第151話 クレイモア家とヴェイルファースト家の因縁
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ギルドでドーナさんとは別れ、宿へと戻ったあと、俺とミカミさんはミハエルさん達と、現状について話し合いの場を持つことになった。
「ミハエル君、キミに一つ質問があるんだけど、クレイモア家と何か因縁があったりしないかい?」
「クレイモア家ですか……。」
その名前を聞いた瞬間、ミハエルさんは露骨に表情を曇らせた。どうやらヴェイルファースト家は、あまりクレイモア家に対して、良い印象は抱いていないようだ。
「実は私達が奴隷堕ちする前、クレイモア家の方々に縁談のお話を持ち掛けられていました。」
「それってつまり、クレイモア家の人がリタちゃんをお嫁に欲しがってたってこと?」
「その通りです。一介の貴族としてはクレイモア家からの縁談はとても嬉しいことなのですが、クレイモア家のご子息の良い噂は聞いたことが無く……むしろ悪い噂ばかり耳に入ってきていたので、丁重にお断りさせていただいたんです。」
「あぁ~……なるほどね、そういう事だったのかぁ。」
ミカミさんは今回の一連の事件に関して、何か確信を得たらしい。
「まぁ、一つ確信が得られたところで早速結論から話すんだけど、今日聞きだした情報から、ミハエル君達ヴェイルファースト家を狙っているのはクレイモア家でほぼ間違いない。恐らくは、縁談を断られた恨みでキミ達を狙ったのかなぁ。」
「クレイモア家が……。」
「まっ、誰がキミ達を狙っているとしても、今のキミ達は私達に雇われてる社員だし、私達はキミ達を守ることに全力を注ぐから安心してよ。」
「で、ですが、相手がクレイモア家となると……私達がここにいるだけで、ヒイラギさん達にご迷惑をかけてしまいます。」
「迷惑なんてとんでもないよ。お菓子の事業を安定化させるためには、ミハエル君達が必要。だからクレイモア家なんかに渡したりはしない。それに、もしこれからもクレイモア家がミハエル君達を狙ってくるなら……そのたびにクレイモア家に関する証拠が増えていく。最終的に集めた証拠を全部ぶつけて、クレイモア家を貴族から引きずり下ろしてやるさ。」
クスクスと悪魔的に微笑むミカミさんに、ミハエルさん達も少し引いているように見える。
「ま、とにかくそういう事だから、今日のところはゆっくり休んで?これからのことも特に気にしなくていいよ。キミ達の安全は私達が保証するからさ。」
「すみませんヒイラギさん、ミカミさん。ご迷惑をおかけします。」
「いいんだって、それじゃあまた明日ね。」
ミハエルさん達に今日の報告をして、俺とミカミさんは自分達の部屋に戻った。部屋のベッドでは、シアとグレイスがすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てている。
シアとグレイスを起こさないように、俺とミカミさんもベッドにもぐりこむと、俺の胸の上にごろんと横になったミカミさんがこちらを見つめながら口を開いた。
「柊君、今日わかったことを踏まえてなんだけど、やっぱりヒュマノファイトでは優勝しなきゃダメだね。」
「え?それと今日のことで何の関係があるんです?」
「ヒュマノファイトって、一応この国の腕っぷし最強を決めるお祭りなわけじゃん?」
「そうみたいですね。」
「そこで柊君が優勝して、キミにヴェイルファースト家が雇われてることを世間に知らしめれば、いくら貴族としての力が強いクレイモア家でも、私達に手が出しにくくなると思うんだよね。」
「なるほど、そう言われると確かに……。」
「だからそのためにも、明日からちょっとレベル上げとスキル獲得に力を注ぐべきだと思ったんだ。」
「魔物の討伐依頼を受けて、レベル上げをするってことですよね?」
「もちろんそれでもいいんだけど、どうせやるなら、もっと柊君が楽しくやれるやり方のほうが良いでしょ?」
「そんな都合のいい方法ありますか?」
「むっふっふ~、私を誰だと思ってるのさ。この世界における柊君の完璧なナビゲーターだよ?」
大きく胸を張ったミカミさんは、どこからか妖精サイズの分厚い辞書を取り出して、それをパラパラと捲っていく。
「実はこの時期……ここからすぐ近くにある町、マシュリオンで、とある魔物が大量発生するらしいんだ。」
「魔物が大量発生ですか……。どんな魔物なんです?」
「大量発生する魔物の名前はウォークマッシュ。手足が生えてる大きなキノコ型の魔物だね。」
「もしかしてその魔物って食べれます?」
「その通りっ!!ウォークマッシュは毒のあるやつと、無いやつの2種類が大量発生するらしいんだけど、毒の無いほうが高級食材として市場に流通するらしいよ。気にならないかい柊君?この無毒なウォークマッシュがどんな味なのか……。」
「ミカミさんの話を聞いてる途中から、頭の中がキノコ料理でいっぱいでしたよ。」
「んふふ~、じゃあ明日はマシュリオンに行ってみようか。」
「ですね。でもミハエルさん達はどうします?」
「ミハエル君達にはルカちゃんを護衛でつけておこう。それでまたギルドの地下を借りて、ケーキ作りの練習をしてもらえばいいんじゃないかな?ついでにケーキの販売もできれば上々でしょ?」
「そうですね、そうしてもらいましょうか。」
ルカが護衛についていれば安心だし、ミハエルさん達にも早くケーキを作れるようになってもらいたいからな。ギルドの地下ならある程度の安全は確保できてる。ドーナさんがギルドにいれば尚最高だ。
そして明日についての予定をミカミさんと話し合った後、俺も瞼を閉じて眠りについたのだった。
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