第119話 隠されていた金庫
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自分の両親の居場所を特定したリタは、すぐにその場から駆け出そうとするが、ミカミさんによって引き止められた。
「待ちなよリタちゃん。」
「ど、どうして止めるんですの?」
「今、何も持たずにキミがご両親のもとに行ったとしても、な〜んにも出来ないからさ。違うかい?」
「…………。」
「キミのご両親は、5日後のオークションで競りにかけられる。私の予想では、恐らく………その場にキミたちのことを陥れた依頼主が来るはずだよ。」
「どうしてそう思うんですの?」
「いくら素性を隠していても、最後には自分の目で、依頼が完了しているのか見届けたくなるものじゃないかい?」
「それは……確かにそうかも知れませんけれど。」
「まっ、まだ時間はあるんだから、しっかり準備してオークションに挑もうよ。」
「い、挑むって……まさか、お父様達を買うつもりですの!?」
「え、もちろんそうだけど?」
あっけらかんとした様子で答えたミカミさんに、リタは思わず呆れていた。
「奴隷が1人幾らするか分かってますの?1人あたりの平均単価は白金貨10枚ですのよ?お父様達は元貴族の……うぅ、い、言ってしまえば稀有な奴隷ですわ。その価値はもっともっと跳ね上がるんですのよ?」
「うん、それでもきっと大丈夫だよ。」
ニッコリとミカミさんが笑みを浮かべると、この部屋を隅々まで調べていたルカが、ある報告をミカミさんに上げた。
「お嬢様、隠し金庫らしきものは、見当たりませんでした。」
「う〜ん、そっか。それならやっぱり彼を起こさないといけないかなぁ。」
ミカミさんはどうやらこの部屋に隠し金庫のようなものがあって、そこにお金が貯め込んであると思っていたらしい。
その場所を聞き出すために、ミカミさんがアサシンギルドの長のことを叩き起こそうとしていると、俺の足にしがみついていたシアが、不意に近くの壁を指さした。
「ヒイラギお兄ちゃん。」
「ん?どうしたんだシア?」
「あそこの壁……匂いが変。」
シアが指さした壁に近付いて、間近で観察してみるが、特に異常はないみたいだけど……。
「う〜ん?特に変わりはないように見えるけど……。」
「お兄ちゃん、抱っこして!!」
「はいよっ……と。」
シアのことを抱き上げて、その壁に近付けてあげると、シアは両手でその壁を思いっ切り押し込んだ。すると、ガコン……という音が響き、俺とシアの足元に魔法陣が出現する。
「え?なにが…………。」
何が起こったのか理解する間もなく、魔法陣から眩い光が放たれ視界を覆い尽くした次の瞬間……さっきまでいた場所とはまるっきり違う、殺風景な部屋に俺とシアは移動させられてしまっていた。
「ここは……どこだ?」
「ヒイラギお兄ちゃん、こっちこっち!!」
俺の手からぴょんと飛び出したシアは、その部屋の中にあった、小さいながらも頑丈そうな金庫の前に駆けていく。
「もしかしてこれが、隠し金庫なのかな?」
「んに〜〜〜っ!!開かにゃ〜いっ!!」
シアは全身の毛が逆立つほど、力を込めて金庫を開けようとするが、どうやら鍵がかかっているらしく、びくともしていない。
「鍵なんて向こうにあったかな……。」
考えを巡らせていると、突然マジックバッグの中からレヴァが飛び出してきて、手に収まった。
「……使えってことか?」
答えるはずもないのに、思わずそう問いかけながら、俺はレヴァを金庫の鍵穴へと近付ける。すると、レヴァは複雑に形を変えて、まるで鍵のような形状に変化した。
「いけるのか?」
鍵のような形に変形したレヴァを、金庫の鍵穴に挿し込んで左に回すと、ガチッ……と重たい金属の留め金が外れる音がこの部屋に響き渡った。
「あ、開いた……マジか。」
レヴァにこんな機能もあったことに驚きながらも、俺とシアは金庫を開けて中身を確認してみることにした。
「さてさて、何が入ってるかな。」
「食べ物入ってるかな?」
「あはは、流石に食べ物は入ってないかなぁ……多分。」
そして、いざ金庫の扉を開けてみると、中から現れたのは……。
「ん?袋?」
金庫の中は3つの段に分けられていて、全ての棚にはパンパンに膨らんだ袋が押し込められていた。そのうちの1つを手に取ってみると、じゃらり……と硬貨が擦れ合う音が鳴る。
「中身は…………やっぱり白金貨か。」
袋の中には、白金貨がパンパンに詰められていた。こんな袋が3つもある。この3つの袋全てに白金貨が詰まっているなら、かなりの大金だ。
「ヒイラギお兄ちゃん!!こっちの袋も真っ白なお金がいっぱい入ってるよ!!」
「ってことは残りの1つも……うん、白金貨でいっぱいだ。」
その3つの袋をマジックバッグに入れたあと、俺はシアの頭を撫でた。
「お手柄だったぞシア。良く見つけてくれたな。」
「えへへぇ〜、ミカミお姉ちゃんにも褒めてもらえるかな?」
「あぁ、きっとたくさん褒めてくれるよ。」
そうしてシアの頭を撫でていると、突然シアの服の胸ポケットがモゾモゾと動き出し、グレイスが欠伸しながら顔を出した。
「ふあぁぁ……よ〜く寝たっす〜。」
「グレイス、今まで静かだと思ったら……寝てたのか?てっきり怖くて出てこれないのかと思ってたよ。」
「い、いやぁ〜、馬車に揺られてたらめちゃくちゃ眠くなっちゃって……そのまま寝ちゃってたっす。……それで、ここはどこっすか?」
「ここはアサシンギルドの隠し金庫があった場所だ。もうお金は回収したから、早くここから出たいんだが……出口はどこなんだろ。」
周りを見渡してみても扉はないし……出口らしいところが見当たらない。すると、グレイスは俺とシアがここに来た時に使われた魔法陣がまだ残っていることに気がつく。
「あそこの魔法陣は違うっすか?」
「あれはここに来たときのやつで……。」
「ん〜、来た時の魔法陣が残ってるってことは、多分もう1回乗ったら帰れると思うっすよ?」
「やってみるか。」
試しに魔法陣の上に乗ってみると、その魔法陣はまた眩い光を放ち始め、いつの間にか俺達はミカミさん達のいるあの部屋へと戻ってきていた。
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