調査レポート1:エドルス ファリカの罪状について
よろしくお願いします。
作成者 王国騎士団 第二部隊所属 オルト ポーン。
※彼が起こした王国への反逆。詳細は王国監査官の管轄であり、意図的に情報が隠されている。私が独自に調査した内容を記す。
⚫️事件発生の経緯
満月。天候は晴れ。夜10時ごろ。
エドルス含め10名の集団が王宮に侵入。王宮の魔術祭祀場にて王国騎士団と接触。そのまま戦闘へ。祭祀場には騎士団の最高位『守護騎士』であり王国の英雄『アルカ•レイヴァーティン』も居合わせていた※1。
※1.祭祀場には騎士団の精兵が警護に当たっていた。警備としては明らかに過剰とも思える戦力が配備されており、騎士団側もエドルスの襲撃を予測していた節がある。事実、その場にいた騎士団員の多くは、前日に祭祀場の警備を命じられていたという記録がある。アルカが祭祀場にいた理由も不明だ。
⚫️エドルス達について
エドルス達は自分たちを『黒衣の団※2』と呼称。またその場にて『英雄アルカの殺害』『禁止魔術※3を使用し、世界を滅ぼす』ことを宣言。
※2.構成員の多くには犯罪歴があった。同時に構成員は全員実力者であり、A級冒険者もいた。
また『黒衣の団』はかつて王国に存在した特殊部隊の名前である。エドルスも所属していたらしい。王国にはほとんど記録が残っていない……。
※3.禁止魔術の詳細は明らかにされていない。しかし発動すれば世界は滅ぶらしい。滅びの定義も不明。世界が滅亡するのか、それとも世界における秩序の崩壊を指すのか……。
⚫️戦闘。及び被害状況。
エドルス達『黒衣の団』は騎士団と戦闘。結果、騎士団12名死亡。40人が重軽症を負い、内2名が未だ意識不明。
また祭祀場に勤めいた非戦闘員のうち2名が死亡。10名が重軽症。
英雄アルカも死亡※4。
※4.英雄アルカの死については一部の人間を除いて情報は伏せられている。英雄は国民の支えであり、彼の死が公表されれば混乱は避けられないだろう。
『黒衣の団』はエドルスを含む3名を取り逃がす。残りの7名は死亡を確認※5。
※5.戦闘の詳細は不明。最期に『黒衣の団』の一人の男がエドルス達を逃したようだ。その男も死亡。
⚫️エドルスが使おうとした禁止魔術について
※禁止魔術の詳細は不明のため、調査結果から推測するしかない。
彼の罪状には『イディラ教を否定する言説の流布』がある。彼は事件を起こす前に、人を集めて演説をしていたと目撃証言がある。彼は『人は死んだ後に転生できる』と説いた。
対してイディラ教の教えは『人は死ねば女神の園に迎えられる』というものだ。転生はイディラ教を否定する考えのため、上記の罪状は『転生を民衆に広めようとした』ことが当たる。
彼はこうも言っていた。
『いずれ全ての人間が確実に転生できる時代が訪れる。魔術で作った肉体に、転生した魂を入れれば良いのだ。死が終わりではなくなる』
魔術で人間の肉体を作ることは可能だ。しかし魂は作ることができない。
禁止魔術は『転生を可能にする』魔術だったのではないか?
結論。
まだ不明点が多く調査が必要。
⚫️以下、個人的なメモ。
あまりにも突然に、理由すら分からず命を奪われた者達がいる。
被害者とその関係者は自らが受けた暴力について語ることさえできずにいる。故に真実は明らかにしなければならない。
その問いにエドルスはどう答えるのか。
個人的に興味があるので、彼とも話してみたい。
次回はその2になります。