第144話 ホークネイルについての報告
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その日の夕食時になっても、ドーナさんと一緒に飛び出していったルカは帰ってこなかった。ミハエルさん達と一緒に夕食を食べて、明日に備えて寝ようとしていたその時だった……。
コンコン……と部屋の扉がノックされる。
「ご主人様、お待たせいたしました。ルカです。」
「あぁ、やっと帰ってきた。今開けるよ。」
扉を開けると、そこには服に少しも乱れも汚れもないルカが立っていて、こちらにぺこりとお辞儀してくる。
「お疲れ様だったなルカ。」
「お時間をかけてしまい申し訳ありませんでした。ホークネイルのアジトが少々この町から遠い場所にあったもので……。」
「まぁまぁ、詳しいことは座って話そう。ご飯も食べてないんだろ?ルカの分、温めるだけにしてあるから、食べていきなよ。」
「ありがとうございます。」
また一つお辞儀をしてルカは部屋の中に入ると、行儀よく椅子に腰かけた。俺は彼女の前に、今日の夕ご飯だった、マッドバッファローの生姜焼き定食を温め直して差し出した。
「はいお待たせ、今日の夕ご飯はマッドバッファローの生姜焼き定食だ。」
「ありがとうございます。では……いただきます。」
そしてルカが食べ始めると、こちらにミカミさんが飛んで来て、ルカの方に腰掛ける。
「ところでルカちゃん、例のホークネイルの親玉から何か情報は引き出せた?」
ルカは口いっぱいに詰め込んでいたマッドバッファローの生姜焼きと、ホワイトライスをゴクンと飲み込むと、ミカミさんの問いかけに淡々と答えを返す。
「もちろんです、お嬢様。どうやらホークネイルの親玉は、フードを被った仮面の男に高額の報酬で釣られて、依頼を受けたと。」
「フードを被った仮面の男ねぇ~、もう見てくれからして怪しさ満点って感じ。」
「聞き出した情報によると、依頼の進捗を報告するために明日の夜、この町のフーリガンという酒場にて、その男と会う約束があるという事も聞きだしました。」
「あっはぁ~、ナイスだよ~ルカちゃん。また一つ、黒幕に近づいたね。……それとちょっとした疑問なんだけど、どっちが先に親玉にスナオニナールを飲ませたの?」
「……同時でした。」
「ありゃ、それならホークネイルの親玉は、2本アレを飲んだってことなんだね。1本飲ませただけでもあの苦しみようだったのに、2本飲んだなら……。」
「はい、大層苦しんでおりました。ですが、2本飲ませただけあって、こちらが聞いていないことまで、ペラペラと口を割ってくれました。」
ミカミさんに事の顛末を説明している最中、ルカは空っぽになったご飯茶碗をこちらにスッと差し出してくる。
「ご主人様、おかわりを所望します。」
「はいはい、生姜焼きは?」
「あるのであれば、ぜひとも頂きたいです。」
「わかった。……それと、口元にご飯粒ついてるから、取ったほうが良いぞ。」
自分でも気づいていなかったらしく、ルカは口元に一粒だけついていたご飯粒を指で掬い取ると、そのまま口の中に放り込んでいた。
そして何かを考えるように顎に手を当てると、ポツリとこんなことを言い出した。
「失礼を承知で言わせていただきますが……今思えば、私がドーナに競り勝てなかったのは、ご主人様にも多少の責任があるのかもしれませんね。」
「えっ!?」
思わず困惑していると、ルカがそれについて理由を語り始めた。
「私がドーナよりも先にあの男へと到達できなかったのは、ご主人様のご飯を毎日食べているというからという可能性も……。」
「……つまり太ったって言いたいのか?」
「認めたくはありませんが、最近筋肉の上に脂肪がついたような気が……。」
「じゃあ、これから自分でご飯作る?」
そう問いかけると、彼女は何度もふるふると首を横に振った。
「私の胃袋は、既にご主人様専用に作り変えられていますので、ご主人様以外の作った料理を受け付けなくなっているのです。」
淡々と語りながら彼女は、おかわり分のマッドバッファローの生姜焼きと、ホワイトライスの大盛りを平らげてしまった。
「ごちそうさまでした。本日の夕食も大変美味でした。」
「はいよ、お粗末様。」
空になったお皿と、こちらに向かって両手を合わせ、ルカはペコリと頭を下げる。
「あ、ルカちゃん。渡し忘れる前に……これ、ボーナスねっ。」
ミカミさんは、俺のマジックバッグから白金貨を1枚引っ張り出してきてルカに手渡した。
「こ、こんなにもらってもよろしいのですか?」
「うん、今回は盗賊団から情報を聞き出す……っていう危ないお仕事を依頼しちゃったからね。それに、明日もその酒場で、フードの男をとっ捕まえてもらわないといけないからね。」
「承知いたしました。必ずや、この手で捕らえてみせましょう。」
白金貨をミカミさんから受け取って、ルカはそのままその手を心臓に当てた。
「期待してるよルカちゃん。今日はもうお部屋に戻っておやすみ。」
「はいっ、それではおやすみなさいませ。」
深々とこちらに頭を下げて、ルカはほんの少しスキップしながら、上機嫌で自室に戻っていった。
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