第134話 危険な帰り道
昨日私の手違いで投稿できていませんでした。すみません。本日もう1話更新します。
オークションからの帰り道、オークション会場に向かっている時までは明かりがまだ灯っていたが、今はその明かりすらも消えて辺り一帯は暗闇だ。月明かりを頼りに帰り道を歩いていた途中で、俺のスキルの危険察知が発動した。
「……みんな止まって。」
俺の後ろにいたリタ達を制止させると、ミカミさんが目の前の暗闇に向かって声をかけた。
「そんなところにこそこそ隠れてないで、男らしく出てきなよ。」
そう声をかけると、両脇の路地からぞろぞろと武器を手にした男たちが現れる。その中で最も巨体の男が、普通の人の体よりも大きな剣を地面に突き刺しながらニヤリと笑い、懐から奴隷の首枷を取りだした。
「なかなか察しが良いじゃぁねぇか……んん?そんだけ察しが良いなら、オレらが言いてぇことも分かるよなぁ?」
「ん~、生憎わからないなぁ~。できればキミ達にそのお仕事を依頼した人物からぜ~んぶ聞かせてもらえるかい?」
「はっ、仕事を依頼だぁ?オレ達はテメェらが持ってるモンが欲しいからここにいるんだぜ?」
「ちぇ~っ、キミは顔が馬鹿っぽいから、さらっと話してくれると思ったんだけどなぁ。」
「なんだとクソガキィッ!!」
あっさりとミカミさんの挑発に乗った大男が、地面に刺さっていた剣を引っこ抜いて、地面を揺らしながらこちらに猛然と走ってくる。
「とっとと死ねぇッ!!」
その巨体から、ゴウッと風を切りながら振るわれた大剣……。それは俺に届く前に、男の手を離れ地面に落ちた。それよりも前に俺が男の股間を蹴り抜いていたからだ。
「うはっ……今のはえぐいねぇ~。大丈夫そ~?」
ケタケタと笑いながら、ミカミさんは股間を押さえて気絶してしまった男のハゲ頭をぺちぺちと叩く。そして後ろで思わず内股になっている仲間の男たちに視線を向ける。
「キミ達はかかってこないの?」
「なっ……舐めやがって。」
「キミ達みたいなばっちいのを舐めたりしないよ。舐めるならアイスとかキャンディが良いもんね~。」
「わけのわかんねぇこと言ってんじゃねぇ!!てめぇら、数で潰すぞ!!」
そう男たちが意気込んだ次の瞬間、月明かりが一瞬遮られ、声を上げていた男の顔が地面にめり込んだ。
「あ、ルカちゃ~ん。来てくれたんだ?」
「遅くなってしまい申し訳ありません。」
男の頭の上に立ちながら、ルカはぺこりとお辞儀をした。そのまま鋭い棘のようなものをスカートから取り出して男たちに向けて放った。すると、それが刺さった男たちがバタバタと地面に倒れていく。
「即効性の強力な麻痺毒を塗った毒針です。死にはしませんが、丸一日動けなくなります。」
「さっすがぁ~、じゃあとっととおさらばしよ~。」
そして俺達はその場から逃げるように宿まで走った。何とか宿の中までたどり着いたところで、ミカミさんは眠っているシアをマジックバッグの中に入れるように言ってきた。
「柊君、シアちゃんをマジックバッグの中に入れよう。」
「え?」
「この宿も安全とは言えないよ。ひとまず安全圏まで逃げるなら、このままエミルまで行ってしまったほうが良い。」
「わかりました。グレイス、寝てたところ悪いけど、仕事の時間だ。」
シアのことを起こさないようにマジックバッグの中に移動させながら、彼女の胸の上で寝ていたグレイスのことを起こす。
「んへぇ?な、何がどうしたっすか?」
「グレイス、急で悪いんだが今からエミルまで戻るぞ。」
「りょ、了解っす!!」
「ミハエルさん達もこの中に。」
「わかりました。フレイア、リタ、指示に従おう。」
ヴェイルファースト一家もマジックバッグの中に入り、ルカもマジックバッグの中に入ったところで、グレイスとミカミさんを抱えたまま俺は外に出た。
「グレイス、今なら辺りは暗いから一目につく心配はない。一気に大きくなってくれ。」
「了解っす!!んんんーーーっ!!」
グレイスが体に力を籠めるような仕草を見せると、みるみるうちに体が大きくなっていく。
「いつでも大丈夫っすよ。」
「……念のためお願いしておくけど、無茶な飛行だけはやめてくれよ?」
「大丈夫っす、今回は前よりも速度を落とすっすよ~。」
「わかった信用するよ。」
そしてグレイスの背中に跨ると、グレイスはバッと大きく翼を広げる。
「それじゃあグレイスちゃん、エミルまでよっろしく~。」
「お任せっすよ!!」
飛び立つときは相変わらず一気にはるか上空まで上昇し、ある程度の高度でホバリングすると、グレイスはきょろきょろと辺りを見渡し始める。
「えっと、確かエミルっていう町の方向は~こっちっす!!」
方角を定めて飛び始めようとしたグレイスに、ミカミさんが呆れながら苦言を呈した。
「逆だよグレイスちゃん。」
「や、やっぱりこっちだったっす~。」
改めてミカミさんが示した方角に体を向けると、グレイスは翼を羽ばたかせて少しずつ加速し始めた。
「これ以上はヤバいって思ったら教えてほしいっす~。」
「わかった。ありがとな。」
グレイスが俺に配慮してくれたおかげで、エミルへの空の旅はとても快適なものだった。
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