第105話 新たなサービスでおもてなし
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開店準備と、みんなとの打ち合わせを終えた後、ミカミさんはcloseと裏返っていた看板をopenにひっくり返す。
「おっまたせしました〜!!開店で〜す!!」
そして不思議にもギルド全体に通る声で開店を宣言すると、ミースさん達が整理してくれていた行列が一歩進み、今回もあの人が一番にやってきてくれた。
「みんなおはよぉ〜。」
「いらっしゃいませマイネさん。」
「やっマイネちゃん、いらっしゃい!!今日も一番乗りだね。」
「いやぁ〜、前回の一番乗りは苦労しなかったけど、今回は苦労したよぉ〜。そういうわけで、早速自分にご褒美を〜……って、はへ?」
マイネさんは、ミカミさんに手渡されたメニュー表を見て、口を大きく開けて固まった。
「あれ、マイネちゃん?」
「なんか……プリンにもドーナツにも、たくさん種類が増えたぁ?」
「そうそう、柊君が前回と同じ内容じゃ面白くないからって、ちょ〜っとレパートリーを増やしたんだよ。」
「うへぇ……これちょっとじゃないよぉ〜。どれを食べるか迷っちゃうねぇ〜。」
「んっふっふ、増えたのはメニューの種類だけじゃないよ……じゃじゃん!!」
少し困った表情を浮かべるマイネさんに、ミカミさんはニヤリと笑いながら、とあるサービスの内容が書いてある紙を取り出した。
「実は今日からね、大銀貨1枚以上お買い上げしてくれたお客様に、好きなドーナツを1種類サービスすることにしたんだよ。ただし、このサービスはお持ち帰り限定ね。」
そのサービス内容を理解したマイネさんは、またポカン……と固まってしまった。
このサービスは、昨日仕込みをしている時にミカミさんがハッと思いついたものだ。
「せっかく、お店に来てくれて……それでいてたくさん買ってくれた人に、何か特典があったら嬉しいかなって思ったんだけどさ。」
「ミカミちゃんの言う通り、こういうのって買う側としてはすごく嬉しいけど……ホントに売り上げは大丈夫なの〜?赤字になったりしてない?」
「心配ご無用っ、しっかり利益も出るように考えてあるから、遠慮なくサービスを利用していってよ。」
ミカミさんの言葉を聞いて、少し目を閉じた後マイネさんはにへらと笑いながら、注文を始めた。
「それじゃあ〜、お持ち帰りでフルーツケーキを……ホール?で1つとぉ〜、そのサービスでチョコドーナツを貰える〜?」
「は〜い、ありがとうございます!!柊君、フルーツケーキをホールで1つと、チョコドーナツお願〜い。」
「はい、ただいま。」
この前は注文を受けてからドーナツを揚げていたけど……今回は予め揚げておいた物をマジックバッグの中にしまってある。ケーキはもう箱に入っているし、提供に時間は掛からない。
「ケーキは……崩れてない。チョコドーナツの状態も……良し。」
しっかりと商品の状態を確認してから、受け渡し係のシア達にケーキとドーナツを回した。
「え、えと……ホールケーキ1つと、チョコドーナツ1つですっ!!」
「うへ〜、ありがと〜。シアちゃんおばさんたちの言葉上手くなったね〜。」
商品を自前のマジックバッグにしまいながら、マイネさんはシアの頭を撫でている。
「えへへ……。」
「さ〜てと、じゃあこれは帰ってからゆ〜っくり食べるよぉ。ありがとねぇ〜。」
「はいっ、ありがとうございました。」
満足そうにマイネさんは、こちらに手を振りながらギルドの外へと歩いていく。それを完全に見送る暇も無く、ミカミさんから次のオーダーが飛んできた。
「柊君、次はイートインでカットケーキ1つと紅茶プリン1つ……お持ち帰りでチョコドーナツおねが〜い。」
「はい、わかりました。」
ミカミさんから注文と、イートイン専用の番号札を受け取り、せっせとケーキとプリンを盛り付けて、お持ち帰り用のチョコドーナツをお盆に添えた後、それをグレイスに手渡した。
「ほい、グレイス。番号札1番の人に渡してきて。」
「了解っす!!」
「くれぐれも食べないように……それと番号札の回収も忘れずにな」
「さ、流石に食べないっすよ〜。」
少しギクッとしながらも、グレイスは小さい体で今の体よりも大きなお盆を持って、イートインスペースの方へと飛んで行った。
グレイスが飛んで行った間に、またイートインの注文が入り、それも盛り付けた後、今度は待機していたルカに手渡した。
「ルカ、これは番号札2番な?」
「承知しました。」
お盆を受け取った後、ルカは人の間をスルスルと通り抜けてお菓子を届けに向かった。
「うん、ルカには安心して任せられるな。」
そうポツリと言った直後、グレイスが番号札を手に戻ってきた。
「戻ってきたっす!!」
「じゃあ今度は3番にこれをお願いな。」
「あ、あれ……もう次の注文入ってるっすか?」
「もちろん。まだまだ行列は続いてるからな。忙しいのはこれからだぞ。」
またグレイスが飛んでいったあと、チラリと行列に目を向けるが、さっきよりもまた最後尾が伸びた気がする。
列の中央ら辺には、ドーナさんがミースさんと……もう一人中年の男の人が一緒に列に並んでいるのが見て取れた。あの場所なら、今日は買いそびれることは無いだろう。
……ところでドーナさん達と一緒にいるあの男の人は…………誰だ?
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