第156話 ポイズンナーガの無毒化
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倒した大蛇の魔物に鑑定を使うと、どうやらこの魔物の名前はポイズンナーガというらしい。
主食となっているのはウォークマッシュで、有毒、無毒関係なく食べまくり、体内に毒を溜め込むという生態のようだ。
しかし、体内に毒を溜め込んでいるという、このポイズンナーガだが、どうやらある方法を使って無毒化すれば、美味しく食べられると鑑定でわかったのだ。
「えっと、まずは内臓を全部取り出して、血を洗いながら皮を剥く……と。グレイス、一応シアの目を塞いでくれ。かなりグロそうだ。」
「了解っす!!」
ここから先の調理シーンは、内臓や血が飛び散りそうなので、グレイスにシアを目隠ししてもらって調理を進めていく。
ポイズンナーガの内臓を取り除いている最中、俺はあるものを発見する。
「あった毒袋。」
地球にいる毒蛇は、牙の上に毒袋を持っているのが普通だが、このポイズンナーガは体の中にとんでもなく大きな毒袋を抱えていた。
頭を落とした時に、コレが辺りに撒き散らされなくて本当に良かった。
ホッと胸を撫で下ろしながらも、毒袋を傷つけずに取り除き、毒袋から牙へと伸びていたのであろう、チューブのような器官をキュッと結び、毒液が漏れ出ないようにしっかりと処理をした。
「これで良しっと。」
そんな作業を終えると、ミカミさんがふよふよと緩やかに飛びながら俺の肩に腰掛け、その毒袋を指差して言った。
「柊君、その毒袋なんだけどさ。ギルドで売れるみたいだよ。」
「この毒袋がですか?」
「うん。それも上手いこと使えば薬になるみたいだね。」
「じゃあとっておきますね。」
ポイズンナーガの毒袋の表面を綺麗に水で洗って、何重にも重ねた麻袋に入れて、それをマジックバッグの中にしまった。
「よっし、あと処理しないといけないのは……この歪に膨らんだ胃袋。」
こいつが何を食べて、こんなに胃袋を膨らませているのかは分かっている。多分中には大量のウォークマッシュが入っているはずだ。
「念の為聞いとくけどさ、柊君……それ開けるつもりじゃないよね?」
ミカミさんは少し表情をしかめながら、膨らんだ胃袋を指差した。
「開けないですよ。とんでもない匂いがしそうですし……。でも、この場に放置するってわけにもいかないので、何かしら処理方法を考えないと。」
そうこう考えていると、野晒しに置いてあった胃袋に、どこに隠れていたのか、大量のウォークマッシュが集まってきた。
そして胃袋の周りをぐるりと囲むと、しきりに体を震わせて、胞子を振りかけていく。
「な、何が起こってるんですかねミカミさん。」
「さぁ?私にもさっぱりだね。」
その光景を呆然としながら眺めていると、ウォークマッシュ達は胞子をかけるだけかけたあと、どこかへと走り去ってしまった。
その直後、大量の胞子のせいで、カビが生えたように表面が白いモヤに覆われていた胃袋から、小さなウォークマッシュが大量に誕生し始めたのだ。
「他の生き物の死骸も、余さず自分達の増殖に使っちゃうんですね。」
生まれてきたウォークマッシュ達によって、胃袋の水分や栄養は全て吸い取られたようで、ポイズンナーガの胃袋はカラカラに干からび、風に吹かれてどこかへと飛んでいってしまっていた。
「これはある意味エコだね。まぁまぁ、内臓は一先ず処理できたんだし良しじゃないかな?」
「ですねミカミさん。それと、ちょうどよく生まれてきたウォークマッシュの赤ちゃんが、アレに使えます。」
まだ歩行能力が発達していないウォークマッシュの、赤ちゃん達を優しく手で拾い上げて、綺麗に洗ったポイズンナーガのお腹の中へと移動させていく。
このポイズンナーガの体内に溜まった毒を抜く方法……それは、ウォークマッシュに毒素を吸い上げてもらうという方法だったのだ。
鑑定によると、用いるのは無毒なウォークマッシュか、生まれたばかりのウォークマッシュでなければならないとのことだった。
ポイズンナーガの胃袋から生まれたウォークマッシュの赤ちゃんを、全てお腹の中に詰め込んだあと、そっと切り開いたお腹を閉じた。
「これで合ってるのかは分からないですけど……一先ず待ってみましょうか。」
「そうだね。」
「ヒイラギお兄ちゃん、シアもうお目々開けても良い〜?」
「あぁ、大丈夫だぞ。」
シアは目を開けると、こちらに小走りで駆け寄ってくる。
「この大っきな蛇さんも美味しいかな?」
「美味しくしてみせるさ。」
ポンポンとシアの頭を撫でていると、突然ガバッと切り開いた腹部を広げて、大人サイズに大きくなったウォークマッシュたちが飛び出してきて、どこかへと走り去っていった。
「毒抜きが終わったってことかな?」
一先ずまたポイズンナーガを詳しく鑑定してみると、備考のところに新たに無毒化完了という文字が書いてある。
「おっ、無毒化完了したっ!!」
「ほへ~、不思議な調理方法だね~。」
こういうちゃんとした調理次第で食べられるようになる食材は、調理をしている側からすれば面白い。後問題なのは、これだけ手間をかけたこのポイズンスネークがどれだけ美味しくなるのか……だな。
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