第155話 キノコの森に潜む魔物
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辺りに生やしてくれた美味しいキノコをたくさん収穫すると、舞いと呼ばれる胞子を撒く行為をしていた無毒なウォークマッシュは満足げに腕を組むと、突然メキメキと音を立ててみるみるうちに大きくなっていき、キノコの森に生えている大木のようなキノコのうちの一つになってしまった。
「キノコの森ってこうやって形成されてたんだね。」
「無毒のウォークマッシュが舞いを終えた後、森を形成する巨大キノコになる……それがキノコの森が存在し続けるサイクルだったんですね。」
大木のようなキノコになってしまったさっきのウォークマッシュに、感謝の気持ちを込めて手を合わせてから、俺達もキノコの森の奥へと進んでみることにした。
キノコの森の中は料理人目線だととても面白く、いろいろなキノコがそこら中に生えていて、そっちの方についつい気が惹かれてしまう。
「あ、こっちにも舞茸みたいなキノコが……。」
しっかりと鑑定で調べて食べられるキノコなのかを確認して、舞茸のようなキノコを採取してマジックバッグに入れた。
「柊君、採取に夢中になるのもいいけど、ドーナちゃんとの勝負も忘れちゃダメだよ?」
「い、いや~……もちろんそれも頭にあるんですけど、目の前に出てくるのは魅力的なキノコばっかりで、肝心のウォークマシュが全然出てこないんですもん。」
「まぁ確かにそうだね。肝心のウォークマッシュは、さっきキノコをいっぱい恵んでくれたあの子だけしか今のところ見てないね。」
「ドーナさんが狩り尽くす勢いで倒してるとかありますかね?」
「あはは、ありえない話じゃないね。ドーナちゃん、負けず嫌いみたいだから。」
そんな会話をしていると、スキルの危険察知が薄暗いキノコの森の奥から、危険が迫っていることを知らせてくれた。
「ん?なにか……くる?」
シアのことを庇いながら、危険察知が危険を知らせてくれている方向に、レヴァを強く握りながら一歩前に出ると……奥の方からズルズルと奇妙な音を立てて、何かがこちらに近づいてきているのを感じた。
直後、目の前の大きなキノコの木がなぎ倒され、そのキノコの大木よりも太く、大きなヘビの魔物が俺達の前に姿を現した。
「な、なんかヤバそうなヘビが出てきたよ柊君。」
「こ、こんなのが出てくるなんて聞いてないんですけど……。」
蛇に睨まれたカエルってこんな気持ちなんだろうか?一歩でも動けば、あの巨大な口でパクっと丸呑みにされてしまいそうだ。
相手の様子を窺っていると、危険察知が奴の口からなにか危険が迫ることを知らせてくれた。直後、鋭くとがった2本の牙から、こちらに向かって黄色い液体が飛んでくる。
「毒か!?」
シアのことを抱きかかえてその場を離れると、さっきまで俺達のいた場所にその液体が降り注ぐすると、そこの地面がドロドロと腐食するように崩れていく。
「ずいぶんと腐食性の高い毒だね。まぁ、毒である限り、柊君には効かないわけなんだけどさ。」
「俺は耐えれてもミカミさん達は耐えれないですよね?」
「もちろんっ!!一瞬でお陀仏だね。」
「じゃあ気をつけないとですね。グレイス、ちょっと大きくなってシアのことを守っててくれるか?」
「了解っす!!」
グレイスにシアのことを任せて、俺はさっきの毒のお返しに、レヴァを横に薙いで斬撃を飛ばした。すると、奴はヘビ特有のうねうねとした動きでキノコの木の間を動き回り、斬撃を巧みに躱してしまう。
「うへ~、柊君……実のところ私さぁ、ヘビにはあんまりいい思い出が無いんだよね。」
「ミカミさん、虫以外にも苦手なものあったんですね?」
「そりゃあ、神様にだって苦手なものはあるさ。ま、その数いる神の中でも、私は結構多いほうだっていう自負はあるけどね。……ま、そういうわけだからパパっと倒してくれると助かるよ。」
「が、頑張ってみます。」
木々の間をズルズルと動き回る大蛇の動きを目で追っていると、右斜め後ろから危険察知のスキルが危険を知らせる。
「シャアーーーッ!!」
腐食性のある毒をまき散らしながら、大蛇が俺とミカミさんのことを丸呑みにしようと、大口を開けて迫ってきていた。
「うっ!!」
巨大で恐ろしいものが、すさまじい勢いで迫ってくる現実に恐怖を感じながらも、俺の体は飛散する毒と大蛇の口を躱しながら、一歩大きく前に出てレヴァを振り抜いた。
その一撃は大蛇の頭と胴体を両断した。普通であれば致命傷……即死の一撃だが、ヘビという生物の生命力はすさまじい。昔に聞いた話だが、毒蛇を使う料理で生きた毒蛇を用いて、頭を落としたが、その落とした頭に料理人が噛みつかれたって話を聞いたことがある。
だから俺は頭で斬撃をイメージしながら、もう一度レヴァを振るった。
「細切れになれッ!!」
切り落とした頭へと向かって、細かい格子状の斬撃が飛び、大蛇の頭はミンチよりもさらに細切れになり空気に溶けるように消えてしまった。
「ほっ……な、何とか勝てました。」
「最後の一撃はなかなか容赦がなかったね柊君。」
「頭を落とした毒蛇に噛まれたっていう話を聞いたことがあったので……念のためのつもりでした。」
「うんうん、でも正解だったと思うよ。事実頭を失った胴体部分はまだのたうち回ってるしね。」
頭を落とされたことに気が付いていないのか、まだ頭が無くなった大蛇の体は、じたばたとのたうち回っていた。
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