第150話 裏で糸引いていた人物とは
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あの貴族御用達の何でも屋の男から情報を聞き出し、大通りのど真ん中に放置して、俺達はフーリガンへと戻ってきていた。すると、まだ天井から逆さ吊りにされているスカーは目覚めていないようだった。
「ったく、テメェもとっとと起きな。」
ドーナさんがスカーを目覚めさせるために、軽く頬を平手打ちする。すると、軽く叩いたとは思えない鈍い音が酒場の中に鳴り響く。
「ぐあ……いってぇ~。あ、れ?なんで~……体も動かない~?」
「アンタは負けたんだよ。」
「うぇ~、マジかぁ~。依頼失敗なんて初めてだぁ~。」
言葉では残念さを表しているけど、口調はちっとも残念そうではない。彼は、何とか拘束から逃れられないかと、体を動かしながらこちらに質問を投げかけてきた。
「スカーのことは殺すのか~?」
「別に殺しはしないよ。アンタに恨みがあるわけでもないしねぇ。ただまぁ、今回のことを恨んでアタシらに執着するってんなら……二度と戦えないような体にしてやってもいいけど?」
「うぉ~、それは困るぞ~。……わかった~、もうお前らには手を出さな~い。」
「じゃ、念のため契約はしてもらうよ。」
そしてドーナさんはスカーと、俺達のことを今後襲わないという契約を結ばせていた。その契約を結んだあと、彼のことを拘束から解放した。
「んん~、やっぱ地面はいいなぁ~。逆さ吊りはもうごめんだ~。」
うんざりしながら首を横に振って、彼は辺りを見渡し何かを探し始める。
「ん〜……武器は返してくれないのか〜?」
その質問には、ミカミさんが答えた。
「キミの武器ならココにあるよ。」
銃のような武器の上に、ミカミさんは不敵に笑いながら座っていた。
「はは〜、なるほどね。何をすれば返してくれる〜?」
「その前に1つ質問、キミはいくらで今回の護衛を引き受けたのかな?」
「白金貨80枚〜……あれ?何で答えちゃうんだ〜?」
自分の状況が理解できず、首を傾げるスカー。そんな彼に続けてミカミさんは言った。
「白金貨80枚も支払われてたんだね〜。じゃあその白金貨……50枚を私達にくれたら、この武器は返してあげよう。」
「うげ〜……40枚じゃダメか〜?」
「ダメだね。」
「う〜、わかった〜。」
渋々彼は頷くと、自分のマジックバッグの中から白金貨の入った袋を取り出して、そこからしっかりと50枚数えてこちらに手渡してくる。
「これで良いか〜?」
「うんうん、聞き分けが良くて結構。じゃあこれは返すよ。」
スカーは自分の武器を受け取ると、腰に着けていたホルスターのようなポーチに納めた。
「それにしても、面白い武器だねそれ。自分の魔力を弾丸に変換して撃ちだす魔道具……それも彼から借りてるのかい?」
「いや~違う。これはスカーがダンジョンを一人で攻略したときに拾ったんだ~。スカーは魔力は多いけど、魔法の才能は無かったからな~。最高の相棒なんだ~。」
そう言って、彼は武器の入ったホルスターを愛おしそうに撫でると、こちらに背を向けた。
「じゃ~、スカーは帰るぞ~。できればお前達とは二度と会いたくないなぁ~。」
ケタケタと笑いながら彼は夜闇の中へと消えていった。それを見送った後、フーリガンの店の人にお店の修理費として十分な金額を支払ってその場を後にする。
その後、状況を整理するために一度ギルドに集まることになり、酒場で各々お酒を注文して席についた。
「ふぃ~、まずはお疲れさんっと。」
「お疲れ様~。」
「お疲れさまでした。」
みんなでジョッキを合わせた後、注文したエールを口にしながらドーナさんがポツリと呟いた。
「しっかし……まさかヴェイルファースト家を狙ってたのが、かの有名なクレイモア家だったとはねぇ。」
あの貴族御用達の何でも屋の男から聞き出せたのは、彼を裏で操っていたのはクレイモア家という貴族だったという事。そして彼に課せられていた任務が、足が付きにくいゴロツキを動かして、ヴェイルファースト家のミハエルさん、フレイアさん、リタの3人に奴隷の首枷を着けさせて、自分のところに連れてくることだったらしい。
「そのクレイモア家っていう貴族について私達良く知らないんだけど、ドーナちゃん何か知ってる?」
「クレイモア家は、この国ができた当初からいるって言われてる最古参の貴族だねぇ。アタシも会ったことは無いけど、いろいろ噂は聞くよ。プライドが高い~とか、自分よりも位の低い貴族や平民を見下してるってね。」
「典型的な高圧的なタイプってわけかぁ。よくそんなんで貴族を続けていられるねぇ~。」
「まっ、古い時代からいる貴族だから、国との繋がりも深いってわけさ。」
「国との繋がりが深いんじゃ、なかなか貴族の地位から引きずり下ろすってのは難しそうだなぁ~。」
そうぽつりと言ったミカミさんに、ドーナさんは眉をひそめ、少し呆れながら言った。
「ミカミ、アンタ……クレイモア家を貴族から引きずり下ろすつもりでいるのかい?」
「え?当たり前じゃん。下種と外道は地の底に叩き落とすべきでしょ?違う?」
あっけらかんと言ってのけたミカミさんに、ドーナさんは思わず頭を抱えていた。でもミカミさんは有言は実行する人だから、何かしら方法があればきっと……。
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