第100話 ケーキ争奪戦
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「さてと、それじゃそろそろケーキを切り分けようか。」
クッキーの味見もほどほどに、いよいよケーキを切り分けようとレヴァを取り出すと、シアがぎょっと目を丸くして驚いていた。
「こ、これ切っちゃうの?すごく綺麗なのに……。」
「もちろん。このままじゃ食べにくいからな。」
「私はこのままかぶりついてもいいけど?大きいケーキにかぶりつくの、夢だったんだよね。」
「自分もこのままがぶっといきたいっす~。」
「ダメです。それだとみんなが同じ量を食べられないので、不平等になっちゃいますから。」
そしてレヴァでケーキを6等分にして一人一人に配った。すると、シアがケーキの中にも果物が敷き詰められていたことに気づいて声をあげた。
「あっ!!中にも果物いっぱい!!」
「こうやって切っても、断面が見えて綺麗だろ?」
「うん!!」
きらきらと目を輝かせているシアを眺めていると、ちょんちょんとミカミさんに頬をつつかれた。
「柊君、ケーキを綺麗に6等分してくれたのは良いんだけどさ、私たちの人数……。」
「5人ですね。」
「1個余るよね?」
「5等分するのはちょっと難しくて、一先ず簡単な6等分にしたんですけど……余った分はマイネさんのところにまた持っていこうかなって。」
そう言うと、ミカミさんは俺の顔の前で人差し指を横にフリフリと振った。
「チッチッチ、柊君。せっかくマイネちゃんに持っていくなら、カット済みのケーキじゃなくて、ホールのケーキのほうが良いと思わないかい?」
「ま、まぁそれはそうかもですね。」
「つ・ま・りっ!!この余ったケーキは私たちで消費するべきなのさ!!」
「ミカミさんが食べたいだけじゃ?」
「そうとも言うっ!!」
「言うんですね……。まぁでもミカミさんの言ってることは一理ありますし、また今度マイネさんに持っていく分は別で作ります。」
「んっふっふ、流石柊君。聞き分けが良くて実にいい子だよ。」
機嫌をよくしたミカミさんは、俺の頭を何度も撫でてくる。もう頭を撫でられて喜べる年じゃないから、なんだか少し恥ずかしい気分になる。子供の頃はこうやって撫でられながら褒められるのは好きだったんだが、大人になると嬉しさよりも恥ずかしさの方が勝ってしまうな。
「み、ミカミさん。そろそろ食べましょうか。」
「そうだね、食べよう食べよう。」
みんなのお皿にケーキが行き渡ったところで、早速試食してみることとなった。
「それじゃ、いただきます。」
「「「いただきま〜す!!」」」
みんなが食べる様子を眺めていると、突然シアとルカ、そしてグレイスのお皿から一瞬にしてケーキが消えてしまった。
「あれ?」
疑問に思っていると、みんなの口がリスのように大きく膨らんでいるのがわかった。
「みんな一口で食べた……のか?」
そう問いかけると、リスのように頬を膨らませている3名は、ゆっくりと頷きながらモグモグと咀嚼していく。
すると、だんだん表情が蕩けていき、幸せそうな表情に変わっていった。
「ぷはっ、すっごく美味しかったぁ〜……。」
「ふわふわで口の中でとろけて……この世のものとは思えない食べ物だったっす〜。」
「1日3食、これが食べたいです。」
「あはは、大好評だね柊君。」
そう笑いながら、ゆっくりとケーキを味わっていたミカミさん。まだたくさんケーキが残っているそのお皿を、シア達が猛獣のような目で狙っている。
それに気が付いたミカミさんは、異次元胃袋にあっという間にケーキを詰め込んでしまった。
「ミカミちゃん、その体のどこにそんなに食べ物が入るっす?」
「むふふ、別腹というやつだよグレイスちゃん。」
「うぅ、じゃあ残ってるのはヒイラギさんの……。」
チラリとグレイスがこちらに目を向けてくると、その目に映ったのは、シアが俺の膝の上に座ってケーキを頬張っている姿だった。
「おいひぃ〜♪ヒイラギお兄ちゃんありがと!!」
「なぁぁぁぁっ!?さ、先を越されたっすーーーっ!!」
頭を抱えながら、グレイスはガックリと崩れ落ちるが、すぐに顔を上げると未だ誰の手にも渡っていない余りのケーキに目を向ける。
「かくなる上はっ!!」
「おっと、それこそ抜け駆けは駄目だよグレイスちゃん。」
飛び出そうとしたグレイスをミカミさんが取り押さえた。
「柊君の分のケーキの処遇は、柊君が決めるのは当たり前だけど、この今のところ誰の物でもないケーキは、欲しい人が平等に所有権を争うべきじゃないかな?」
「う、正論すぎて何も言えないっす。」
「そういうわけで、おかわりのケーキが欲しい人〜?」
ミカミさんのその声に、ミカミさんを含む俺以外の4人がみんな揃って手を挙げた。
「ぎゃあぁぁぁっ、予想はしてたっすけど、やっぱりこうなったっす〜!!」
「ふふふ、競争率が高ければ高いほど、勝ち取った時の喜びはひとしおさ。今回は勝ちを決めやすい、じゃんけんで勝者を決めるってのはどうかなぁ?」
「じゃんけんってなんすか?」
「こうやって出した手の形で勝負するゲームさ。」
ミカミさんはじゃんけんを知らないグレイスに、軽くじゃんけんの説明をした。
「良くわかったっす。」
「よし、じゃあいくよ……じゃんけん…………ポンッ!!」
ケーキを賭けたじゃんけんの結果は、ミカミさんの一人勝ちに終わった……。
そのケーキはミカミさんが食べるのかと思いきや、俺の口元にフォークで近付けてきた。
「はいっ、柊君。半分こしよっか。」
「全部食べちゃっても良かったんですよ?」
「ふふふ、これは作ってもらった人への恩返しというやつさ。それに、作ったキミ自身が味見しないと、次作る時に活かせるものも見つけられない……でしょ?」
「……そうですね。じゃあありがたくいただきます。」
「うんうん、そういうことで……はい、あ〜ん♪」
「え、いや……一人で食べれますよ?」
「いやいや、駄目だよ?」
ミカミさんに逆らうことはできず、俺はみんなの前で恥ずかしがりながら、ケーキを食べることになったのだった。
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