第125話 ギャンブルの行方
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ヘールメースさんは、俺に見せつけるようにトランプをシャッフルすると、一番上からトランプを5枚配ってくれた。それを彼に見えないように確認すると……。
(またさっきと同じような手札だ。)
今回配られた手札は、さっきポーカーで勝った時とほとんど変わらないストレートフラッシュの役が出来上がっていた。さっきよりも階段状になっている数字が大きいから、役としては今の方が強いのかな?
「その表情……なかなか良いカードに恵まれたご様子で。」
「さて、どうでしょうね。」
「ほっほっほ、では確認と参りましょう。オープンいたします。」
お互いに手札を公開すると、彼と俺の手札はマークが違うだけで、数字も役もまったく同じものだった。それを確認した彼は一つ大きく頷く。
「いやはや……素晴らしい豪運です。こんな豪運の持ち主には出会ったことがありません。」
愉快そうに彼は笑うと、こちらに倍になった10枚の白金貨を差し出してきた。
「あれ?この場合って引き分けとか、やり直しをしたりしないんですか?」
「ほっほっほ、実はこの勝負……最初からお客様の勝利が決まっていたのです。そちらの妖精の方はお気づきだったご様子でしたね。」
「まぁね~。指摘しようか迷ったけど、柊君なら大丈夫って思ってさ。」
どういうことなのかわからずにいると、ヘールメースさん自身が説明をしてくれた。
「実は、お客様の運がどれほどのものなのかを量るため、少々小細工をさせて頂きました。どうかご無礼をお許しください。」
彼は自分の胸に手を当てて、深くこちらに頭を下げてきた。特にこちらに被害が出たわけでもなく、寧ろプラスになったので彼のことを咎めるつもりはなかった。
「あ、頭を上げてください。特に咎めるつもりはありませんから。」
「寛大なお心遣いに感謝いたします。」
彼は頭を上げると、もう一度深くこちらにお辞儀をして苦笑いを浮かべた。
「それにしても、その豪運はまるで……神に愛されているかのようでございますね。小細工を弄しても引き分けに持ち込むのがやっととは、正直な話……普通に相対してこちらが勝てる未来が見えません。」
そう言って苦笑いしながら、彼はトランプを回収して手元に置く。
「差し支えなければお聞かせ願いたいのですが、お客様はどうして当カジノに?急にお金がご入用になりましたかな?」
「あぁ、それは……実は5日後のオークションに参加しようと思ってて、今日はその下見に来ただけなんです。」
「なるほど、何か狙いの物が御有りのご様子ですね。……恐らくは、そちらのヴェイルファースト家のご令嬢絡みのものでしょうか。」
「わたくしがヴェイルファースト家の人間だと知っているんですのね?」
「えぇ、実のところオークションの管理運営も私共が担っておりますので、当日何が出品されるのかはすべて把握しております。」
彼がそう言った直後、リタはテーブルに両手を打ち付けながら勢いよく立ち上がった。
「……っ、お、お父様とお母様は無事ですの!?」
「どうか落ち着いてくださいませ。あなた様のご両親はお元気でございます。病気も怪我も何一つされておりません。」
その言葉を聞いて少し安心したのか、リタは落ち着きを取り戻してまた椅子に座った。それを確認したヘールメースさんはさらに続けて言う。
「元貴族の奴隷は大変貴重な存在です。そのため、5日後のオークションには普段はそういう場に来られないような著名な貴族の方や、政治に関わる役人まで様々な方がいらっしゃるご予定です。」
「つまり、とんでもなく競争率が高いってわけだね。」
「その通りでございます。」
すると、ミカミさんは俺のマジックバッグに潜り込んで行って、アサシンギルドの隠し金庫から回収した白金貨の入った袋を引っ張り出してきて彼の前に置いた。
「今のところ軍資金はこのぐらいあるんだけど、足りないかな?」
「確認させていただいても?」
「もちろんいいよ。」
ヘールメースさんは白金貨が入った袋を開き、中に入っている白金貨の数を数えていく。そして数え終えた後、難しい顔になってしまった。
「普通の品物でしたらまず間違いなく、ここにある白金貨で事足りるのですが……今回は状況が違います。確実に競り落としたいのでしたら、この倍は欲しいかと。」
「ありゃ、思ったより必要だなぁ。」
ミカミさんは口に手を当てながら頭の中で考えを巡らせている。しかし思ったよりも簡単に何かをひらめいたようで、ニヤリと笑った。
「あっはは、なぁんだ。悩む必要なんてなかった。オークションの運営もキミ達がやっているってことは、つまり……オークションの落札価格がまるっとキミ達のところに入るんでしょ?」
「その通りでございます。」
「それじゃあ、私たちが今からやることは一つだね。」
ミカミさんは白金貨の入った袋をこちら側に引き寄せると、その上に腰掛けて笑みを浮かべた。
「私達はこの白金貨300枚をベットする。勝負はそっちが決めていいよ。もし私達が負けたら、これは全部キミ達の物だ。でも、私達が勝ったら、これを白金貨600枚に変えてくれないかな?」
ミカミさんがそんな提案を投げかけると、ヘールメースさんはにこりと笑った。
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