第116話 討ち入り
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関所でみんなと合流した後、ルカが貸し切ってくれていた馬車でアサシンギルドの本部があるという場所に向かっていた。
「あの場所の近辺は警備が厳しいので、途中のヴェールという町で馬車を降りて歩いていきましょう。」
「オッケー。」
全く緊張感の欠片もないミカミさんの様子に、ルカは思わず少し呆れているようにも見える。未だ状況を理解できていないリタは、一体どこへと向かっているのかこちらに問いかけてきた。
「ヴェールに行って……それからどこへと向かうつもりですの?」
「え、アサシンギルドに行くのさ。」
「なっ……しょ、正気ですの!?今の貴方がたは、アサシンギルドの中ではとんでもない賞金首ですのよ!?」
「うん。もちろん理解の上だよ。」
「じゃあ何で……。」
「そりゃあ、いつまでも私達の命を狙われるのは、面倒くさいからね。それと、個人的にアサシンギルドの長とかいう人のやり方が気に食わなくてね〜。」
ケタケタと笑いながらミカミさんは言った。
「だから、今日をもってアサシンギルドを再興不可能なまでに潰して、アサシンギルドのお金をたんまりと持ってる輩から、迷惑料を徴収しようってわけさ。」
「か、簡単に言いますわねぇ……。」
「うん。だって簡単だからね。」
あっけらかんと言ってのけたミカミさんに、呆れ返ってしまったリタは思わず頭を抱えていた。
馬車に揺られて1時間ほどで、ヴェールという町に到着する。ここで馬車を降りるとルカが先頭に立って歩き始めた。
「こちらです。」
ヴェールという町から徒歩でどんどん離れていき、ルカは目の前に見える森に入る直前で歩みを止めた。
「ご主人様、ここをまっすぐ歩いていくと洞窟が見えてきます。その中にアサシンギルドへと続く扉があります。」
「わかった。」
今度は俺が先頭に立ち、ルカにはシアのことを護衛してもらう。
「さぁてと、じゃあ行こっか柊君。討ち入りってやつだよ。」
「はい、ミカミさん。」
「もうどうにでもなれ……ですわ。」
そしていざ道を進んでいくと、至る所に罠が仕掛けてある。幸いにも危険察知のスキルがあるお陰で、全ての罠を看破して先に進むことができた。
「なぁ、ルカ?こんなに罠があると、普通に入るのも一苦労なんじゃないか?」
「この本部に踏み入ることができるのは、一部のアサシンのみです。例えば元一匹狼だった私とか……。」
そう言いながら、ルカはチラリとリタの方を向いた。すると、ルカが何を言おうとしているのか、察したリタは少し不貞腐れながら口を開く。
「わ、悪かったですわね。アマチュアアサシンで……。」
「私は何も言っていないぞ?」
「その目が言ってるんですのよ!!」
「まぁまぁ、落ち着いてよリタちゃん。それよりさ、ルカちゃん?本部ってことは支部もあるんだよね?」
「はい、支部は規模が小さく、基本的には依頼板という暗殺依頼が張り付けられた掲示板が置いてあるか、依頼を受け付ける人員が一人配置されているか……ですね。」
「オッケー、わかった。」
そんな会話をしているうちに、あっという間に目の前に洞窟が見えてきた。洞窟の前には、黒装束の忍者のような人が2人警備を固めていた。
木陰に隠れながら、どうしようかと悩んでいると、俺の横をルカが音もなく通り過ぎていき、警備の2人に気づかれること無く背後を取ると、アッサリと気絶させてしまった。
「門兵を排除しました。」
「さっすがルカちゃん。ありがと〜。」
ルカはこちらにペコリと一礼すると、またシアの護衛に移ってくれた。守る人がいなくなった入り口をくぐってすぐに、大人が一人通れるぐらいの小さな扉が見えてくる。
「いよ〜っし、思いっ切り蹴破ってやろう柊君。」
「わかりまし……たッ!!」
今持てる全力の力で扉を蹴飛ばすと、蹴破られた扉は凄まじい勢いで飛んでいき、向こう側に広がっていた酒場のような場所の壁面に深々と突き刺さった。
「な、なんだ!?」
「敵襲か!?」
突然扉を蹴破られて、ざわついている中へと俺は足を踏み入れた。すると、ミカミさんが注目を浴びるように大声を上げる。
「討ち入りじゃ〜ッ!!…………これ、1回言ってみたかったんだよね〜。」
言いたかった台詞を堂々と口にすることができて、ご満悦な表情を浮かべているミカミさん。しかし、その間にもこちらに向かって、武器を手にしたアサシンが襲いかかってきていた。
「その顔……覚えがあるぞ!!ヒイラギにミカミだなっ!!」
俺の目の前で高らかな跳躍を見せた、複数のナイフを手にした一人のアサシン。そのナイフが攻撃に使われようとした瞬間、俺の体は勝手に動いていた。
「あ……これは。」
体は勝手に動いているけど、これから何が起こるのかは想像に難くない。
そして、俺の予想通り、勝手に動く体から繰り出された拳が、跳躍していたアサシンの股間にクリティカルヒットしてしまう。
「ごっ………ぉぉ。」
……彼はそのまま白目をむいて倒れてしまった。ちらりと後ろを見ると、幸いなことにルカがシアの目を手で覆い隠してくれていた。
「ルカ、ありがとう。」
「お任せください。」
一言感謝を述べて、また前を振り返ると一人やられたのに、意気消沈すること無く続々と中にいたアサシンが武器を手に襲いかかってきていた。
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