第12話 旅行しよう
本編です。
場面展開に◇いれてみました。
いいね、ブックマークありがとうございました。
秋が過ぎ肌寒くなってきた季節。
俺とレノンは馬車に揺られていた。
レノンは物珍しそうに窓からの景色を眺めている。
「いやー。天気も良いですし、格好のお出かけ日和ですね。マスター」
「そうだなー」
俺はというと馬車に揺られていたせいか眠くなっていた。開けた窓から差し込む風と陽の光や、馬車の揺れや、木や土の匂いのせいだ。
どうしても気が緩む。
「おっと。見えてきましたよ」
レノンの言葉につられて、俺も窓から顔を出す。
目的の街が見えてきた。
新興都市フリューネ。
俺達は旅行に来ていた。
◇
新興都市フリューネ。
10年以上前は、モンスターが大量に跋扈し、更にモンスターによって発生する毒ガスのせいで人が住めた場所ではなかった。
しかし王国騎士団の懸命な活動によりモンスターを一掃。
土地の浄化も完了。
更には豊富な資源もわいてきた。
ついでに温泉も出た。
街が出てみるみる内に発展していった。
更には最近『ダンジョン』まで誕生して、冒険者達が街に集い、金を落とす。
今、これ以上ないくらいノリに乗っている街である。
そんな街に俺達はやってきた。
街を散策し、レジャー施設で汗を流し、名物料理を味わう。
夜は旅館に泊まった。最近来た別世界の転生者が創った、『ニホンフウ』の宿屋というやつだ。
木で造った建物で、全体的に……なんというか……落ち着く感じだった。
温泉に入った後、俺達は部屋で休むことにした。『ユカタ』という寝間着に身を包む。悪くない着心地だった。
同じくユカタに着替えたレノンは、床にぐでーっと寝そべっている。
「いや~。ゆっくり出来ましたね~。温泉とか最高でしたね」
「本当それな。あんな良いものがあったとは。街も10年前とは比べられないほど発展していたし」
「ん。マスターは前にも来たことがあるんですか?」
「あるぞ。王国の任務でな」
俺は以前、王国の特殊部隊〈黒衣の団〉に所属していた。ほとんどが罪人で構成され、贖罪として危険な任務に携わる部隊。
「俺達も頑張ってモンスター退治に勤しんだもんだ」
「なるほど。じゃあ、昔を懐かしむために、今回の旅行を?」
「それもあるけどな。他にも理由が……つーか説明していなかったな」
旅行に行く理由をレノンに説明していなかった。「旅行行こうぜ」と誘ったら「オーケーです」と即答だったからだ。
俺は鞄から一枚の手紙を取り出す。
「昔の仲間に招待されたんだ。見せたいものがある、と」
「そのお仲間さんはどんな人で?」
「一緒に王国に乗り込んでくれた仲間」
「つまりはマスターの犯罪友達ですか」
身も蓋もない言い方だが、その通りだ。
差出人の名前はドーリス。
一緒に王国を襲って、王国騎士団を殺した仲間の内の一人。
仲間で生き延びたのは俺とドーリス、そして後一人だけ。
俺は『痕跡隠蔽』魔術を俺達3人にしかけ、捕まるまでの猶予をつくった。
そして俺達はバラバラに別れた。今まで連絡も取っていなかった。
ただ『痕跡隠蔽』魔術には例外も仕掛けておいた。俺たち3人の中だけ例外として、お互いの居場所を『追跡』魔術で簡単に知ることができるようにした。
ドーリスも『追跡』魔術を使って、俺たちの居場所を探して手紙を出したのだろう。
「残された時間はもう少ないだろうからな。やりたいことはやっておきたい」
俺が施した『痕跡隠蔽』魔術もあと少しで解かれるだろう。
王国が総力を挙げて俺を捕まえに来たら、おそらく勝てはしない。
残された時間を悔いのないように使いたい。
……と思ったがやりたいことは特になかった。
そんな時にドーリスからの手紙が来た。しかも指定された場所はフリューネ。〈黒衣の団〉、かつての仲間と共に戦い、かつての仲間が死んでいった場所でもある。
思い出に浸ってみるのも、悪くないと思ったのだった。




