第149話 改良版スナオニナール
昨日予定が立て込み、執筆の時間が取れず投稿が遅れてしまいましたすみません。
ここにやってきたグライさんは、息を切らしながらも恍惚とした表情を浮かべ、白衣の内側から昨日見たスナオニナールの毒々しい色とは、また変わった緑色の液体を取り出した。
「スナオニナール試作品第2号っ、お、お持ちしましたぁ〜!!」
「来たね〜グライちゃん。」
「ひ、被検体の方々は、その天井から吊るされてる人達ですよね?」
「うんうん、存分に被検体にしちゃっていいよ〜。」
「ふ、ふへへっ……で、ではでは遠慮なく。」
改良されたスナオニナールは、以前のものよりも更に粘性が強くなっているようで、半固形と言っても過言ではないほどにドロリとしている。
「ん?今、薬が自分で動いて入っていったような……。」
俺の見間違いじゃなければ……逆さ吊りにされてる彼等の口の中に、改良版スナオニナールを流し込んだとき、それが自分で動いて喉の方に向かって行ったように見えた。
「ちなみにグライちゃん、今回のスナオニナールは、前回のやつと何が違うの?」
「よ、良くぞ聞いてくれましたっ!!今回のスナオニナール試作品第2号はですね……まず効果時間を1時間に短縮しました。」
「前回のは一生……って言ってなかったっけ?」
「はい、ただしですね、試作品第1号は治癒魔法や解毒薬を用いれば、効果の解消が可能だったんです。」
「ってことは今回のは?」
「今回改良した、スナオニナール試作品第2号は、効果を発揮する1時間の間は、治癒魔法でも解毒薬でも効果の解消が不可能ですっ!!そ、それに加えて、更にもう一つ効果が追加されてるんですよ。よ〜く見ててくださいね。」
そしてグライさんは、今度はスカーの口の中に手を入れて、舌をつまみだした。すると、そこへ改良版スナオニナールを垂らしていく。
「じ、実はこのスナオニナール試作品第2号は、私が品種改良したスライムが原料になってるんです。」
「ほへ?スライム?」
「み、見ててください。」
スカーの舌の上に乗った改良版スナオニナールは、先程俺が見たように、自発的に動いて口の奥へと入っていった。
「も、もしかして……それ生きてるの?」
「ふ、ふへへ、今回の最大の特徴がこれなんですねぇ。も、もし自白剤を飲まされたと分かったら……自分で舌を噛み切ったり、歯に仕込んだ毒とかで、自死をしようとする人もいるかもしれないじゃないですか。」
「まぁ、ありえない話じゃないよね。」
「そ、その対策に今回調合したスライムが役に立つんです。私の開発したスライムは体の中にいる間、宿主の神経を掌握します。それと同時に、自分が宿主にしてる生体を生かすために、命を脅かす毒を無力化してくれるんですねぇ。」
ピン……と人差し指を立てて、右往左往しながらグライさんは、今回の改良版スナオニナールについて説明してくれた。
「宿主って……なんか寄生虫みたいだね。ところで、肝心の自白剤の効果はどうなの?」
「あ、も、もちろん自白剤の効果は以前と変わらず強力なものにしてあるので……そ、その点は安心してください。」
「そっかそっか、なら良かった。」
うんうんと、ミカミさんが納得していると、グライさんよりもかなり遅れて、ドーナさんがこの場に戻ってきた。
「ん、もう始めてんのかい?」
「あ、ドーナちゃん。今お薬飲んでもらったところ〜。」
「薬を飲んでも目覚めてないってことは……昨日のやつみたいに気付けの効果は無いのかい?」
「き、気付け効果は、ちょっとスライムと相性が悪かったので……今回はありません。」
少し申し訳なさそうにしているグライさん。ドーナさんは、そんな彼女の頭にポンと手を置いて、逆さ吊りになっている男達へと歩み寄った。
「別に気付け効果が無いなら、アタシが叩き起こしてやりゃあ良いのさ。さ、顔面がマトマみたいになる前に、とっとと……起きなァッ!!」
ドーナさんは、貴族御用達の何でも屋だという男の顔面を、フルスイングで平手打ちした。すると威力が強すぎて、男は勢いのつきすぎたブランコのように大きく揺られ、天井にまた顔面をぶつけていた。
「ぶがっ!!ぐ……なに、が?」
綺麗に真っ赤な手形が顔に張り付いた男が、朦朧としながらも、目を開けた。
「おっ?なんだ、一発で目覚めちまったのかい?」
「き、貴様らは……す、スカーはどうし…………た。」
質問の途中で、自分の真横で同じく逆さ吊りになっているスカーの姿を見て、男は言葉に詰まった。
「アンタの用心棒なら、同じくこのザマさ。もうアンタを助けるやつはいないよ。」
「ぐ……し、仕方あるまいッ!!」
何やら覚悟を決めた表情で、男は思い切り歯を食いしばった。すると、バキッとなにかを噛み砕いた音が口の中から聞こえてくる。
それから少し時間が経ったが、男には何の変化も起きていない。そんな状況に、男は急に焦り始めた。
「な、なぜだ!?ど、毒は確かに飲んだ筈なのに……。」
焦る男へと、グライさんが体をくねらせ、興奮しながら、飲ませた薬について説明を始めた。
「ふへっ、ふへへへ……自死はできませんよ?あなたの身体に入ったスライムが、害のある毒は分解しますからねぇ。」
それを聞いて呆然としている男に、ドーナさんとミカミさんが暗い笑みを顔に貼り付けながら近寄っていく。
「さぁ、知ってることを洗いざらい吐いてもらおうかねぇ。」
「私達はキミの依頼主に用事があるんだよねぇ〜。」
それからドーナさんとミカミさんは、男を徹底的に質問攻めにして、遂にヴェイルファースト一家を狙う貴族の名前を聞き出すことに成功していた。
その後、ミカミさんの提案で、男は町の大通りのど真ん中で正座するように縛り付けられ、自分の恥ずかしい過去や、普通は口にできない犯罪行為……挙げ句の果てには、性癖を大声で叫ばされていた。
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