第141話 スナオニナールの効果
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ドーナさんは、デスピルマの辛さでもだえ苦しんでいる男の一人の体を、上から踏みつけて押さえると男に向かって問いかけた。
「アンタらには聞きたいことがある。ヒイラギを探せって、アンタらに命令した奴は誰だい?」
「かはっ、げほっ……お、オレ達にこの仕事を命令したのは、盗賊団ホークネイルのボスだっ。がぐぐ……。」
「お、お前ッ、何本当のこと喋って……。」
「なるほどねぇホークネイルの奴らか、良~く分かった。で、なんでアンタらはその仕事を請け負ったわけ?」
「ひ、ヒイラギってやつを攫ってくれば、盗賊団に入れてもらえるって話だったんだ。っ!!な、なんで言っちまうんだオレはぁっ!?」
「ふへへへ、自白剤の効果もばっちりですねぇ。しょ、正直者になれて良かったですねぇ~。」
引き笑いをしながらグライさんは、凄まじい速度でレポートを書き込んでいく。その間に、ドーナさんが尋問を続けていき、彼らから必要な情報を全て抜き出していた。
「ミース、一先ずこいつ等は衛兵とかにも引き渡さず、ギルドで拘束しといてくれ。有名貴族が絡んでるって可能性があるなら、衛兵には引き渡せない。情報は拡散させないようにしないとねぇ。」
「承知しましたっ!!」
ミースさんは男たちを手慣れた手つきで縄でぐるぐる巻きにして拘束すると、彼らの顔に麻袋をかぶせてどこかに引き摺って行ってしまった。
「さて、これで一つ前進だねぇ。次はアイツらに仕事を依頼した、ホークネイルの親玉に話を聞きに行こうかねぇ。」
ボキボキとドーナさんは指を鳴らして凶暴な笑みを浮かべる。
「ヒイラギ達はどうする?」
「俺は……。」
「柊君はミハエル君達とケーキを作んなきゃいけないでしょ?それに彼らのことを守ってあげないといけないし、彼らの近くを離れちゃうのは好ましくない。」
俺の代わりに言葉を代弁したミカミさんは、チラリとルカの方に視線を向けた。すると彼女も何をお願いされるのかわかっているようで、ぺこりと頭を下げる。
「お願いしてもいい?ルカちゃん。」
「お任せください。」
「ありがと~っ。この分はお給料に上乗せしとくからね。」
その言葉にルカは少し嬉しそうな表情を浮かべると、ドーナさんのところへと歩み寄っていき、スン……と無表情になってドーナさんに一つ声をかけた。
「足は引っ張るなよ?」
「はぁん?誰に言ってんだい。アンタこそ、メイドに転職して腕が落ちたりしてないだろうねぇ?」
「なら試してみるか?今……ここで。」
お互いにバチバチと火花を散らしている、まさに一触即発な状況の中にミカミさんが割って入る。
「こらこら、キミ達はこれから一緒に行動するんだから、仲良くね~。それに、もし勝負をするなら、これを使って勝負しよう。」
ミカミさんはすぽっとグライさんの白衣の内側に潜り込むと、先程あの男たちに飲ませていたスナオニナールを2つ引っ張り出して、ドーナさんとルカに手渡した。
「ホークネイルの親玉に、先にこれを飲ませて情報を聞き出したほうが勝ち……ってのはどうかな?」
「アタシは別にそれでも構わないよ。」
「私も構いません。」
「じゃあそういう事で。頼んだよドーナちゃん、ルカちゃん。」
その後、ドーナさんとルカの2人はお互いに睨み合うと、凄まじいスピードでその場から消えてしまった。
「これで一先ず、ホークネイルの件についてはまぁ~大丈夫でしょ。」
「はぅあぁ……2人にレポート渡せませんでした。で、できれば記録をとってほしかったんですけど。」
「大丈夫だよグライちゃん、ルカちゃんが帰ってきたら事細かにレポートを書くように言っとくね。」
「あっ、そ、それは助かります~。」
「それと、さっきのお薬のお礼に良かったらスポンジケーキ食べていかない?」
「すぽんじけーき?あっ、もしかして今ギルドで販売されてた……。」
「そうっ!!今ちょうど1個焼きあがったみたいだから、食べてって~。」
「い、いいんですか?」
「もちろん。柊君、用意してもらえるかな?」
「任せてください。」
そしてミハエルさん達からスポンジケーキを受け取りに行くと、彼らは皆一様に不安そうな表情を浮かべていた。その中で、ミハエルさんが申し訳なさそうに口を開く。
「申し訳ありませんヒイラギさん。私達家族のせいでご迷惑を……。」
「大丈夫ですよミハエルさん。こういう風なことになるのは、予想していましたから。」
安心してもらえるように優しくそう言うと、リタが我慢できなくなったらしく声を上げた。
「わ、わたくしも戦いますわッ!!ヴェイルファースト家の人間として、剣術には……。」
リタが言いかけていた途中で、神速でミカミさんがこちらに飛んできて、リタの口を塞いだ。そして諭すように彼女に語り掛ける。
「リタちゃん、冷静になるんだ。今のキミが……いや、今のヴェイルファースト家のみんながすべきことはなにかな?」
その問いかけに、リタは出来上がっていたスポンジケーキに一瞬目を向けた。
「ヒイラギさんのお菓子作りの……お、お手伝いをすること。」
「その通り。よくわかってるね。」
ミカミさんはリタの頭をポンポンと撫でる。
「キミ達のことを狙ってる輩のことは私達に任せてさ、リタちゃん達は安心してお菓子作りに専念してよ。それが私達にとっても、キミ達にとっても一番為になるからさ。」
ミカミさんのその言葉で、リタ達ヴェイルファースト一家の表情から少し不安が晴れたようだ。そして気持ちを切り替えてまた、お菓子作りに励み始めたのだった。
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