第101話 待ち望まれる開店
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市場リサーチとケーキの試食を終えた翌日、俺はグレイスと一緒にギルドへと向かっていた。ミカミさん達は、宿でシアの勉強を見てあげている。
「いやぁ、それにしても昨日のケーキは美味しかったっす〜。」
「そういえば、グレイスはワイバーンだけど、人間と同じような味覚だな。普通に俺が作ったものを美味しいって食べてくれるし。」
「今まで魔物とか動物を丸齧りしてたっすからね〜。」
「それは美味しかったのか?」
「ん〜……美味しい美味しくないっていうのはどうでもよくて、ただ腹を満たせればそれでよかったっす。」
「ふむ……。」
「でも、ヒイラギさんの作ったご飯を食べたら世界が変わったっす。もう今までの味のない、ただ腹を満たすだけの食生活には戻れないっすよ〜。」
「そう言ってくれると、冥利に尽きるよ。」
胸ポケットに納まっているグレイスと会話しながらギルドの中に入ると、奥の方でドーナさんとマイネさん、そしてミースさんの3人がテーブルを囲んでいるのが見えた。
「おはようございます。」
「あ、ヒイラギさんにグレイスちゃん、おはようございます!」
「おはよぉ〜。」
「おはよ。ま、座んなよ。」
「ありがとうございます。」
ドーナさんとマイネさんの間の席に座るように促され、その席につくとマイネさんがにっこりと微笑みながらこちらに目を向けた。
「ヒイラギ君、昨日ミカミちゃん達が美味しいお菓子のお店を知りたいって、おばさんのところに来てさぁ〜。うへへ、今度はな〜にを企んでるのかなぁ?」
「この町でどんなお菓子が売られてるのか、ちょっと気になったんです。新商品をどんなものにするか……その参考に。」
「なるほどねぇ〜。」
そうマイネさんと話していると、ミースさんが思い出したように口を開く。
「あっ、その件でヒイラギさんのお耳に入れておきたいことが……。」
「何かありました?」
「じ、実は……ヒイラギさんのお菓子をリピートしたいとか、食べてみたいって人が、ギルドを訪れるようになったんです。」
「え、本当ですか?」
「はいっ!!ちなみに、私含めギルドの受付嬢一同も…………食べたがってます。」
「あはは、それは嬉しい報告ですね。」
「そ、そういうわけでですね、もし決まっていたらで構わないので、次回の開店予定を教えていただけると…………。」
「なるほど……。じゃあ、特に何も依頼がなければ、明日にでもまた。」
すると、ミースさんはすぐにパタパタと受付の方に駆けていき、凄まじい勢いで依頼の入っているファイルを読み漁ると、こちらに戻ってきた。
「現在ドーナさんとヒイラギさんに対応してもらうような、難しい依頼はありませんっ!!」
「そ、そうですか。」
チラリとドーナさんの方に目を向けると、ドーナさんも頷いている。どうやら本当に大丈夫みたいだ。
「じゃあ、また明日……やらせてもらいます。」
「ありがとうございます!!みんな楽しみにしてましたからね、きっとすごくいっぱいお客さん来ますよ。あ、会場の設営は任せてくださいね!!」
嬉しさからなのか、すごく気合いの入っている様子のミースさん。それに嬉しさを感じていると、マイネさんが1つ質問を投げかけてきた。
「ちなみにヒイラギ君、明日はまた何か新商品出したりするの〜?」
「あ、実はその新商品のことで、また皆さんに意見をもらいたいなって思ってたんです。」
「うへ〜、いいねぇ〜。今度は何を売るつもりなのかなぁ?」
「見てもらったほうが早いと思うので、早速取り出しますね。」
形が崩れないように、箱に入れておいたケーキを取り出してテーブルの上に置いた。
「次の新商品にしようと思ってるのは、これです。」
そして箱からケーキを取り出すと、みんなの視線が一気にそれに釘付けになった。
「こ、これが……お菓子なのかい?」
「すごく綺麗です……芸術作品みたい。」
「うへ〜、ヤバそうなのが出てきたねぇ。」
「これはケーキっていうお菓子なんですけど、見たこと無いですか?」
俺の質問に3人とも首をフルフルと横に振った。そして気づけば、俺達の周りにミースさんの他の受付嬢の人達もわらわらと集まり始めている。
「これ、どうやって食べるんだい?このままガブッといってもいいのかい?」
「あはは、もちろん購入してもらったら、好きなように食べてもらって良いんですけど……。今回は食べやすいように切っちゃいますね。」
今回もまた6等分に切り分けて、一つ一つお皿に乗せたあと、フォークと一緒にドーナさん達の前に置いた。
「はい、どうぞ。食べてみてください。」
「うぅ〜、ヒイラギさん。自分も食いたいっす〜。」
「グレイスは昨日食べただろ?」
「そうっすけど、このケーキは何回でも食べたくなるっすよ。」
「あとでまた作ってあげるから、今は我慢してくれ。」
そうグレイスを宥めた後、早速ドーナさん達に試食をお願いした。
「それじゃあ、食べてみてください。」
「じゃあ、ありがたく頂くよ。」
「いただきま~す。」
「い、いただきますっ!!」
そして3人ともフォークでケーキを口にした次の瞬間……お皿に乗っていたケーキが忽然と消え、ドーナさん達は頬をリスのように膨らませていた。
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