第104話 仕込みに追われて
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おやつを食べた後も、夕食を食べた後も仕込みを続け、日が変わる直前にようやく明日の営業の仕込みが終わった。
「ふぅ……やっと終わった。」
片付けを終えた後、俺は達成感と疲労感を同時に感じながら、傍にあった椅子に腰掛けた。
「お疲れ様、柊君。」
「あ、ミカミさん。まだ起きてたんですね?てっきりもう寝ちゃったかと……。」
「ふふ、一人は寂しいでしょ?」
そう言ってミカミさんは笑うと、俺の肩に腰掛けた。
「疲れたでしょ、肩でも揉んであげようか?」
「大丈夫ですよ。楽しくてやってるんですから、心地良い疲労感です。」
「魔物ハンターとして、依頼を達成しているときよりも生き生きしてるもんね。今からでもこっちを本業にしちゃう?」
「悪くないですけど、魔物ハンターもやりたいんですよね。」
「確かに、魔物ハンターをやってれば新しい食材には出会いやすいもんね?」
ニコリと笑いながら、ミカミさんは俺の心の中を見透かしたように言った。
「はい、魔物を倒すのは今でもやっぱり少し怖いですし……慣れないですけど、新しい食材に出会うのは、心躍るものがあるので、続けたいんです。」
「うんうん、やりたいことは続けたら良いよ。私は柊君のやりたいことに賛同する。」
包容力のある母親のように、ミカミさんは俺の事を撫でてくれた。
「んふふ、柊君……撫でられるの意外と好きでしょ?」
「嫌いじゃないです。」
「恥ずかしがらなくてもいいんだよ?なんてったって、私から見たら柊君もまだまだ子供だからねっ。」
「…………。」
何度も頭を撫でられていると、途端にウトウトと睡魔が襲いかかってくる。このまま椅子にもたれかかって寝てしまったら気持ちいいだろうけど……体が痛くなりそうだから、俺は睡魔に抗いながらなんとかシアとグレイスが眠るベッドに横になる。
俺がベッドに横になると、ミカミさんが毛布をかけてくれた。
「さ、明日も頑張ろうね柊君。おやすみ。」
「はい……おやすみなさいミカミさん。」
ミカミさんに頭を撫でられながら、重い瞼を閉じると、すぐに意識は深い眠りの中へと落ちていった。
翌朝、目が覚めると時計は朝の6時を指し示していた。日付が変わる前には眠りについたはずだから……だいたい6時間ぐらい、きっちりと睡眠はとれたな。
まだミカミさん達は眠っているようだから、みんなを起こさないようにするりとベッドから抜け出して、朝ご飯を作りにキッチンへと向かう。
「今日の朝ご飯は……。」
寝起きでまだエンジンのかからない脳を回して、朝食のメニューを考えていると、扉がコンコンとノックされた。
「この時間だと……ルカだな。」
扉を開けると、思った通りそこにはメイド服に身を包んだルカが立っていた。
「おはようございます。」
「あぁおはよう。今朝ご飯を作るから、入って待っててくれるかな?」
「かしこまりました。」
ペコリと俺に一礼して、ルカは足音無く部屋の中へと入ってくる。
ルカをメイドとして雇うことになって何日か経ったけど……本当に初日とは見違えるほどメイドっぽくなった。今はお使いとかだけじゃなく、ミカミさんに教えられながらではあるものの、洗濯等も覚えていっている最中だ。
「さてと、今日も1日を頑張れるご飯を作ろう。」
1日の活力となる、元気の出る朝ご飯をみんなに食べてもらうため、俺は今日もまたキッチンに立って料理を作るのだった。
しっかりと朝食を食べて元気を蓄えた後、俺はみんなと一緒にギルドへと向かっていた。
「さ〜て、今日はどれぐらい売り上げを伸ばせるかな〜。」
「目標はやっぱり完売を目指したいですよね。」
「ケーキはどのぐらい作ったんだっけ?」
「えっと……ちょうど50個ですね。」
「ホールケーキ1つが大銀貨5枚だから〜……全部ホールで売れれば、それだけで金貨25枚の売り上げか。それに加えてプリンとドーナツの売り上げも合わせると……おおよそ完売で金貨30枚ぐらいの売り上げは期待できそうだね。」
「金貨30枚……行ってほしいですね。」
そう話しながら、ギルドに赴くと、すでにそこには何時もよりも人でごった返していた。
「なんかずいぶん人が多いね。」
「ですね……。」
人の間をくぐり抜けて、先日場所を貸してもらったところに赴くと、そこではミースさんが受付嬢の人達に何やら指示を飛ばして、飲食スペースの準備などを進めていた。
「おはようございます。」
「ミースちゃんおはよ〜!!」
「あっ、皆さんおはようございます!!今日はもうすごいですよ。ヒイラギさん達のお店が開くっていう噂を聞きつけて、もうたくさん人がギルドに来てます。」
「え、今日はやけに人が多いなと思ったんですけど……そ、そういうことなんですか?」
「はいっ!!」
「じゃ、じゃあ手早く準備しますね。」
お客様を待たせるのはよろしくない。手早く開店準備を進めよう。
ミースさん達が会場の準備を整えてくれてくれている間に、俺達も今日の動きなどを確認しながら、開店の準備を進めた。
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