第148話 仮面の男の正体
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
ミカミさんが去ってしまった後、スカーはすぐにこちらに銃のような武器を向けてくる。
「ま~、妖精が一匹いなくなったところで状況は変わらな~い。スカーと依頼主は生き残る~。お前らは死ぬ~。」
そう言って、すぐに奴はこちらに向かって引き金を2回引いた。その狙いは俺達じゃなく、足元の床だった。発射された何かが木製の床を粉々に破壊し、破片がこちらに飛んでくる。
「チッ、小細工ばっかで男らしくないねぇっ!!」
「殺しに男らしさなんていらな~い。相手を殺せればそれでお~け~。」
少し怒りを滲ませながらそう口にしたドーナさんを、スカーがあざ笑う。しかし笑いながらも、銃口は俺の方を向いていた。
「パワーが強いだけの奴は面倒じゃな~い。面倒なのはそっち~。」
そしてまたスカーが引き金を引くと同時、俺の体は勝手に動き出し、体勢を床すれすれまで低くして、一気に床を蹴って奴に近づいた。
「やっぱりお前はめんど~。」
露骨に嫌そうな表情を浮かべ、スカーは体勢を低くしていた俺にまた銃口を向ける。奴がまた引き金を引く前に、奴が武器を手にしていた腕を蹴りあげた。しかし、それでも奴は武器を手放さなかった。
だが、蹴りあげられた腕は未だ天を向いていて、そこにすかさずドーナさんが接近した。
「今度も無事でいられるといいねぇ?」
「ははっ、お前は別にどうでもいいんだよな~。」
余裕ぶって、またドーナさんの攻撃を真正面から受けようとしていたスカー。ドーナさんの拳が奴に届く直前、それよりも早くキラリと光る何かがスカーの顔の両脇を通り過ぎていく。それによって、奴が両耳につけていたピアスが正確に破壊された。
「っ!?」
その瞬間、奴の表情から一気に余裕が消え去った。それがどうしてなのかを理解する前に、ドーナさんの拳が奴の顔面にめり込んだ。奴は背後で庇っていた依頼主ごと、また吹き飛ばされて、今度は隣の建物の壁に叩きつけられた。
「が……はっ。」
そして奴は依頼主と共に、ずるりと力なく崩れ落ちた。そんな彼らの様子を見て、ドーナさんが意外そうに声を上げた。
「おっ?今度は効いたみたいだねぇ。」
「お前の攻撃が効いたのは私のおかげだぞドーナ。」
足音もなく突然現れたのは、裏口で待機していたはずのルカだった。彼女の肩には、飛び出していったミカミさんもいる。
「んで、最初の一撃が効かなかったのは、結局どういうカラクリだったんだい?」
「ルカちゃんが破壊したあのピアスなんだけど、私が調べてみたところ、装着している人物に対する一定以上のダメージを無効化するって代物だったっぽいんだよね~。」
ミカミさんから説明を聞くと、それについてドーナさんが心当たりがあったらしい。
「そんな効果のピアス……。確か1年ぐらい前にダンジョンで発見されて、オークションで売りに出されたって話を聞いたことがあるねぇ。」
「彼がそれを買ったのか、はたまた彼を雇っている雇い主が持っていたものを貸し出していたのか……。その辺は定かじゃないけどね~。まっ、真相は後々わかるさ~。ルカちゃん、あの2人縛り上げちゃって~。」
「かしこまりました。」
常に携帯しているのか、ルカはどこからか縄を取り出し、気絶している2人を縛り上げて天井に吊るした。その間、ドーナさんはこのお店の店主と話をつけてくれていた。話に耳を傾けてみると、お店の修繕費はこの2人の財布から払う……とか、聞こえてくる。
そして話をつけた後、こちらに戻ってくると、ドーナさんは天井に吊り下げられているフードの男へと視線を向けた。
「さてさて、この仮面を引っぺがしてみるかい。」
「ね~、正体を見せてもらおうよ。私の予想だと、仮面まで被って自分の正体を隠したいってことは、こういうことをやってるってバレたくないような人だと思うんだよね~。」
ドーナさんがフードの男の仮面を引きはがしてみると、仮面の下からは無精ひげを生やした中年の男の顔が露わになった。どうやらドーナさんは、その男のことを知っているらしく、彼女はフン……と一つ鼻から息を吐き出した。
「コイツは確か……上流貴族御用達の何でも屋の店主だった気がする。」
「それホント?」
「あぁ、階級の高い貴族の側で何度か見たことがあるよ。それなりにこの国じゃ顔は広いはず。」
「へぇ~、それじゃあこの人から情報を聞きだせば、一気に犯人に近づけそうだね~。」
「間違いないと思うよ。」
2人はまだ目を覚ましそうにないので、今のうちにドーナさんがグライさんのことを呼びに行った。実は今日ここに来る前にスナオニナールをもらおうとしたら、レポートをもとにスナオニナールをさらに改良中らしく、もらえなかったのだ。
正直、あれでもだいぶ効果はあったと思うけど……いったいどんな改良が施されているのだろう?
そんな疑問を抱きながら、ドーナさんがグライさんを連れて戻ってくるのを待っていると、数分後にドーナさんよりも先にグライさんが興奮した様子で走ってきた。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。