第136話 ギルドの地下にある施設
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ヴェイルファースト一家を救った翌日の朝、俺はミハエルさん達も連れて、みんなでギルドへと足を運んだ。
「あっ!!ヒイラギさん、ミカミさんおはようございます!!」
「ミースちゃんおはよ〜。」
「おはようございますミースさん。」
「今日は何か依頼を受けにいらしたのでしょうか?」
「あ、実はそうじゃなくて、この町の何処かで大きな調理施設を借りれないかなって、相談に来たんですけど……。」
そう言うと、ミースさんは俺がお菓子のためにそういう場所を探していることを察したらしく、一つ頷いた。
「実はですね、ちょっとした手間さえ許容してくれるなら、無料で貸し出せる調理設備が揃ってる場所があるんですけど……。」
「ちなみにその手間ってどんな感じ?」
「主なのは掃除になると思いますね……多分。」
「多分?」
「ま、まぁお使いになるかならないかは、一先ず見てから決めてもらえれば……。」
そして俺達はミースさんに案内されて、ギルドの地下へと続く階段を降りていく。
「ギルドに地下があったんだね〜。」
「この地下は、まだこのギルドの規模が小さかった時に酒場として使っていたスペースなんです。今はかなり大きくなったので、すっかり使わなくなっちゃったんですよ。」
「なるほどね〜。そういう場所があるなら最初から言ってくれればいいのに〜。お菓子を売るスペースだってこの地下で十分でしょ?」
「い、いやぁ……何年も人の手が入ってなくて、流石にちょっと荒れ果てちゃってますから……。」
苦笑いしながらミースさんが、壁に設置されていた赤いパネルのようなものを押すと、階段を降り切った先の部屋の中に設置してあった全ての松明に火が灯った。
明かりが点いて全貌が明らかになったこの空間は、巨大な食堂のような構造になっていた。酒場として使われていた名残で、酒樽なども無造作に転がっている。
「おぉ~……使われてた名残は一応あるんだね。」
パタパタとミカミさんが埃の積もったテーブルの方に飛んでいくと、ぶわっとほこりが宙に舞い上がる。
「けほっ!!な、な~るほどね。こりゃあ結構な手間が必要だねぇミースちゃん。」
「あはは……す、すみません。なかなかここのお掃除には手が回ってなくて。」
「私達のお菓子の販売は手伝ってくれるのに?」
「あぅ……そ、それはその~……。」
「まっ、せっかくこんないいところを貸してもらえるんだし、これ以上は何も言わないよミースちゃん。」
「た、助かります~。」
言葉に詰まっているミースさんへこれ以上言及するのをやめたミカミさんは、改めてこの広い空間に目を向けた。
「ひ、ヒイラギさん、ミカミさん、掃除であれば申し付けて頂ければ私達が……。」
「いや、大丈夫だよミハエル君。ここの掃除は普通にやったら一日じゃ絶対終わらないから。」
そう言いながらミカミさんはこちらに目を向けてきた。もうミカミさんが何をどうしてほしいのか、察しはついている。
「魔法でどうにかすればいいんですねミカミさん。」
「そういう事~♪さっすが柊君、察しが良くて素晴らしいよ~。」
「でもどうやって片付けます?水で全部押し流すとか?」
「それじゃダメだね。まずは掃除するっていうイメージから離れようか。」
「え?じゃあどうするんです?」
「時間を巻き戻せばいいんだよ。この酒場が最初に使われようとしていた時までね。」
「なるほど、それなら確かにイメージできそうです。」
2人でそう話していた時、ミースさんが隣ですごく驚きながら声を上げた。
「じ、時間を巻き戻すって……ヒイラギさん、時間操作魔法まで使えるんですか!?」
「時間操作魔法?」
思わず聞き返してしまうと、ミースさんはポカンとしながら、それについて説明してくれた。
「じ、時間操作魔法はその名の通り時間を強制的に進めたり、巻き戻したり、時間を止めたりすることができる魔法のことです。げ、現代では使える人はいないって言われてる魔法なんですけど……。」
「あら、そうなんだ。それなら俄然やる気が出てきたね柊君。現代で唯一の人物になれるかもよ?」
「やれるだけやってみますよ。」
目を閉じて両手を前に出しながら、頭の中で映像を巻き戻すようなイメージを必死になって思い浮かべる。するとがたがたと目の前で物が移動する音などが聞こえ始めた。
「え、えっ!?こ、これ本当に……。」
「ど、どうなってるんですの!?」
「いいよ~柊君、その調子その調子。」
ミースさんやリタ達が驚く声と、ミカミさんが褒めてくれる声を聞きながら、体の中から抜けていく魔力を感じていると、ある程度時間が経ったところでミカミさんがまた声を上げた。
「柊君、ストップ!!」
その声がかかったと同時にイメージするのをやめて、目を開けると……。
「あっ!!すごく綺麗になってる。」
さっきまで荒れ果てていた酒場として使われていたこの場所が、新築同様にすっかり綺麗に様変わりしていたのだ。
「試みは大成功だね柊君。」
ミカミさんとハイタッチをしている横で、ミースさんとヴェイルファースト一家は、口をあんぐりと開けて固まってしまっていた。
これだけ綺麗になったのなら、これからお菓子を販売するのはここでできそうだな。後は調理設備が機能するのかどうか、確かめるとしよう。
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