第137話 柊の料理教室
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魔法でこの元酒場だった場所を綺麗に元通りにした後、呆気に取られているみんなを置いて、俺はミカミさんと一緒に厨房の中に入って、調理設備の確認を始めた。
「コンロに火は点くし、火力も安定してる。オーブンもちゃんと機能してて……冷蔵庫もしっかり冷えてる。冷凍庫の方には霜も張り付いてない。」
「シンクのお水もちゃんと出るよ~柊君。」
「ってことは、もう今からでもちゃんと使えそうですね。」
「んねっ、問題無~し。」
すべての設備が問題なく動くことを確認した後、みんなのところに戻ると、シアとグレイス以外のみんなは、まだ現実を受け入れられていないような状況だった。
「お兄ちゃん!!今日はここでお料理するの?」
「あぁ、ミハエルさん達にお菓子の作り方を教えるんだ。」
「じゃあじゃあお菓子いっぱい食べれる!?」
「もちろん、シアとグレイスには試食係になってもらうから、今日はたくさんお菓子を食べてもらうぞ。」
「やったー!!」
「役得っす~!!」
綺麗になったこの場所で、はしゃぎまわるシアとグレイス。それを微笑ましく眺めていると、ようやくミースさんが口を開いた。
「時間操作魔法を本当に……ひ、ヒイラギさん。あ、あなたはいったい……。」
「ミースちゃん、くれぐれもこのことは内緒にねっ?ミハエル君達もね?」
ミカミさんが口に人差し指を当てながらそう言うと、みんなは一様に何度も頷いた。
「さっ、気持ちを切り替えて~、そろそろ柊君主催のお料理教室を始めようか。ミハエル君にフレイアちゃん、リタちゃんはこれに着替えてね~。」
ミハエルさん達にミカミさんは、ここに来る道中で購入した割烹着のような衣服を手渡していく。彼らがそれに着替えている間に、ミースさんがこちらに歩み寄ってきた。
「あ、あのヒイラギさん?」
「はい?どうしました?」
「さっきの時間操作魔法の件はしっかりと私の心の中にしまっておくので……その、良ければ私もそのお料理教室ってやつに参加しても?」
「別にいいですけど、業務は大丈夫なんですか?」
「ほ、ほんの10分だけ時間をください。すぐに全部片づけてきますっ!!あっ、それとミルタさんから商品が届いてましたから、それも一緒に持ってきますね。」
「あ、は、はい……お願いします。」
そして材料などを準備している間に、ミースさんが息を切らしながら戻ってきた。
「ぜぇ……ぜぇ、お、おまたせしました。こちらがホワイトライスと砂糖芋です!!」
ミースさんは、マジックバッグからホワイトライスと砂糖芋を取り出して床に置いた。
「あっ、ありがとうございます。」
麻袋を開けて、中身に入っていたホワイトライスの品質を確認すると……。
「うん、とても綺麗に精米されてる……。不純物も見当たらないし、品質はかなり良さそう。こっちの砂糖芋はどうかな?」
砂糖芋が入っている方の袋を開けてみると、その瞬間……蒸した甘いサツマイモのような香りが、ふわりと漂ってきた。
「おぉ、もうこんなに甘い香りがするんだ。」
見た目は完全にサツマイモだけど、やっぱり少し違うみたいだな。
「さすがに生では……。」
指で叩くとコツコツと音が鳴るし、生で食べるのは少し……いや無理そうだ。
「コレはみんなにお菓子を教えてる最中に、蒸しておこうかな。」
ホワイトライスと砂糖芋をマジックバッグにしまい、そこからもう一つ、ミハエルさん達に支給したものと同じ割烹着のような服を取り出してミースさんに手渡した。
「はい、これミースさんの分です。」
「わっ!!急なお願いだったのに……ありがとうございます!!」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ。それに着替えたら、厨房の中に……。」
「着替えましたっ!!」
瞬きをした次の瞬間には、ミースさんは割烹着に着替えてしまっていた。
「す、凄い早着替えですね……ま、まぁ早速行きましょうか。」
「はいっ、お願いします!!」
そしてミースさんを連れて厨房の中に入ると、ミカミさんがちょうどミハエルさん達にメモを取る用のノートを手渡していた。
「あ、柊君にミースちゃん、待ってたよ〜。」
「おまたせしました、じゃあ早速始めましょうか。」
俺自身も以前購入していたコックコートのような服に着替えて、みんなの前に立った。
「さてと、今日はスポンジケーキっていう、色々なケーキの中での基本を教えます。」
「「「はいっ!!」」」
みんな各々、凄く気合いが入っているらしく、返事が力強い。
「まず、お菓子を上手に作るコツは2つです。1つは、分量を必ず正確に量ること……そして2つ目はレシピ通りに作ること。この2つです。」
俺が口にしたことを、みんなはサラサラとメモしていく。
「ということで、まずはここに書いた材料を、一つ一つしっかりと計量するところから始めましょうか。」
まずは、お菓子作りでの基本中の基本……まずは計量からやってもらおう。
あらかじめ俺が量っておいても良かったけど、それだと、お菓子作りにおいて、どれだけ計量が大切か気づかないかもしれないからな。
こうしてまずは材料を一つ一つ量るところから、料理教室は幕を開けたのだった。
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