第157話 食への探求心
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無毒化に成功したポイズンナーガの解体をせっせと進めていると、どこからかウォークマッシュが物凄い勢いで吹き飛ばされて俺の足元に転がってきた。それに驚く間もなく、ドーナさんがキノコの森の中から現れてこちらに歩いてきた。
「んぁ?ヒイラギ?何やってんだい、こんなところで。……って、そのデカい肉の塊は何だい!?」
「あっ、ドーナさん。今ちょうどポイズンナーガを無毒化して解体していたんです。」
「ポイズンナーガ……確か、去年この森で目撃情報があった魔物だねぇ。そん時も今の時期だったはずだけど、それっきり目撃情報は上がってなかったはず。」
「キノコ狩りに夢ちゅ……コホン、うぉ、ウォークマッシュを探してたら、たまたまこいつと鉢合わせちゃって。」
「な~るほどねぇ。」
まじまじと肉になっているポイズンナーガを眺めているドーナさんは、思い出したようにある質問を投げかけてきた。
「あ、そういえば……ヒイラギ達は何体ウォークマッシュを倒せたんだい?」
「えっ!?」
「アタシはもう20体ぐらい倒してるけど、こんなやつを相手にしてたんじゃあ、あんまり倒せてないんじゃないかって思ってねぇ。」
そう言ってドーナさんは少し悩むと、一つ溜息を吐きながら言った。
「今回の勝負はお預けにしとこうかい。」
「え。ドーナちゃんはそれでいいの~?」
「せっかく面白くなりそうだったのに、水差されちまったからねぇ。それに、もうそろそろウォークマッシュの大量発生も収まりそうな雰囲気なんだよ。ずいぶん他の奴らも狩ってたみたいだったからねぇ。」
少し残念そうにしながらドーナさんはそう言うと、マシュリオンのある方角を向く。
「んじゃま、昼飯でもマシュリオンで食って帰るとするかい?」
そうドーナさんがいった時、フルフルと激しく首を振ったのはシアだった。
「やだっ!!シア、ヒイラギお兄ちゃんが作ったご飯食べたい!!」
激しく首を振ったと思えば、シアは俺の足にぎゅっとしがみついた。どうやら、そこだけは絶対に譲れないらしい。多分、以前カーズラに行って外食をした時のサボニアステーキの記憶がまだ頭の中にあるんだろう。
「わかった。じゃあ今日のお昼ご飯は俺が作るからな。」
そう言ってポンポンとシアの頭を撫でてあげると、シアはぱぁっと表情を明るくして、ぐりぐりと顔をお腹に擦り付けてきた。
「えへへぇ~ヒイラギお兄ちゃん大好きっ!!」
「ドーナさんもそれでいですか?」
「アタシは別に構わないけど、ヒイラギの方こそ負担じゃないかい?」
「俺の心配は無用です。じゃあすぐに準備しますね。」
早速俺はその場で安全を確保してから魔法で火を起こし、フライパンをその上に置いた。
「じゃあ早速、今日のお昼ご飯はこのポイズンナーガを使っていきます。」
解体してステーキ用に切り出したポイズンナーガの肉に塩と胡椒を振って、さっと油を馴染ませたフライパンで焼いていく。すると、すぐに辺りに焼ける肉の香りと、トリュフを彷彿させるような香りが充満し始めた。
「ふみゃぁぁ~、お肉の焼ける良い匂い~。」
「めっちゃくちゃ良い匂いがするっす!!もうお腹減ってきたっすよ~。」
興奮するシアとグレイスに微笑みながら、ミカミさんも辺りに充満する香りをクンクンと嗅ぐと、ほう……と表情を緩ませた。
「う~ん、高級なフレンチで嗅ぐようないい香り……このポイズンナーガはたくさんウォークマッシュを食べてたって話だし、その分ウォークマッシュの香りが肉にも移っているのかな?」
「多分そうですね。これは味も期待して良さそうです。」
そのまま調理を続けていると、ふとドーナさんが呟く。
「そういえば、さっきアタシがここに来た時……そのポイズンナーガを無毒化したって言ってなかったかい?」
「そうです。もともとポイズンナーガの肉には毒性があったんですけど、その毒性を生まれたばかりのウォークマッシュか、無毒なウォークマッシュに吸ってもらうことで無毒化できるって、鑑定で分かったので……。」
「それをやってのけたってわけかい?」
「ですね、ちょうどよく生まれたばかりのウォークマッシュを見つけることができたので、その子たちに頑張ってもらいました。」
「でもまぁ、良く毒のあるものをわざわざ無毒化してまで食べようと思ったねぇ。」
驚きと、少しの呆れが混ざったような口調で言ったドーナさんへと、ミカミさんが不敵に笑いながら、ある人々の話を始めた。
「ドーナちゃん、私の知っているある人々はね。食への探求心が物凄く強かったんだ。毒魚の毒のある部分だけを取り除いて高級食材にしたり、食材をあえて腐らせて美味しいものにしたりね……。」
「そ、そんな人がいるのかい?」
「いるんだよ。その血を濃く受け継いでいるのが柊君なのさ。」
「そう言われると、なんか妙に納得はできるんだけど……。」
ドーナさんはその人々のことが誰なのかわかっていない様子だが、俺にはわかる。ミカミさんが言っているその人たちというのはきっと、俺達日本人のことなんだろうな。
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