第154話 様子のおかしいウォークマッシュ
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唐突にドーナさんと、どちらが多くウォークマッシュを倒せるかの競争が始まってしまったが……さて、これからどう動こうかな。
そうこう考えているうちに、こちらへと向かって、1体のウォークマッシュが走ってきていた。
「柊君、来るよ。」
「わかってます…………でも、何ででしょうか。危険察知が全く反応しないんです。」
こちらに走ってきたウォークマッシュからは、危険察知のスキルに引っかかるようなものはない。攻撃の意思はないということなのかな?
不思議に思っていると、そのウォークマッシュは俺の目の前で立ち止まり、ゆさゆさと踊るように体を揺らし始めたのだ。
「踊ってる?」
「ウォークマッシュの踊り?そんなの、私がイリスちゃんにもらった辞書にも書いてないなぁ〜。」
ミカミさんも不思議そうにしながら、イリスさんからもらったという例の辞書を開き、首を傾げている。
すると、シアが何かに気が付いた。
「あっ!!ヒイラギお兄ちゃん、キノコがニョキニョキ生えてきてるよ!!」
シアが指差した、踊るウォークマッシュの足元……そこにはカラフルな色のキノコがどんどん生えてきていた。
「み、見た目は毒キノコっぽいけど……どうなんだろう?」
生えてきているキノコも気になるが、俺は一先ず目の前のウォークマッシュに対して、鑑定を使ってみることにした。
~鑑定結果~
名称 ウォークマッシュ(無毒種)
所持スキル
・胞子撒き
備考
・毒性のあるウォークマッシュの中から、稀に変異体として生まれる毒性を有さないウォークマッシュ。
・本個体は主に食用として出回っており、香り、旨味が共に強く、大変美味で人気がある。
・ウォークマッシュ本体も大変美味であるものの、その美味しさを更に上回るのが、舞いと呼ばれる胞子を撒く行為によって生えてくる、色とりどりのキノコである。
・無毒個体の撒く胞子は、ウォークマッシュを生み出さず、希少で美味しく無毒なキノコしか生み出さない。
鑑定結果を眺めている間にも、俺達の足元にまで色とりどりのキノコが生えてきていた。
「柊君、鑑定結果はどうだったんだい?」
「鑑定によると、このウォークマッシュは無毒な奴だったみたいですね。」
「おぉ!!やったじゃないか!!じゃあ早速倒して…………。」
「ミカミさん、実はさっき鑑定で見たんですけど……あのウォークマッシュ本体より、この生えてきてるキノコのほうが美味しいらしいです。」
「え!?それホント!?」
「はい、鑑定結果に書いてありました。」
足元に生えてきた赤色の大きな傘のキノコを1本採取して、試しにその場で魔法で焼いてみた。すると、キノコをバターで炒めたような香りが、鼻を抜けていく。
「おぉ……凄く良い香り。ただ焼いてるだけなのに、バターでキノコをソテーしてるような香りが……。」
「これ、軽くお醤油塗って焼いたら、最高なんじゃない?」
「それめちゃくちゃアリですね。やってみましょう。」
そうして焼き上がったキノコに4つに裂いて、みんなで分け合った。
「それじゃあいただきます……。」
「「「いただきま〜す!!」」」
ホクホクと湯気の立ち昇るキノコを、みんなで食べてみると……。
「ん〜っ、これめっちゃくちゃ美味しいね!!食べたことのないキノコの味がする。」
「何でしょうねこの味……濃縮したポルチーニ茸みたいな旨味に、焦がしバターのコクが加わったような、濃厚な味で……香りのクセも強くなくて、こんなキノコ初めて食べました。」
「自分、こんな味のキノコなら山ほど食いたいっす〜!!」
「シアはご飯と一緒に食べたい!!」
シアの感想で、俺とミカミさんは同時にハッとなって、お互いに顔を見合わせた。
「柊君、多分今私達は同じことを思ってるね?」
「ですねミカミさん。」
俺とミカミさんは、くるりとシアの方を向く。
「シアちゃんのその案、採用〜!!」
「ふぇ?」
「今日の夕食は、このたくさんのキノコを使って、キノコの炊き込みご飯を作ろう。」
「キノコご飯!?」
「あぁ、これだけ美味しいキノコなら、きっと美味しい炊き込みご飯ができるはずだ。」
そうと決まれば、今からやることは決まったな。
「よし、みんな。今からキノコをどんどん収穫していくぞ〜。」
そして意気揚々と、みんなでキノコ狩りをしている最中、突然ピン……と危険察知がグレイスの方から何か危険が迫っていることを知らせてきた。
「ん?グレイス、ちょっと待った。」
「どうしたっすか?」
「その手に持ってるキノコから、危ない予感がするんだ。」
どうにも今回の危険察知は、グレイスの持っているキノコの危険を感じ取っているようだ。
もしや……と思いながら鑑定をしてみると、思った通りの結果が表示された。
「……グレイス、コレは毒キノコだ。」
「うひ〜っ!!あ、危なかったっす〜。もうキノコでお腹ぐるぐるは嫌っすよ〜。」
ポイっと無造作にグレイスが毒キノコを放り投げ、次のキノコを採ろうとすると、また俺の危険察知が発動した。
「グレイス、それも多分毒キノコだぞ。」
「ななっ、なんで自分の周りだけ毒キノコばっかりなんすか!?自分キノコに嫌われてるっす!?」
「さぁな、試しにキノコに向かって話しかけてみたらどうだ?」
そんな冗談を言いながら、俺達は無毒のウォークマッシュが生やしてくれるキノコを、どんどん収穫していった。
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