったレシピに、要点とかをわかりやすく、彼らが失敗しないようにまとめてたのをミカミさんは見てたぞぉ~?」
「あはは、それはまぁ……できれば失敗で挫けてほしくなかったので細かく書いたんです。」
まぁそれでもリタがちょっと挫けそうになっていたんだが……最終的には、彼女もレシピを忠実に守って作ればお菓子作りは成功すると、自分で経験して理解していた。ミハエルさんとフレイナさんも言わずもがな、レシピというものの重要性を理解してくれているみたいだから、問題は無いだろう。
「あ、そうだ。販売のことで思い出した。ドーナさん、これをどうぞ。」
俺はドーナさんに名刺ぐらいのサイズの一枚の紙を手渡した。
「これは?」
「ケーキを買うときに割引サービスを受けられるチケットです。ギルドの施設を借りさせてもらってるので、一応他のギルド職員さんの分も……。」
俺は想像魔法でドーナさんに渡した割引チケットを大量に複製する。
「こ、これぐらいあれば足りますかね?」
「多すぎだよ。ウチのギルドで登録した魔物ハンター全員に配る気かい?受付嬢と清掃員の分だけでいいんだよ。……そういうわけだから、ミースッ!!」
大声でドーナさんが、地下から一階にいるであろうミースさんの名前を呼ぶと、ミースさんが苦しそうにケーキで膨らんだお腹を揺らして地下に降りてきた。
「はふっ、はふっ……な、何か御用ですかドーナさん?」
「ヒイラギからの餞別だよ。これからギルドの受付嬢と清掃員には、ケーキを割引価格で売ってくれるそうだ。」
「わっ!!そんなぁ、いいんですかぁっ!?」
さっきまで来るしそうだった表情が、ぱぁっと明るくなると同時、ミースさんの膨らんでいたお腹が一瞬で元に戻る。その摩訶不思議な現象には、思わず俺もミカミさんも驚きを隠せなかった。
「ミースなら、このギルドの受付嬢の数と清掃員の数を全部把握してるだろ?」
「もっちろんです!!」
「じゃ、ヒイラギから人数分そのチケットを受け取って、みんなに配っといてくれるかい?」
「承知しましたっ!!今日非番の子もいますから、その子には明日にでも渡しておきますね。それじゃあヒイラギさん、頂いてもよろしいですか?」
「もちろんどうぞ。」
ミースさんにチケットの束を差し出すと、彼女は他の受付嬢の人の名前を呟いて漏れが無いように確認しながら、一枚一枚慎重にチケットを受け取っていた。
「で、最後に私ミースの分っと。これで最後です。ヒイラギさん、ありがとうございます!!」
「こちらこそギルドの施設を貸してくれてありがとうございます。遠慮せずたくさん買いに来てくださいね。」
「えっへへ、営業日には毎日通わせてもらいますね。」
これからの日々のことを想像して、今にもよだれが垂れそうになっているミースさんに、ミカミさんがさっき倒してきたポイズンナーガの素材の買い取りをお願いした。
「あ~、妄想にふけってるところ申し訳ないんだけどミースちゃん、実は魔物の素材の買い取りもお願いしたいんだよね。」
「あっ、はいはいっ!!魔物の素材の買い取りですね。ちなみに何の魔物の買い取りでしょうか?」
「ポイズンナーガの毒袋なんだけどさ、これって結構お金になるでしょ?」
マジックバッグの中から、何重にも重ねた袋の中に入ったポイズンナーガの毒袋を取り出して、それをそのまま近くのテーブルの上に置いた。ミースさんはその中を恐る恐るのぞき込むと、一つ頷いてこちらを向いた。
「ほ、本当にポイズンナーガの毒袋みたいですね……こ、これは劇物ですよぉ。確かにギルドで買い取り素材の一つに記載してますけど、まさかこんな完璧な状態で持ってこられるなんて思ってませんでした。ど、ドーナさんこれは……どうしましょうか?」
「ん、それを欲しがってる奴なら知ってるよ。ギルドで買い取って売りつけてやればいいさ。」
「でも、現在このギルドにポイズンナーガの毒に耐えれる容器なんて無いので、正確な量も……。」
「あいつならそんな容器も持ってるさ。ちょっと待ってな、連れてくるよ。」
するとドーナさんは立ち上がって階段を上っていってしまった。多分ドーナさんが連れてくるつもりの人は、あの人だろうなぁ……。
これからここに来る人物を予想しながら、俺達はドーナさんとそのもう一人の人物がここにやってくるまで、何気ない会話をしながら時間を潰すのだった。
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