第102話 ケーキの価格設定
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ドーナさん達は、口いっぱいに頬張ったケーキをじっくりと味わった後、ゴクンと音を立てて飲み込むと、幸せそうにため息を吐き出した。
「んはぁ~、マジで美味かった……。」
「うへ~、一瞬お花畑が見えたような気がする~。」
「至福の一時でしたぁ。プリンもドーナツもすっごく美味しいものでしたけど、これは……また食べたときの幸福度の次元が違いました。」
「美味しかったですか?」
そう問いかけると、ドーナさん達は何度も頷いた。そして残った3つも平等に分けて、それもお腹に詰め込むと、またドーナさん達は幸せそうに大きなため息を吐いた。
「お世辞無しで、今まで食べたお菓子の中で一番美味しかったよぉ~ヒイラギ君。」
「ありがとうございます。」
「……ちなみにこのケーキっていうお菓子はどのぐらいの値段で売るつもりなの~?」
「それを決めるために、皆さんにまた意見を窺いたいんですけど……皆さんはこのケーキがいくらだったら買いたいと思いますか?」
そう問いかけると、ドーナさん達は少し思い悩むような仕草の後、思った金額を口にしてくれた。
「アタシは、このケーキを丸々一つ食べれるなら金貨1枚……いや2枚でも全然払えるよ。」
「おばさんもドーナちゃんと同じかなぁ〜。金貨2枚はちょっと高いけど、1枚なら納得できるねぇ〜。」
「私は……で、できれば大銀貨8枚ぐらいが良いです。」
「なるほど……。」
3人の意見を聞いて、俺はこのケーキの値段を頭の中で決定付けた。
「貴重な意見をありがとうございます。おかげで値段をどのぐらいにしようか決まりました。」
「おっ、いくらにするの〜?」
「大銀貨5枚にします。」
「「「え?」」」
ケーキの金額設定に、3人は思わず素っ頓狂な声を上げた。
「こ、このケーキ丸々1つで大銀貨5枚でいいのかい!?」
「はい。あんまり金額を高く設定しても、たくさんの人に食べてもらえないでしょうし……。」
「だ、だからって大銀貨5枚!?こ、これ原価は大丈夫なの〜?」
「原価は大丈夫です。なんなら大銀貨5枚も、原価っていうよりは、手間費みたいなものですから。」
ホールで大銀貨5枚……それを6等分して、1ピースは大銀貨1枚で売ろう。1ピースで買うよりも、ホールで買ったほうがお得にする。
「さてと……それじゃあ皆さん、今日は貴重な意見をありがとうございました。俺、そろそろ帰って仕込みを始めます。」
ドーナさん達にお礼を言いながら席を立ち上がり、またマジックバッグに手を入れた。
「さっきのは試食としてお願いしましたけど、こっちは貴重な意見をもらったお礼のケーキです。ギルドの職員の人達の分も作ってあるので、良かったら皆さんで食べてください。」
ケーキの入った箱をテーブルの上にポンポンと並べていくと、ミースさんがそれを見て驚愕していた。
「あ、え……こ、こんなに良いんですか!?」
「もちろんです。あっ、もし美味しかったら、明日買ってくれると嬉しいです。」
そう言いながら、チラリと周りにいた受付嬢の人達に視線を向けると、みんな揃って首を何度も縦に振っていた。
「それじゃあ、明日に備えて、たくさんお菓子を用意してきますね。失礼します。」
ペコリと一礼してからその場を去ると、俺の背後で集まっていた受付嬢の人達が、ドーナさん達の座るテーブルに押し寄せているのが見えてしまった。
それを俺と一緒に見たグレイスがポツリと呟く。
「うわぉ……ヒイラギさんのお菓子、すごい人気っすねぇ。」
「今日ケーキを食べてくれた人が、また明日買い求めてくれると嬉しいんだがな。」
「絶対来てくれるっすよ!!自分だったら絶対行くっす!!ほんで買い占めるっす!!」
「あはは、さすがに買い占めは困るから……購入制限的なのも考えたほうが良いかな。例えば1人につきケーキは1ホールまで……とか。」
その辺はミカミさんと少し話し合ったほうが良さそうだな。できれば俺としてはたくさんの人に食べてもらいたいし……買い占めはご遠慮願いたいんだよなぁ。この気持ちはきっとミカミさんもわかってくれるはず。
そしてグレイスと一緒に帰宅すると、ちょうど小休止を挟んでいたらしく、ミカミさん達は昨日買ったクッキーやジュースを飲みながら休んでいた。
「あ、2人ともお帰り〜。ドーナちゃん達、ケーキの反応はどうだった?」
「みんなめちゃくちゃ美味しそうに食べてたっす!!思わず自分も食べたくなったっす……。」
「あっはっは、それは結構なことじゃないか。ねぇ、柊君?」
「はい、ケーキはあのまま変更なしで良さそうでした。」
「うんうん、結構結構。これは明日が楽しみだねぇ〜。いったいどのぐらい売り上げが出るか……今から楽しみだよ。」
「あと問題なのは、どのぐらい仕込むかですよね。ドーナツは予備の生地を作っておけば、その場で作れないこともないですけど、ケーキはさすがに作る時間はないので……。」
ギルドの受付嬢の人達は、あの感じだとほぼ全員来てくれそうだし……。10……いや20個……下手したらもっとか?多めに作っておいて損はないから、一応作れるだけ作っておこうか。
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