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幕間1 転生魔術について

再開します。今回の話から後編になります。

会話と会話の間にスペース空けてみました。

今回の話は三人称です。


ブックマーク、いいね、評価ありがとうございました。

 

 ベルラード王国。

 イディラ教を国教とする大陸で最も力を持つ大国家。

 精強な騎士団を有し、その守りは完璧に思えていた。

 しかし、ある男が王国に反旗を翻し、全世界に衝撃を与えた。

 魔術師 エドルス・ファリカ。王国の『守護騎士』アルカを殺した犯罪者。

 

 反旗を翻したエドルス・ファリカ、他2名の行方は未だ不明である。


 

 王宮を一人の騎士が歩いている。赤い髪をした小柄な女性。しかし立ち振る舞いは堂々としており、周囲の人間も彼女を尊敬の眼差しで眺めている。

 鎧には四つ星の紋章。四つある部隊の隊長の証である。

 リザ・エヴァン。王国騎士団 第二部隊隊長。

 彼女は廊下の隅にある資料室へと足を踏み入れる。

 彼女の部下が根城にしている場所だった。

 

 資料室は酷く散らかっていて、中央の机の上には部屋の主が座っていた。ぼろい普段着を着た、30代ほどの男だ。髪もボサボサで、目は酷くよどんでいる。

 男は入ってきたリザに気づき、お辞儀をする。


「おや。隊長殿。こんにちは」


 男の気だるげな様子を見てリナは溜息をついた。


「戻ったのなら報告をしてと言ったでしょう。オルト」


「ごもっとも。すみません。つい調べ物に夢中になってしまいまして」


 男の名前はオルト・ボーン。第二部隊隊員の二つ星騎士だった。

 戦闘力はそこまで高くはないが、代わりに調査や密偵を得意としていた。


「それはそれとして隊長。お疲れのようですね」


「ええ。仕事はほとんどないのにストレスがたまるわ。エドルスの事件について、上層部は何一つ開示しようとしない。全く腹立たしい」


 リザは部屋の隅から椅子を持ってきて座る。


「アナタの調査が頼りなの。この前のレポートから更に分かった?」


 リザが問いかけると、オルトは首を振る。


「まだなんとも。アタシの推測ならあるんですけどね」


「なら推測でいい。話しなさい」


 オルトは頷いて語り出す。


「殺された『守護騎士』アルカについて改めて調べ上げました。彼が本当に転生していたのかについて……。アタシも彼は転生を繰り返していると思います」


「…………へぇ」


 リザは頷いて、続きを話すよう促す。


「そもそもアルカは何なのか? この国には五つ星の騎士は二人いました。一人は我らが騎士団長。そしてもう一人は『守護騎士』と称される人物。守護騎士は女神イディラの信託を受けて選ばれます。この人物がアルカです」


「……前代の守護騎士が死ねば、信託が下され、新たな守護騎士が選ばれる。今代の守護騎士であるアルカは人族の男性だった。先代は獣族の女性だったわね」


「ええ。代々の守護騎士は性別も種族もみんな違いました。ただね、噂はあったんですよ。違う人間が選ばれている筈なのに、剣筋が似通っている、価値観も先代にそっくりだ……。守護騎士は転生を繰り返しているのでは、て噂が」


「……そうね。私も聞いたことはあった」


 リザも自身の師匠から聞いたことがあった。

長命種の耳長族である師匠は、アルカの剣筋は先代の生き写しだと言っていた。

 別人とは思えない、とも。


「転生を繰り返しているのなら、アルカの『始まり』が何だったのか……。興味はありますが、これは本筋ではないので放っておきましょう。アタシは守護騎士が入れ替わる時期に起きた出来事を色々と調べてみました。そこで一つの事実が分かりました――

 代替わりの時、人が大勢死んでいます」


「――え?」


「先代から当代のアルカへの代替わりの時期。監獄に収監されていた多くの大罪人が処刑されていました。勿論、記録は改ざんされていましたけどね。

 先々代と先代の代替わりの時期。『粛正』と称して、犯罪ギルドの取り潰しが行われました。そこでも大勢死んでいる」


 リザは眉をひそめる。


「――その死にはどんな意味がある?」


「おそらく転生魔術に必要な儀式だと思います。一人の人間が転生するためには多くの生け贄が必要なのでしょう。そして生け贄が必要だと仮定すると、エドルスが起こしたある行動が説明できます」


「――ホムンクルスの大量の破壊!」


 リザの答えにオルトは頷く。

 エドルスの罪状の一つ。

 王宮が管理していたホムンクルス100体を破壊した。


「あのホムンクルス達もアルカが転生するための生け贄だったのでしょう。彼らはその為に用意された。過去の出来事を見てみると、生け贄に選ばれるのは犯罪者や罪人、そしてホムンクルスばかりです」


 生け贄に選ばれる判断基準をオルトは明言しなかった。

 リザも判断基準について察しがついていた。

 しかし二人とも、その判断基準を言語化することに抵抗があった。

 

 ようやくリザが吐き捨てるように言った。


「胸くその悪い話ね」


 リザの怒りを見て、オルトも頷く。


「ええ。胸くその悪い話です……。ただこれはあくまでアタシの推測ですがね」


「いや。その推測は正しいと思うよ。私の勘だけど」


「隊長の勘は当たりますからねぇ……」


 リザはつまらなそうに頭をかく。

 推測が当たっていてほしくないと、態度が示していた。


「ただ……この推測が正しいとすると、新しい懸念事項が出てくるわけだけど」


「はい。転生魔術の発動に生け贄が必要だと仮定した場合――エドルス達とアルカ達の戦闘があった夜、転生魔術の発動条件を満たしているのでは? という話です」


 エドルスが率いる〈黒衣の団〉とアルカが率いる騎士団との戦闘。

 敵味方合わせて計21名の死者が出た。

 その戦いでアルカも確実に死んだ。リザ達も死体を確認している。


 しかし、その戦いの犠牲者達が『生け贄』の条件を満たしたとしたら……


「アルカは転生して、この世界に生まれているかもしれない」


 長い間、守護騎士は王国を守ってきた。

 時には英雄とも呼ばれ、国民の希望ともなってきた。

 そんな英雄が転生を果たしているのならば、喜ぶべき話かもしれない。

 しかし。全ての推測が正しかった場合。


 多くの命を犠牲にして、生きながらえている生命を許せるかは、また別の話だ。


(特に隊長は許せないだろうな)


 とオルトは、リザを見ながら思った。


ありがとうございました。

7話分くらいは毎日投稿できれば、と思います。

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