第131話 不正?豪運?
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その後もボタンを押せば☆の絵柄が勝手に揃うような状況で、いつしか俺の周りには人集りができ始めていた。
そしてまた3つ☆の絵柄を揃えると、これ以上スロットの台が金貨を吐き出せなくなってしまった。
「あ、打ち止めかな?」
「そうみたいですね。」
「常に大当たりが続いたのは良かったけど、これだけじゃあんまり資金の足しにはならなかったね。」
ミカミさんは排出された金貨を10枚ずつ重ねて、数えやすいように箱の中に入れてくれていた。
「え〜……全部で白金貨5枚分だね。」
「それでも普通なら、十分多いんですけどね……。」
「まぁね、ただ今回はちょっとばかし状況が違うから少なく見えるだけ。……さ、スロットは遊び尽くしたし、次は違うギャンブルを遊びに行こ〜。」
そして席を立った途端に、このカジノの従業員の人がこちらに歩み寄ってきた。
「お客様、無礼を承知で伺わせていただくのですが、何か不正等はされていませんですか?」
「え?」
「お客様が席に座られた時から様子を拝見させて頂きましたが、明らかに普通ではない様子でした。」
「はぁ……。」
そう問い詰められても、俺は何もしてない。ただ自分の運を信じてボタンを押していただけだ。しかし、そう素直に答えたとしても信じてもらえるような雰囲気ではない。
返答に困っていると、ミカミさんがその従業員に対して言った。
「私達はただ運が良いだけ……って言ったとしても、キミ達は信じないだろう?」
ミカミさんの言葉に対して、従業員の彼は無言のまま少し頷いた。
「ま、明らかに現実離れしてるし、信じられないのも無理はないね。」
そう言いながらニヤッと笑みを浮かべたミカミさんは、ピンと人差し指を立てながら、ある提案を口にした。
「1つ賭けをしようか、もし私達が本当に不正をしている証拠を1つでも掴めたなら……この白金貨600枚をキミ達にプレゼントしよう。でももし、私達が本当に不正をしていなかったら……キミ達には白金貨600枚を払ってもらうよ。」
「そ、そんな無茶な……。」
ミカミさんの提案に思わず尻込みした彼だったが、そんな彼の肩に手を置いて、オーナーらしき人物が一歩前に出てきた。
「その勝負受けたっ!!」
「お、オーナー……。」
「へぇ、なかなかギャンブラーだねキミも。」
「ギャンブラーじゃなかったら、こんなカジノを経営したりはしない。ところで、キミ達の不正を暴く手段は、こちらが決めても良いかな?」
このカジノのオーナーだという恰幅の良い彼は、こちらにそう質問してきた。
「もちろん構わないよ。」
「では、ここにあるスロット台……全てで☆の絵柄を一発で揃えてくれ。どこのカジノでもそうだが、魔力を使ったりスキルを使ったりした場合、全て不正とする。」
「それだけでいいの?」
「あぁ、これだけでいい。」
「じゃあ契約しようか。」
ミカミさんが手を上に挙げると、1枚の紙がヒラヒラと舞い降りてきた。それを手に取ってみると、そこにはオーナーの彼が言った条件を満たせなかった場合、俺達が白金貨600枚を支払うこと。逆に条件を満たした場合、カジノ側が俺達に白金貨600枚を支払うことが義務となる……と書いてあった。
「柊君、それちょうだい。」
「はい、ミカミさん。」
ミカミさんはその紙の名前を書くところに、俺とミカミさんの名前を書き、カジノのオーナーの彼に手渡した。
「はい、キミの名前を書いて?」
契約と聞いた途端、少し表情が強張っていた彼だったが、ふるふると顔を横に振って何かの思考を振り払うと、ミカミさんから受け取ったその紙に名前を記入した。
それを確認すると、ミカミさんはニヤリと口角を吊り上げて笑う。
「契約成立だねっ♪」
「じゃ、じゃあ早速そこの端の台からやってくれ。」
「おや、ずいぶん急かすね?それに、少し冷や汗が顔を伝ってるけど……不安かい?」
「そんな訳はない。おい、一挙手一投足……微細な魔力も逃すなよ。」
余裕そうなミカミさんとは対照的に、少し焦りの表情を見せるこのカジノのオーナーは、従業員を集めて複数の目で俺の行動を監視しようとしていた。
そんな行動を見てミカミさんはフッと鼻で笑うと、俺の肩にちょこんと腰掛けた。
「さ、お望み通り全部の絵柄を揃えてあげよう柊君。」
「わかりました。」
早速1つ目の台のボタンを3回押して、☆の絵柄を3つ揃えると、集まっていた野次馬の人々から歓声が上がった。
「良かった……まずは1つ目。」
「柊君、安堵するのはまだまだ早いよ。このカジノにはまだまだスロットの台があるんだから。」
「そ、そうですねミカミさん。」
それから続く2つ目の台……3つ目の台も連続で☆の絵柄を揃えていく。そして、順調に横一列総計20台のスロット台で全て☆の絵柄を揃えると、いつしかすっかり歓声も沸かなくなってしまっていた。
チラリと集まった人たちの顔を見ると、信じられないという心境が顕著に顔に出てしまっている。勝負を受けたオーナーの顔からも、大量の冷や汗が流れている。
「さて、残るは2列……数にして40台かな?」
「まだかなり残ってるんですね……。」
「ま、このぐらいすぐ終わるよ。気楽に行こう柊君。」
結局、全てのスロットの台で☆の絵柄を3つ揃えても、オーナー側は俺の不正を見抜くことは出来ず、最後には魂が抜けたように崩れ落ちていた。
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