第138話 料理教室の成果は如何に?
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材料を量り終えた後、各々に手渡したレシピ通りにスポンジケーキ作りを進めてもらった。もちろん俺はみんなの作業に目を配って、失敗しないように細かいコツなどを教えていく。
そして、出来上がったスポンジケーキの生地をオーブンで焼いている途中、俺はミハエルさん達にやってみてどうだったか聞いてみることにした。
「お疲れさまでした。やってみてどうでした?」
「ヒイラギさんの教え方がお上手でしたので……料理は初めてですが、それなりにできたような気がいたします。」
「私もてっきりお菓子作りとは難しいものとばかり思っていましたけれど、ヒイラギさんが優しく丁寧に教えてくれたおかげで、とても楽しくできました。」
「それは良かった。で、リタはどうだった?」
ミハエルさんとフレイアさんの2人は、手先は器用な方だったらしく、初めての作業ながらもスムーズな方だった。だが、リタは小麦粉を篩うときになぜか頭から小麦粉を被ってしまったり、なかなか悲惨だった。
「……改めてわたくしの不器用さを実感しましたわ。一人じゃ何もできないんですのね、わたくしは……。」
今にも部屋の隅っこで体育座りしてしまいそうなほどに落ち込んでいるリタ。そんな彼女の方にポンと手を置いたのは、リタほどではないが、なかなかスポンジケーキ作りに苦戦していたミースさんだった。
「まだ落ち込むことないですよリタさんっ!!まだ完成したわけじゃないんですから……ねっ?」
「ミースさんの言うとおりだぞリタ。」
俺もそう声をかけながら、オーブンの中で膨らんでいるスポンジケーキに目を向けた。ほんのわずかに生地の膨らみ方に個人差が出ているものの、これは手作りならではのものだ。今のところ失敗とハッキリ断定できるものは無いように見える。
「さて、そろそろ時間だが……どうかな?」
オーブンからスポンジケーキを取り出して、串を刺し入れてみた。引き抜いたときにねっとりとした生の生地は引っ付いてこない。という事は焼きあがっている証拠だ。
「はい、みんな集まってください。焼きあがりましたよ。」
集まってきたみんなの前に、各々の名札を刺したスポンジケーキを並べていく。すると、リタが口を両手で押さえて驚いていた。
「あ、あれっ?わたくしのが一番膨らんでいるような……。」
「うん、間違いなくリタの作ったやつが一番膨れてるな。ってことは、良くできてるって証拠だ。」
出来立てのスポンジケーキをカットして、みんなの前に差し出した。
「じゃあ後は自分の作ったスポンジケーキを食べてみてください。お互いに作ったものを食べ比べてみても良いですよ。」
そしてミハエルさん達は、早速自分で作った出来立てのスポンジケーキを一口食べた。するとみんな一様にパチッと目を見開いて驚いていた。
「美味しい……これを本当に私が。」
「ね~っ、とっても美味しいですわね貴方っ。リタが作ったものはどう?」
「お、お母様。わたくし、自分が信じられませんわ。あんなに失敗したのに、こんなに美味しく出来上がってるなんて。」
驚いているヴェイルファースト一家をミースさんが頬をリスのように膨らませながら、笑顔で見つめていた。
「ミースさんのスポンジケーキも,、美味しく出来上がってたみたいですね。」
そう声をかけると、ミースさんは何度も首を縦に振って、ゴクンと口いっぱいに入っていたスポンジケーキを呑み込んだ。
「すっごく美味しくて、ぎゃ、逆に心配になっちゃったんですけど……これ、私に教えちゃって大丈夫なんですか?」
「別に大丈夫ですよ。これってケーキの基本ってだけのものなので。家でも良かったら作ってみてください。」
「も、もちろん作りますけど……で、でもやっぱり私はヒイラギさんが売ってくれる、あのクリームと果物たっぷりのケーキが良いですね。」
「あはは、ありがとうございます。」
その後、お互いに作ったスポンジケーキを交換しながら味わっていたみんなにくるりと背を向けて、首を長~くして待っていたシア達のところに俺は向かった。
「みんなお待たせ。」
「おっ、来たね~柊君。待ちくたびれたよ~。」
「ケーキっ!!……あれ?ケーキじゃない?」
何の装飾もないスポンジケーキを見て、シアが少し残念そうに首を傾げる。
「これはスポンジケーキって言ってな。いつも食べてるクリームとか、果物とかをデコレーションする前の状態のものなんだ。ケーキの基本の味を形成する軸みたいな存在だから、これだけでも十分に美味しいぞ。」
「そうなの?」
「クリームとかいっぱい使ったケーキは今度作ってあげるから、今はこれを食べて感想を教えてほしいんだ。」
「わかった!!」
気持ちを切り替えてくれたシアは、早速名札が別々に配置されたスポンジケーキへと視線を向け、リタが作ったものを大口で頬張った。
「んんっ!!おいひぃっ!!」
「普段俺が作ったケーキを食べ慣れてるシアが、美味しいって言うなら間違いはなさそうだな。」
「ミハエル君達が作った方も十分美味しいよ、柊君。」
「めちゃくちゃ美味しいっす~、もっと食べたいっすねぇ~。」
「んむ、味に関しては合格かと……。」
ハムスターのように両頬を膨らませながら、ミカミさん達もミハエルさん達が作ったスポンジケーキを絶賛している。
これなら、あとはレシピ通りに反復練習してもらうだけで、ミハエルさん達もケーキ作りにおいてはかなりいい戦力になってくれるだろう。ただその反復練習をしてもらう前に、リタには一言アドバイスをしておいた方が良さそうだな。
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