表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/34

第10話 せめて覚えておこう

投稿できました。

話は暗いです。すみません。


『アンタは生きてくれ』


 かつての仲間に言われた台詞だ。王国に反旗を翻した時に一緒に戦った仲間だ。

 英雄殺しは達成できたが、禁止魔術の発動は『ほぼ』失敗した。

 俺はもう死んでも良かったが、アイツは最後に力を振り絞り、自らの命を犠牲にして俺を逃した。

 だから俺も自殺はしないでいる。

 せっかく逃がしてくれたので、時間がある限りは牢屋ではなく外の世界で生きようと思っている。


 ……彼はA級の冒険者だった。名前はボルバといった。彼は十年以上も前に仲間に嵌められて地位も金も、家族も失った。


「生きていても死んでいるようなもんだった」

 

 とボルバは俺に語った。

 自分がいかに惨めで、人より劣り、生きている価値がないかを教えられる人生だったと。

 俺とボルバが会ったのは偶然だ。

 アイツは王都の街中で、たくさんの人間を殺そうと計画していた。剣を持って大通りに行き、目につく人を殺そうとした。

 俺の今後の計画に支障が出そうなので、俺はボルバを止めた。

 俺は彼の話を聞いた。

 最初は興奮していた彼は次第に冷静になり、次には泣いていた。


「なぁ、なんで俺はこんなことを考えるようになっちまったんだ? 昔は違った。人並みの正義感もあった。悪事は許さない人間だったんだ。でも今は幸せな人間がいるのが許せなくなっている。俺はこんなにも惨めなのに!」

 

 殺してくれ、殺してやる、消してくれ、嫌だ、ふざけるな、と支離滅裂な言葉を吐くボルバを見て、俺は彼を仲間に誘うことにした。

 

 英雄アルカを殺し、彼が使用権を持つ『転生魔術』を奪う計画に。 

 英雄アルカは何度も転生を繰り返し、姿と名前を変えて王国を守ってきた。その鍵となる『転生魔術』の術式は彼の魂に刻まれている。俺は術式を奪う手段があった。

 そのためにはまず英雄アルカを殺す必要があり、そのための戦力が必要だった。


「転生魔術……それを使ってアンタは何をするつもりだ?」

「人は死ねば終わりだ。一度まともな道から外れてしまえば二度と戻れない。しかし転生魔術があれば、やり直す機会を得られる……というのが、まぁ表向きの理由だな」

「本当の目的は?」

「俺は全人類が転生できるよう世界の仕組みを変えるつもりだ。そうすれば『死が終わりではなくなる世界』がやってくる。生き方も社会の在り方も根本からひっくり返る。クソな世界の理念がぶち壊れる様を見てみたい」


 理屈でなく、衝動があった。

 この世界をぐちゃぐちゃに踏み躙って、価値観をひっくり返して、まるごと全部台無しにしてやりたい。

 この衝動はずっとあった。


 父に見放され、ホムンクルスに育てられた時。ホムンクルスは力の加減ができないので、何度も死にかけた時があった。

 助けてと叫んでも誰も助けてくれなかった。

 俺を産んだ母。そして母の妹であるファルカ家の正妻。この二人だけは俺に良くしてくれたが、あの家では女性の立場が弱く、最後は惨めに死んでいった。母の葬儀には俺しか来なかった。帰り際、父が女と腕を組んで歩いているのを見た。

 ……そして、かつての『黒衣の団』の仲間達。多くは罪人で構成され、贖罪として危険な任務をこなさなければならなかった。

 彼らの性格も皆それぞれで、嫌な奴もいれば、優しい奴もいた。普通の人間と変わらない。運と環境が悪かった者も多かった。

 しかし彼らは無惨に死んでいった。危険な任務で王国騎士団に見捨てられ、一人、また一人とゴミのように死んだ。

 俺ともう一人だけ生き残り、『黒衣の団』は解散。俺は王都に戻った。

 今でもよく覚えている。

 よく晴れた日だった。

 広場にはたくさんの人がいた。

 皆笑っていた。 

 何かがパチンと弾けた。


 そうして俺は王都に反旗を翻した。


 どうしようもない人間はいる。

 手遅れで、被害者ヅラをして、他者への想像力も欠けていて、暴力を振るう。

 俺はそんな奴らのために戦いたかった。

 俺もそんな人間だから。


「…‥だから、アンタの話をもっと聞いてみたかったよ」


 アッシュの墓の前で俺は呟いた。

 アッシュは罪を犯して、その上で償いをしたいと言っていた。俺たちでは考えられなかったことをしようとしたのだ。

 もっと話を聞いてみたかった。


「エルさん。外は冷えますよ」


 声をかけられて振り向くと教会のシスターが立っていた。アッシュの葬儀に出たのは俺だけで、最後までこのシスターが付き合ってくれたのだ。


「大丈夫です。俺はもう少しここにいます」

「かしこまりました……アッシュさんとは友達だったのですか?」

「…‥そうですね」


 俺が答えるとシスターは笑った。


「悩みがあれば聞きますよ。告解室に来てください」


 と言ってシスターは去っていった。


 俺は最後にアッシュの墓を見た。

 …‥今なお衝動がある。

 お前を殺した人間を痛めつけてやりたい。自分にその権利があるかどうかは関係ない。

 

 空を見上げた。

 良い天気だった。

ありがとうございました。

話も半分くらい終わりました。

次回投稿は間が空いてしまうかもしれませんが、完結はちゃんとしたいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ