15.救うために
(アルバート視点)
「ここか」
「はい。ヤツもこの建物にいるようです。突入しますか?」
アルバートが率いる騎士団を商人たちが潜伏していると思われる建物の周囲に配置させる。
一般街の中央の一等地を所有しているため、警備も多かったが騎士団は即座に制圧し拘束した。
「行こう。あの男は殺さずに私の前に連れて来い」
「御意」
騎士たちが建物内部に突入すると、すぐさま内部で喧噪が聞こえてきた。
「紅月騎士団だ!大人しくしろ!!」
「ヒィ!お助けを!!」
商会に雇われただけの人間は対して抵抗もなく拘束された。彼らは事情聴取ご解放されるだろう。
しかし。
「ここに何故騎士団が!!よりによって紅月騎士団など・・・!」
商会の役員や、側近たちは抵抗してみせた。
武器を持って対抗しようとするが、アルバートの右腕であるノアが切り伏せていく。
「閣下。ここにもいないようです」
「あちらも探しましたがいません」
部下たちがアルバートに次々報告するが見つからない。
「側近を一人連れて来い・・・」
アルバートの圧力に騎士団の団員ですら、圧倒される。
ノアですら、ここまで怒りを撒き散らす主は見たことがなかった。
「閣下。連れて来ました」
「離せ!!」
アルバートの目の前に連れて来られたのは商会のNo.2である男だ。
ここに来る前に商会の内情は調べられた。
こんな無法地帯のような所にフィーネが。と思うとアルバートはギリっと歯を鳴らす。
「こんな事をしてただで済むと・・」
「ほぉ?どんな事をしてくれるんだ」
側近の男が騎士に引き摺られるように連れて来られた時、男は自分が誰の眼前に連れて来られたのか理解していなかった。
しかし、自分の背後から声が聞こえ振り返った瞬間、目の前の人物を視界に入れ悲鳴を飲み込んだ。
「・・・うっ・・・あぁ・・・・」
「なんだ。返事が出来ないのか?それは困ったな」
「グッ!!アァァァァ・・・!!」
アルバートはにこりと笑いながら、跪く男の膝の上に短剣を落とした。
叫びまくる男にアルバートは更にグリグリと短剣を動かす。
「気絶は許さない。お前の主人はどこにいる?」
仄暗い瞳で問いかけるアルバートの姿に周りにいたものは冷や汗をかいた。
「さぁ、私も気が長い方じゃないんだ。さっさと吐いた方が少しは幸せかもしれないぞ」
「ギャァァッ!アアアアやめてくれ!!助けてくれぇ!!」
「うん?言う気になったか?」
「言う!言うから助けてくれ!」
「で?」
「主の執務室の戸棚の裏側に地下に降りる階段がある!!そこにいるはずだ!!」
脂汗をかきながら必死に男は白状した。
その言葉にアルバートは笑う。
「そうか。情報ありがとう」
「こ、これで助けてくれ・・え?・・・・」
「それは出来ないな」
助かったと安堵する男の首にアルバートの剣が裂いた。
ゴフッと口から血を吐いて、そのまま男は絶命した。
「即死させてやったんだ。感謝するがいい」
冷たい目で男を切り捨てたアルバートは、ノアたちと共に部屋を後にした。