第153話 キノコに囲まれた町マシュリオン
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
今回1つ分かったことがある。それは、グレイスの安全運転の基準は、その日の彼女の気分次第であるということだ。
今日の天気は雲一つない快晴……気温も温かく、マシュリオンへと向かう方角には追い風が吹いていた。
……何が言いたいかと言うと、つまり今日はグレイスにとって、最高の飛行日和だったというわけだ。
「…………快適な空の旅をお楽しみください〜……とか言ってなかったか?ん?グレイス?」
俺はマシュリオンの近くで、待ち望んだ地面に足をつけた後、グレイスに詰め寄った。
「い、いやぁ〜……絶好の飛行日和だったっすから、ついつい気持ちよくなっちゃって……ちょ、ちょっとだけ飛ばしちゃったっす。」
冷や汗をかいて苦笑いするグレイスは、俺に詰め寄られる度にどんどん体を小さくしていく。
「まぁ、こうやって無事に辿り着けたから……今回は不問にするよ。」
「ほ、ホント次は気をつけるっす〜……。」
最終的に、いつも俺達と一緒に過ごしているサイズまで小さくなると、ペコペコと頭を下げながら、グレイスはミカミさんの入っている、俺の胸ポケットへと飛び込んでいった。
その後、マジックバッグに入っていたシアとドーナさんに声をかけて出てきてもらうと、ドーナさんは腕につけている時計を見て思わず驚いていた。
「マシュリオンまでこんなに速く着くなんて……流石はエルダーワイバーン、馬とは比べ物にならないねぇ。」
「う、馬と自分を比べないでほしいっすよ〜。」
「ははっ、悪かったねぇ。……っと、さてじゃあマシュリオンに着いた事だし、早速ウォークマッシュの生息地に向かおうかい。」
「なんかこの町の周辺なら、どこでもキノコの魔物は出そうな雰囲気ですけどね。」
このマシュリオンという町の周辺は、森に生えているような巨大な木々の代わりに、超巨大なキノコが至る所に聳え立っているのだ。
少し向こうの方には、そんな超巨大なキノコがぎっしりと、密集している森のような場所も見える。
「ウォークマッシュが湧くのは、向こうに見えるキノコの森さ。」
するとキノコという言葉を聞いて、グレイスが表情をしかめさせた。
「き、キノコっすか……。」
「なんか前に、毒キノコ食べてお腹壊したとか言ってたっけ?」
以前カーズラの巨大な八百屋さんに行った時にも、キノコというワードを聞いて、グレイスが露骨に嫌な顔をしていたのを思い出した。
「そうっす。キノコに良い思い出は無いっす。」
「でも俺が作ったキノコのシチューとかは、バクバク食べてたよな?」
「そ、それはヒイラギさんがちゃんと毒のないキノコを、美味しく料理してくれたからじゃないっすかぁ〜。」
「わかってるじゃないか、だったら間違ってもキノコの森でその辺に生えてるキノコを、生で食べたりはしないようにな?」
「も、もちろんっす!!」
グレイスに釘を刺したあと、俺は手を繋いでいるシアに目を向けた。
「シアも、もし綺麗なキノコとかが生えてても、迂闊に触っちゃダメだからな?」
「触るのもダメ?」
「そう、毒キノコを触った手で、目とかを擦っちゃうと腫れたりするかもしれないからな。」
「わかった!!じゃあ触らないっ!!」
「良い子だ。」
ぽんぽんと素直で良い子のシアの頭を撫でた。
そして、ドーナさんの案内のもと、キノコの森へと足を踏み入れると、そこでは既に武器を持った人々が、人間と同じぐらいの大きさの手足の生えたキノコの魔物と戦っていた。
「あ、柊君。アレがウォークマッシュだね。」
「なんか思ってたよりも手足が人間っぽいんですけど……。」
若干攻撃するのを躊躇ってしまうような、ウォークマッシュの外見に戸惑いを隠せないでいると、あの魔物についてドーナさんが説明してくれた。
「ウォークマッシュは、あの手足で走ったり、高いところに登ったりして、次代のウォークマッシュになる胞子をばら撒くのさ。」
「それって人間に害があったりします?」
「いんや、全く無いよ。ただ、土壌汚染が半端じゃないんだ。ウォークマッシュの胞子が付着した土は、その土の栄養がぜ〜んぶ、ウォークマッシュに持ってかれちまうのさ。」
「だからあんな感じで、みんな躍起になって倒してるんですね……。」
「そっ、仮にもし畑の土に、アイツらの胞子が混入しちまったら、一巻の終わりだからねぇ。農家も必死ってわけさ。」
「納得です。」
そうこう話しているうちに、こちらに向かって、ものすごい速さで1体のウォークマッシュが走ってきていた。
「ウォークマッシュの倒し方は簡単。」
そう言いながら、ドーナさんは手刀でこちらに走ってきていたウォークマッシュを、縦に真っ二つにしてしまった。
「こんな感じで体の半分以上を破壊すれば、胞子を出す前に倒せるよ。」
「そんな手刀で、唐竹割りなんてドーナちゃんしかできないでしょ。……でもまぁ、柊君にはレヴァっていう心強い武器があるから大丈夫だね。」
「ですね。」
マジックバッグからレヴァを取り出すと、やる気に満ち溢れているのか、レヴァはすぐに日本刀のような形へと変化した。
「こういうのは、せっかくやるなら楽しくやらないとねぇ……。そうだ!!倒した数の多いほうが、今晩酒を奢るってのはどうだい?」
「悪くないねドーナちゃん。それ乗ったよ。」
「よっし!!じゃあ決定だね。」
バキバキとドーナさんは指を鳴らすと、凶暴に笑ってキノコの森の奥の方へと視線を向けた。
「制限時間は昼飯時までだ。それじゃあ……始めッ!!」
始めの声と同時に、ドーナさんは大地を踏み抜いてキノコの森の奥の方へと、突っ走っていってしまった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。