第147話 フーリガンに現れた男達
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予約注文を受けた分のケーキを作り終えたその日の夜……俺はドーナさんとルカとミカミさんと共に、フーリガンという酒場の周辺で張り込みをしていた。目的はもちろん、例のフードの男を捕まえるためだ。
「さぁて、例の男は馬鹿正直に来るかねぇ……。」
フーリガンという店の裏で待機しているドーナさんはぽつりと言った。
「一応ホークネイルを壊滅させたっていう情報は、外部に漏れてないんでしょ?」
「あぁ、そいつに関しては問題ないよ。ホークネイルの親玉含め、構成員の奴らは全員奴らのアジトで拘束してるからねぇ。」
「お嬢様直伝の拘束方法で全員縛り上げてきたので、抜け出すことは不可能かと。」
「そっかそっか、じゃあまぁ……来るんじゃないかなぁ?結構高い依頼料支払ってたわけだし、相応の仕事はしてもらわないと向こうも困るだろうしね。」
小声でそんな会話をしていると、一つの足音が店の方に近づいていき、ガチャリと扉を開けた音が聞こえてくる。
「ん、誰か入ったねぇ。」
小窓から中の様子を確認すると、カウンター席にフードを被った男と、もう一人異様な雰囲気をまとった、紫色の長髪が特徴的な男が座っていた。その異様な雰囲気の男を見てドーナさんが表情をしかめた。
「アイツはもしかして……用心棒のスカーじゃないかい?」
「誰ですかそれ?」
「この国じゃ結構有名な用心棒さ、腕は確からしいけど、如何せん報酬が高額らしいからねぇ。アイツを連れてる輩は初めて見たよ。」
「でも、そんな輩を連れてるってことは、彼が依頼主で間違いなさそうだね。」
「あぁ、ってわけでアタシらは正面から行くよ。ルカは万が一にも逃げられないように裏口で待機してくれるかい?」
「いいだろう。」
ルカを店の裏手に残して、俺とミカミさんとドーナさんはフーリガンの店の中に入った。すると、フードの男の隣に座っていたスカーという用心棒の男がゆらりと立ち上がって、こちらに不気味な視線を送ってきた。
「誰かに見られてるのはわかってた〜……お前達だったのか〜。」
「アンタに用は無いよ。アタシらはそっちのフードの奴に用があるんだ。」
「そうはいかな〜い。お前達から、明らかな敵意を感じるからな〜。スカーは用心棒だ〜、依頼主を守るのが仕事〜。」
そしてスカーは、足元の木製の椅子をこちらに蹴り飛ばしてくる。
「まずは挨拶だ〜。」
「はん、そんな乱暴な挨拶はいらないねぇ。」
俺とドーナさんは、左右に飛んでその椅子を避ける。すると、スカーは俺の方に拳銃のような物を向けてきた。
「ーーーっ!!銃っ!?」
「まずは1人〜。」
スカーがその拳銃のような物の引き金となっている部分に手をかけると、銃口が一瞬紫色に光った。
それとほぼ同時に、俺の体は勝手に回避行動を取り、大きくその場からサイドステップを踏んでいた。
その直後、先程まで俺がいた位置を何かが通り過ぎていき、それが店の壁にぶつかると、大きな爆発を引き起こしたのだ。
「おぉ~……初見の筈なのに良く避けるな〜。」
感心したようにそう呟いたスカーの懐に、いつの間にかドーナさんが潜り込んでいた。
「アタシを忘れてもらっちゃ困るねぇ。コレは躱せないだろ?」
「確かに躱せないな〜……躱すつもりもないけどな〜。」
ドーナさんの剛拳をスカーは避けるような仕草も見せずに、そのままモロに受けた。攻撃の威力は凄まじく、奴は店の壁を突き破って外へと投げ出されていた。
「んっ、これでよし。意外と呆気なかったねぇ。後はアンタを……。」
勝ちを確信したドーナさんがフードの男を捕まえようとすると、さっき殴り飛ばされたスカーが平然と店内に戻ってくる。
「おいおい〜、さっき言ったぞ〜?スカーの仕事は〜……。」
パンパンと埃を払いながら、スカーはまるで空気に溶け込むようにその場から消えた。そして突然、ドーナさんの目の前に姿を現す。
「依頼主を守ることだ〜。」
「ッ!!」
ドーナさんの眼前に突きつけられた、拳銃のような武器。その引き金が引かれると同時に、ドーナさんは大きく後ろにブリッジして攻撃を回避する。
「2発目もあるぞ〜。」
またアレを撃とうとしていたスカーへと、俺は近くにあった空き瓶を投げる。奴は攻撃よりもそれを避けることを優先し、依頼主を庇いながらバックステップした。
「お前も面倒だな〜妖精使い。」
少し機嫌が悪くなったらしく、スカーはコチラを睨みつけてくる。その間に、体勢を立て直したドーナさんが俺の横に立って一言お礼を言ってきた。
「助かったよヒイラギ。正直今のはヤバかった。」
「いえ、無事で何よりでした。」
「しっかし、アイツはなかなか厄介だねぇ……。高威力の飛び道具に、アタシの本気の一撃を喰らっても立ってる異常なタフさ……。どう戦うかねぇ。」
一瞬の硬直の最中、今までの戦闘を見ていたミカミさんが何かに気が付いた。
「んん?あっはぁ〜、もしかしてそういう事なのかな?」
「何か分かったのかい?」
「多分ね。ドーナちゃんと柊君、もう少しだけ彼と戦っててくれないかな?私に作戦がある。」
「わかった。」
「わかりました。」
するとミカミさんは、先程スカーが殴り飛ばされた時に破壊された壁から外に出ていってしまった。
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