第132話 いよいよ始まったオークション
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王都に来て2日目の出来事があってから、俺とミカミさんは他のカジノで入店を断られてしまい、これ以上ギャンブルによって資金を増やすことができなくなってしまった。しかし、一応白金貨1200枚は用意できたので、この大金を使ってリタの両親が商品となっているオークションに挑むこととなった。
そして今日は、そのオークションが開催される日……。時間は深夜なので、俺とミカミさん、リタの3人で唯一出入りが許されているヘールメースさんのカジノへとやってきた。
「お待ちしておりました。」
合言葉を唱えてカジノの中に入ると、ヘールメースさんがこちらを笑顔で待ち構えていた。
「やぁヘールメース君。」
「皆様の噂はしっかりと私の耳にも届いておりましたよ。ずいぶんとんでもない所業を成し遂げたとか。」
「あはは、ただギャンブルに勝っただけさ。それ以上でもそれ以下でもないよ。」
「ほっほっほ、仰る通りでございますね。さて、では早速オークション会場へ向かいましょうか。」
オークションに参加するために必要な12と書かれた番号札を手にしながら、俺達はヘールメースさんの後に続いていく。カジノがあった会場のさらに下の空間がオークション会場となっていた。
「こちらに入る前に、この仮面をどうぞ。」
彼は俺達にピエロのような表情の珍妙な仮面を手渡してくる。
「オークション会場の中では、お互いの素性を隠すためにこの仮面を用いて顔を隠すのです。」
「なるほどね、わざわざ私の分まで用意してくれてありがと。」
その仮面を身に着けると、オークション会場へと繋がる扉をヘールメースさんが開いた。会場にはすでに俺たちと同じように仮面をつけた人がたくさん着席していて、視線が一気にこちらに降り注ぐ。
「う、な、なんか変な感じがしますわ。」
「お持ちの番号札と同じ席にお座りください。」
ヘールメースさんに言われた通りに、12番と書かれた席に座り、少し待つとライトアップされた舞台の上に仮面を着けた司会の人が現れた。
「皆様、本日のオークションへようこそいらっしゃいました。本日の品物は全部で8品でございます。本日は私が公平公正に仕切らせていただきます。」
司会の人が挨拶を済ませると、早速最初の一品がカートに載せられて運ばれてくる。
「まず最初の品物は、刀匠ルインが製作した宝石剣です。希少な宝石をふんだんに装飾に使いつつ、ミスリルで作られた刃物よりも切れ味が鋭い一品でございます。」
品物の紹介を聞いていた他の人々から感嘆の声が漏れた。俺にはちっともわからないが、どうやらすごい品物であることには間違いないらしい。
「こちらは白金貨3枚からの入札です。さぁ、ご所望の方はお声を上げてください。」
それから俺の周りにいた人々がどんどん金額を釣り上げていき、最終的にその宝石剣は白金貨15枚で落札されていた。
「それでは次に参ります。」
その後、順調にオークションは進んでいくが、全8品中7品目までのオークションを終えても、リタの両親は登場していない。つまりは最後の一品がリタの両親というわけで間違いなさそうだ。
7品目の落札が決まった後、テーブルの上に腰掛けていたミカミさんが俺の方を見上げて、あることを教えてくれた。
「柊君、リタちゃん、この会場にいる3割ぐらいの人が、今まで一度もオークションに参加してないよ。」
「あと一品を残してそんな状況ってことは……。」
「その3割の方々は、わたくしのお父様とお母様を狙っているというわけですわね。」
「つまりはそういう事だね。」
不穏な雰囲気の中、ついに手錠で繋がれた男性と女性が舞台の上に連れてこられた。
「さぁ、皆様お待ちかねの最後の商品です。長き歴史の中でも珍しい元貴族の奴隷……ヴェイルファースト家の元当主とその夫人でございます。」
「お父様、お母様っ……。」
リタの悲痛な声をかき消すように、会場は今までにないほど最高潮の盛り上がりを見せている。
「それではこちら、白金貨100枚から受付いたします!!」
「さぁ始まるよ柊君。まずは他の人の出方を窺おう。」
「わかりました。」
まず最初は出方を窺うために入札をしないでいると、あっという間に白金貨200枚まで金額が跳ね上がった。すると、流石に入札するために声を上げる人も篩にかけられて、数人に絞られてきていた。そんな中、今まで声を上げていなかった男性がおもむろに札を上げてとんでもない金額を口にする。
「白金貨400枚。」
「し、白金貨400枚ですっ!!さぁこれ以上の金額を出せる方はいますか?」
「柊君、そろそろ頃合いだ。まずは10枚ずつ金額を上げていこう。」
「わかりました。」
俺は初めて手元の札を挙げて金額を口に出した。
「白金貨410枚。」
「410枚出ましたっ!!」
すると間髪入れずに、先程大きく金額を吊り上げた男性がまた札を挙げた。
「500枚。」
「510枚。」
吊り上がる金額に怯まずに、間髪入れずミカミさんに言われた通りに白金貨10枚ずつ増やして入札をすると、その男性は僅かに仮面から見える不機嫌そうな視線を向けてきた。そしてまた札を挙げた。
「白金貨600枚。」
彼がまた金額を吊り上げた瞬間、ミカミさんがニヤリと笑う。
「柊君、ここからは同じく100枚ずつ上げていこう。」
「わかりましたミカミさん。」
そして俺もまた札を挙げて、ミカミさんに言われたとおり金額を吊り上げる。
「700枚。」
俺も一気に100枚分金額を吊り上げると、先程の男は露骨に大きくため息を吐き、ダンッと拳をテーブルに打ち付けていた。
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