第133話 心理戦のオークション
ブックマークやいいね等とても励みになりますのでよろしくお願いいたします。
競り合っていた男は、不機嫌そうにため息を吐きながらこちらを指差してくる。
「おい、そこの。ずいぶん競り合ってくるが、本当にそんな大金持っているのか?」
すると、俺の代わりにミカミさんがケタケタと笑いながら返事を返す。
「あっはっは、そんなに疑うなら……入札をやめればいいじゃん?そうしたら私達が、お金を支払うしかなくなるんだからさっ。ま、そうするとキミの手に商品は渡らないけどね〜。」
「チッ、生意気な……。」
一つ舌打ちをすると、彼はまた札を上げた。
「白金貨750枚。」
札を挙げた男は、さっきまでのように100枚単位ではなく、50枚金額を吊り上げた。その行動を見てミカミさんの口角がさらに吊り上がる。
「はいは〜い、白金貨850ま〜い。」
相手の不信感をさらに増幅させるように、間髪入れずミカミさんはまた入札し、金額を吊り上げた。
「なっ……貴様ら。」
「ん~?どうしたのかなぁ?これ以上は出せない?」
ニヤニヤと嘲るように笑みを浮かべながら、ミカミさんが彼にそう問いかけると、彼は唸りながら少し悩むような仕草を見せた。
その間に、ミカミさんがこちらを向いて笑みを浮かべながら言った。
「さ、柊君。1200枚ぜ~んぶ突っ込もう。」
「え、じ、自分から金額を吊り上げちゃうんですか?」
「うん、このままぐだぐだ小競り合いを続けるつもりはないし、相手もすっかり私たちがお金を本当に持ってるのか疑心暗鬼になってる。さっさとトドメを刺してしまおう。」
「わ、わかりました。」
ミカミさんに言われた通り、俺は札を挙げて今日この日のために集めた白金貨1200枚を全て注ぎこむことを宣言した。
「白金貨1200枚。」
「し、白金貨1200枚ですっ!!ほ、他に入札する方は!?」
司会の人も驚きで声を裏返らせながら、他の入札者を探すが、さっきまで俺達と競り合っていた人はフルフルと首を横に振っている。そして少し時間をおいても、もう入札を申し出る人はいなかった。それと同時、司会の人が木槌をカンッ!!と叩く。
「こちら最後の商品は白金貨1200枚で落札です!!皆様拍手をお願いします!!」
そして俺達が落札することが決まると、会場から大きな拍手が送られてきた。歓声と拍手が巻き起こる中、先程まで競り合っていた男性は付き添いの人と何かをこそこそと話し合っている。
「や、やりましたわっ!!」
「喜ぶのはまだ早いよリタちゃん。本当の勝負はここからさ。」
その後俺達は別室へと通され、そこで改めて支払いとリタの両親の受け渡しを行うことになった。部屋の中で少し座って待っていると、すぐにヘールメースさんがリタの両親を連れて部屋の中に入ってきた。
「お待たせいたしました。」
「お父様っ、お母様っ!!」
久しぶりに両親に会ったことで、感情が爆発したらしいリタは号泣しながら自分の両親の元へと飛びこんだ。
「リタ!?リタなのかい!?」
「リタっ!!」
彼女の両親もリタのことをぎゅっと抱きしめながら、暫しの間再会を喜び合っていた。そして少し落ち着くと、リタが俺達のことを自分の両親に紹介を始めた。
「こちらの方々は、ヒイラギさんとミカミさんでございますわ。お父様たちの救出を手伝ってもらいましたの。」
「そうか、そういう事だったのか。」
リタの両親はこちらに歩み寄ってくると、跪いて頭を深く下げた。
「ご挨拶が遅れてしまったご無礼をお許しください。私は……。」
「あ~っあ~っ、そういうのいらない、いらな~い。ヘールメース君、2人の奴隷の証明書みたいなやつくれる?」
「どうぞこちらに。奴隷の首枷の鍵もお渡しいたします。」
ミカミさんはヘールメースさんからそれを受け取ると、その紙を両方ともビリビリに破いてしまった。それに続いて、2人の首につけられていた首枷も外してしまう。
「はいっ、これでキミ達は正式に奴隷じゃなくなった。さ、もう一回、面と向かって自己紹介し合おうか。」
ミカミさんの行動に呆気にとられながらも、2人はこちらの意思を汲み取ったらしく、立ち上がって再び頭を下げた。
「改めまして、私……元ヴェイルファースト家当主のミハエル・ヴェイルファーストと申します。」
「同じく元ヴェイルファースト家第一婦人のフレイア・ヴェイルファーストでございます。」
「「奴隷から救ってくださったこの御恩、私達の一生をかけて報いらせていただきます。」」
一言一句違わず、ミハエルさんとフレイアさんは頭を下げながら同時に言った。そんな2人にミカミさんは少し苦笑いを浮かべながらも、諭すように言った。
「まぁまぁ、そんなに気負わないでほしいな。ひとまずお互いの自己紹介だけここで済ませよう。積もる話は、他のみんなもいる宿でゆっくりお酒でも飲みながらしよう。……そういうわけで、私はミカミだよ~。この柊君の相棒さ。」
「柊です。よろしくお願いします。」
お互いに自己紹介を終えた後、ヘールメースさんにお礼を言って、カジノを一先ず後にしようとすると、彼からある忠告をもらった。
「ヒイラギ様、ミカミ様、帰り道は何卒お気を付けください。」
「わかってるよヘールメース君。忠告ありがとう。また来るね。」
ミカミさんがそれだけ言うと、ヘールメースさんはこちらにぺこりと深くお辞儀をして見送ってくれたのだった。
この作品に対する感想、意見などなどお待ちしています。こうしたほうがいいんじゃない?とかそういったものは大歓迎です。単に面白くないとかそういった感想は豆腐メンタルの作者が壊れてしまいますので胸の内にとどめていただければ幸いです。