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04.料理チートの時間だ

更新が遅くて申し訳ございません。

読んでくださっている方々に感謝です。ブックマーク、評価もよければぽちっっとお願いします。


これからもパンダらしくのんびりではありますが頑張ります。




 決意した私は即座に行動を起こした。

 父と母を説得し、様々な分野の人間を教師として呼んでもらって勉強する。



 何をするにもこの世界の現在の常識を知らねば動きようがない。



 納得いくレベルでの勉強を終えたのは17歳になったころ。記憶が戻ったのが13歳だったのですでに4年もたってしまった。

 


 しかしうれしい誤算もいくつかあった。

 その一つにして最大の喜びが魔法。適正属性が水で次点が火だった。相反する属性が高いのは珍しいことなので貴族社会では騒ぎになったらしいのだが、私にはとってそこは興味がないのでよく知らない。



「水と火が使い放題ってことは、蒸留がやりほうだいってことじゃない!」



 この世界は科学技術が発展していない中世的な異世界。

 当然、浄水器なんてものはないし、浄水場などで使われる特定の物質を取り除く薬剤なんてものは存在しない。



「蒸留水は軟水というよりも純水。だけどそこから調整することはできないわけじゃない」



 再現性のある手堅い手段として通常の硬水と作った蒸留水を混ぜて調整するくらいかな? 自分には中途半端なチートなどない。だからこそ『誰でも』『手軽に』という二つは重要になる。世界の常識を変えるならば余計にだ。

 私はそう考えて、侯爵家で使う水の大半を硬水と蒸留水による調整水にできないか画策した。



 結論。無理でした!



 侯爵令嬢が付きっ切りで蒸留水を作っているなんてできるわけないし、誰かにやってもらうには燃料代から設備費と今のままでは回収できないものが多すぎると両親に諭された。

 いくら娘に甘い侯爵夫妻もお金が絡むとなかなか……。真っ当すぎる理屈にさすがに言い返せずどうしたものかと考えた。



 そこで二つ目の誤算。

 家の専属料理人であるアドラー料理長が蒸留水に興味を持ったのだ。



 今になって思えば、舌やのど越しに敏感な料理人が興味を持つのは必然だったのかもしれない。

 同時に、私は思った。



「これは使えるわね(ニヤリ)」


 

 料理は直接的な満足につながるし、利益につなげるのも簡単だ。

 今のままでは回収できないなら、回収できるように整えてやればいいと。



 彼が興味を持ったことを皮切りに、私は厨房に通い詰めた。

 先も述べた通り、蒸留水はそのままだと飲食には向いてない。軟水を超えて純水なので軟水で感じることのミネラルの味がなにもない。硬水と蒸留水をどれくらいの対比で混ぜるや調理の際に必要な調味料を増やしての調整も大変だった。



 並行して、前世で知っていた、軟水と硬水の違いによる料理の適性をかいつまんで説明し、実際にどうなるかを二人で研究した。全部の答えを私が教えることはできないし、さすがにそこまで細かくは覚えていなかったのでいろいろと時間はかかったが、料理によって水を使い分けるという今までにはない考えが異世界に生まれた。



 ちなみに、小説でよく見かけた料理チートもの。それをやろうとすると様々な面で水質は影響するものなので注意が必要よ。



 わかりやすい例だと、本場のフランスパンが日本人からすると異常に硬いのは硬水だからと一点に尽きる。水の質が違うだけで小麦の生地作りから変わるのだ。日本のパンが柔らかいのは軟水で作るためであり、触感なども全然変わる。もちろん、作り方の違いもあるけど。



「確か小麦のグルテンが硬水だと強くなるんだっけ?」



 他にも、煮込み料理・パスタをゆでる時や歯ごたえのある料理は硬水が適している。つまりは欧州の料理文化そのものだ。しかし素材本来の香りや味を楽しむならばやはり軟水だ。もっとも苦味やえぐみなどもストレートに感じてしまうので今まで以上に下処理の技術が求められる。近年になって認められた、日本が言い続けた『うま味』は軟水であればこそ感じやすい味覚の代表格だ。



 料理人たちに求められる技量は上がり、アドラー料理長のを筆頭にマインズフィール侯爵家の料理人の腕前はメキメキ上がっていった。



 むろん、指導したりされたりで私の料理の腕前も上がった。

 侯爵令嬢でありながら料理をすることに対する両親からの批判はそれなりにあったが、食事が改善されてからはあまり言われなくなった。お母様の目はいまだに怖いし、貴族令嬢としての勉強時間も跳ね上がったけどね……。



 ん?お料理チートを私がしたいみたいになってる。



「まぁ、人の生活において食は欠かせないし、そこから認知してもらうのが手っ取り早いのは事実だからしょうがない。しょうがないったらしょうがない」



 軽い現実逃避を少々。



 現実の戻って、これらの知識と技術を使って両親に料理店の経営を始めさせたら大ヒット。今はまだ世間に広めてはいないが、水の違いで料理の質が変わることを教えればいろいろと変わることだろう。

 当初の予定通り、費用を回収できるほどの収益が生まれたので文句は言わせない!!



 なお侯爵令嬢カブリエラ・マインズフィール。料理店を開くにあたっていくつかの前世のレシピも教えていた。独創的かつ奇抜な(知らない人からしたら)新しい料理を生み出した侯爵令嬢は 教えを受けた料理人たちから尊敬を込めて『水彩の料理人』などと呼ばれていた。



 本人は……悲しいほどに知らない。



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