第15話 人生を楽しもう
よろしくお願いします。
それから二週間。
俺たちはダンジョンを攻略し続けていった。
凶暴なゴーレムとの死闘を繰り広げ、
巨大な迷路を慎重に進み、
複雑なトラップを解除しながら、
豪華な城、優雅な滝、煌びやかな水晶が作り出す光景に目を奪われ、
なんやかんやで80階まで到達していた。
途中で手に入れた情報では100階が最深部らしい。
「かんぱ~い」
レノンが企画した『80階到達記念』ということで俺たちは酒場に来ていた。酒に料理をテーブルに並べ宴会を始める。
「ぷはーっ。酒がうまい! こんなにうまい酒は久しぶりだっ!」
ミンウェルは豪快に酒を一気飲みする。レノンは酒だけではなく、料理を片っ端に食べている。見ていて気持ちの良い飲みっぷり、食べっぷりだ。
「やはりアレだな。ダンジョン攻略は達成感がある。一仕事を終えた後の酒ほどうまいものはないなぁ!!」
「酔うの早いな……。まだ一杯目だろ」
「ああん? テンション低いぞ! エル(※エドルスの偽名)ももっとテンションを上げていけ! 普段のダンジョン攻略の時みたいにな! かなりイキイキしていたぞ!」
「……そんなにイキイキしていたか? 俺?」
首をかしげる俺に、今度はレノンが喋りかけてくる。
「ええ。マスター。かなりダンジョン攻略を楽しんでいましたよ。攻略ルートを考えている時とか罠を解除している時とか、子供みたいに無邪気で可愛らしかったです」
「マジか。攻略に夢中で気づかなかったな」
「ほら。夢中になっていたんじゃないですか。それはつまり楽しかったってことですよ」
確かにそうだ。
反論できない。
「そうだな。ダンジョン攻略は確かに面白かった。どの道を進むべきか考えて、モンスター相手に合わせた戦略を練る。結果も目に見えて分かるから成果を実感しやすい……うん、性に合っているのかもしれないな」
と、自分の言葉に驚く。
何かを面白かったと口にするなんて思いもしなかった。
今までの人生でも、モンスターと戦ってきたこともダンジョンを攻略したこともある。しかし、そのときは何も感じなかった。任務だったからだろうか。
今もそうだ。
次々と運ばれてくる料理を食べながら思う。
レノン達と下らない話で盛り上がりながら、思う。
ご飯が美味しいってことも、誰かと会話して盛り上がるってのも、今までの人生ではなかったことだ。
いつの間にか、自分は全く違う場所に来てしまったらしい。
酒で酔った頭で、そんなことを考えた。
◇
夜。ミンウェルと別れ、宿屋に戻ってきた。レノンは酒が回ってきたのか、直ぐに猫の姿に戻って寝てしまった。
俺はというと、窓際に腰掛けて外を眺めていた。
柄にもなく黄昏れている。
外の景色は面白くともなんともない。
ただ「夜は暗いなぁ」と当たり前のことを思うだけだ。
しかし不思議と新鮮味を感じてしまう。
今まで外の景色とかも意識してこなかったからだ。
時間がゆっくりと流れている。
スローライフの定義が「時間がゆっくりと過ぎること」なのかはともかく、この緩慢な時間の中だからこそ、色々と考えてしまう。
確かに自分の中で変化が生じている。
何か、たぶん重要な何かを、掴んでしまいそうな気がする。
「昔の俺に教えたら驚くかな……」
なんて下らないことも考える。
……ふいに昔のことを思い出す。
子供の頃の記憶だ。
たいてい嫌な記憶で、しかも嫌な記憶というのは、一度掘り起こされるとなかなか消えてくれない。
俺はいやいや昔のことを思い出すはめになった。
次回から過去編です。
そろそろストックが切れるので、次の話が投稿できた後は、また暫く投稿まで間が空きます。
よろしくお願いします。




