第146話 流れ作業による効率化
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スポンジケーキを焼いている間に休憩を取りながら、調理を進めること約3時間ほど……ようやくスポンジケーキが120個分出来上がった。10個分多いのは、万が一この先の盛り付け作業で失敗したとき用の保険。もし1個も失敗しなかったら、俺達のおやつになる予定だ。
「よし、一先ずスポンジケーキ作りはお終いかな。」
「110個って聞いた時は、とても驚きましたけれど……意外と作れるものですわね。」
大きなテーブルに、ズラリと並べられたスポンジケーキを眺めて、リタがポツリと呟いた。
彼女も昨日とは違い、一つ一つの調理工程において、焦らずに失敗なくこなせていた。昨日散々失敗したのが大きな成長に繋がったのかもな。
「今作ったのはただのスポンジケーキだ。これから装飾して、こんな感じにしていくんだぞ。」
俺はマジックバッグから、完成品のケーキを1個取り出してその場に置いた。
「今からコレを……。」
少し不安そうに完成品のケーキを見つめるミハエルさんに、俺は優しく声をかけた。
「大丈夫ですよミハエルさん。ここからは各々調理作業を分担していきますから。」
ここからは作業を分担して、一気に流れ作業で仕上げる。
「まずミハエルさんは、この出来上がったスポンジケーキの、ふわっと盛り上がってる部分を、こんな感じで平らにしてもらった後……これを半分に切ってもらいます。ナイフを大きく動かすと切りやすいですよ。」
一度見本をやってみせた後、ナイフをミハエルさんに手渡して実際にやってもらった。すると、最初の1回目は失敗するかも……と思っていた俺の予想は外れ、スポンジケーキの形を綺麗に整えて、ほとんど誤差なく半分にしてみせた。
「1回目でここまで上手くやるなんて……凄いですねミハエルさん。」
「ははは、ここで初めて培ってきた剣の技術が使えましたよ。」
「後は任せても大丈夫ですか?」
「はいっ!!お任せください。」
ミハエルさんにスポンジケーキの成型を任せて、今度はリタに視線を向けた。
「それじゃあ今度はリタだな。」
「わたくしは何をすれば良いんですの?」
「リタには、このたくさんの果物を散りばめる作業とクリームを塗る作業をやってもらおうかな。」
先程ミハエルさんに切ってもらったスポンジケーキをリタの前に置いて、俺はその上に泡立てた生クリームを塗り広げ、3種類の果物を散りばめた。
「一見簡単に見えるけど、生クリームの厚さは均一に……そして、できれば同じ果物が1箇所に固まらないように気をつけてやってほしい。」
「1箇所に固まると何がダメなんですの?」
「この後、フレイアさんの作業が大変になる。」
そう言うと、リタはハッとなりながら、何度も頷いた。
「き、気を付けますわ!!」
「良し、じゃあやってみよう。」
そしてまたミハエルさんと同じように、リタにも実際にやってもらって感覚を掴んでもらった後、今度はお待ちかねだったフレイアさんのところに、果物が散りばめられたスポンジケーキを運ぶ。
「フレイアさんは、俺と一緒に最後のデコレーション作業をやりましょう。」
「よろしくお願いしますヒイラギさん。」
「じゃあまずは、リタが乗せてくれたクリームと果物を挟み込むように、スポンジケーキを重ねてください。」
「こうですか?」
「はい大丈夫です。その後は、この大量の生クリームをヘラを使ってまとわせていきます。」
表面と外側を生クリームでコーティングし、気泡や波打ちが無いように綺麗に整えていく。フレイアさんも俺の真似をして、ケーキを生クリームで包んでいった。
「流石です、手先が器用ですね。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
家事全般を担っていただけあって、フレイアさんの手先は器用だ。あっという間に俺の技を真似してしまう。
「表面を綺麗に整えられたら、この絞り袋でクリームを……ちょんと。」
「まぁっ、そうやってあの装飾を作っていたんですね。」
「そうです。これを等間隔で作って、その間にまた果物を並べていくと……。」
「あっ!」
「これでようやくケーキの完成です。」
「こんなたくさんの工程を経た先に、このお菓子が出来上がっていたのですね。」
「その通りです。さ、これからどんどんミハエルさん達がこっちに流してくれますから、こっちもどんどん仕上げていきましょう。」
この前ミカミさんと一緒にやった時の、倍以上の速度でケーキが仕上がっていき、正午を少し過ぎた頃には予約注文分のケーキ110個プラスで予備の10個が出来上がってしまった。
「皆さんお疲れ様でした。」
「みんなお疲れ様〜っ。」
「「「お、お疲れ様でしたぁ……。」」」
流石に昨日よりもみんなの顔に疲れの色が見えるな。
「仕事を終えた直後にまた仕事の話で、申し訳ないんですけど……最後の流れ作業は、みんなが出来るようになるために、何回かやったら役割を交換していきましょう。」
「わ、わかりました。」
最終的には、みんな各々が1人でケーキを作れるようになってほしいからな。
まぁ、兎にも角にもひとまず大仕事を終えたし、ミハエルさん達には今日はゆっくりと休んでもらおう。
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