第114話 ミカミの奇策
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浅い眠りから目を覚まして時計を確認すると、時刻は朝6時。今から朝食の用意を始めよう。
俺の胸の上でぐっすりと眠っているミカミさんを、そっとベッドの上に寝かせて起き上がると、すでに起きていたらしいリタと目が合った。
「おはよう。」
「ご、ごきげんようですわ。」
普通におはようと挨拶をすると、彼女は少し戸惑いながらも挨拶を返してくれた。
「てっきり俺達が寝てる間に居なくなってるかと思ってたよ。」
「し、失礼ですわね。ヴェイルファースト家は、代々礼節を重んじる家系なのですわ。その辺の傲慢で図太い貴族とは違いますのよっ。」
「それなら、リタの家の人達は周りの人達から慕われてたんじゃないか?」
「もちろんですわ。お父様もお母様も、民からの信頼がとても厚くて……そのせいで、良く他の貴族から平民のようだと罵られたこともありましたわ。でも、それすらもお父様方は褒め言葉と捉えて、笑っていたのですわ。」
「……良い両親じゃないか。でも、今の話を聞いてる限りだと、特に没落する理由が見当たらないんだけど、本当に何があったんだ?親愛が厚かったんなら、反乱とかを起こされたってわけでもないんだろ?」
少しこちらに心を許してくれた彼女なら話してくれるかもしれない……そう思って俺は聞いてみた。すると、彼女は声に怒りを含ませながら、ポツポツと語ってくれた。
「お父様は……騙されたのですわ。その良心を逆手に取られて、莫大な借金を抱えてしまい奴隷堕ちしてしまったのですわ。」
「奴隷堕ち?」
「文字通り、奴隷となってしまったのですわ。返しきれない借金を抱えた人間や、大罪人が辿る末路ですわね。」
「そういう事だったのか……。」
「お父様とお母様は、わたくしを債務者として書類に記載していませんでしたから、わたくしだけは奴隷堕ちを免れることが出来たのですわ。」
「じゃあリタは今、その借金を返すために頑張ってるってことか。」
「……もちろんそうですわ。でも、もう一つ……わたくしはお父様とお母様を奴隷から解放するために、お金を集めているんですのよ。」
「奴隷から解放するのにもお金が必要なのか?」
「当たり前ですわ。奴隷からの解放……つまり、お父様とお母様をわたくしが奴隷として買い戻さなければいけないんですのよ。」
「なるほど……そういう事か。」
リタの抱えてる問題は、俺が思っていたよりも大きかった。同情してあげたい気持ちはあるけど、俺が彼女を助けるなんて事はできないし……。掛ける言葉に困るな。
少しの沈黙が空間を支配すると、突然それを打ち破ったのは、いつの間にか目を覚ましていたミカミさんだった。
「い〜い事思いついたっ!!」
「い、いきなりどうしたんですかミカミさん?」
いきなり飛び起きて大声を上げるなり、俺の目の前にビュンと勢い良くミカミさんは飛び込んでくる。
「ヒュマノファイトまでの残り1ヶ月の間に、柊君のレベルを爆上げする方法さっ!!」
「ず、ずいぶん急ですね。」
「それにこの方法なら、レベルだけじゃなく、恐らくお金も……山ほど稼げるはずだよ。」
「そんな夢みたいな方法あります?」
「うん!!この私に任せなさ~い。」
ポンッとミカミさんは自分の胸を叩くと、今度はリタの方に飛んでいく。
「リタちゃんも手伝ってくれたら、分け前あげるけどどうする?」
「逆に聞かせてもらいますけれど、その話をわたくしに持ち掛けていいんですの?」
「構わないさ。だってキミのためにもなることだからね。」
「??」
頭に?マークを浮かべるリタを他所に、ミカミさんはパンパンと手を鳴らした。すると音もなくルカが現れたのだ。
「お呼びでしょうか?」
「ルカちゃん、実は~…………。」
ミカミさんは現れたルカにゴニョゴニョと何かを耳打ちしている。内緒話を聞かされているルカは、一瞬明らかに驚きながら、「正気か?」と言わんばかりの表情でミカミさんを見つめていた。
「じゃ、今日ケーキをギルドに送り届けたら、案内よろしくねっ!!」
「お、お嬢様……念のため聞かせていただきますが、しょ、正気ですか?」
「もっちろん。ルカちゃんの負担も減らせるし、うまくいけばお金もた~っくさん貰える。これは私たちにとって良いことしかないんだよ。」
「……わかり……ました。」
少し不安そうな表情でルカは頷くと、普段の朝の業務に移って、シアとグレイスのことを起こしに行った。
「ミカミさん、本当に何を考えているんですか?」
「んっふっふ~、それはこれからのお楽しみ~。さっ、柊君、朝ご飯にしようよ~。ミカミちゃんはもうお腹ペコペコだぞ~。」
「あとでちゃんと教えてくださいよ?」
今はミカミさんが何を考えているのか全く予想ができないけれど、この悪い笑顔は何か良からぬことを考えていそうだ。でも、俺を含めてみんなのためになることって言っているし、きっと大丈夫……かなぁ?
ミカミさんの考えていることに少し不安を抱きながらも、みんなで朝食を食べて、ケーキを届けに行くためにギルドへと足を運ぶのだった。
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