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飽きないよ

理名さんは、俺に料理を教えてくれた。


初めて使う包丁は、怖くて…。


でも、理名さんが後ろから優しく包み込んでくれるように教えてくれるから恥ずかしかった。


「さあてと。コネますか」


「うん」


俺は、理名さんが好きだよ。


今だって、ずっと好きだよ。


「どうやってするの?」


「ここに、手をいれてごらん」


「うん」


「こうやってね、コネるんだよ」


「面白いね。これ」


「でしょ?ストレス発散になるの」


ゴツン


「イタタタ。また、何?」


俺は、ずっーーと理名さんにキスしたかったんだ。


「これしたら、理名が笑うから」


「いや、タンコブできるから」


そう言いながらも笑ってくれる。


「こうやってね、丸めてあげて」


「うん」


小さな俺の手じゃ、大きさがうまく出来なくて、それでも必死でやると理名さんは褒めてくれた。


それが、凄く嬉しかった。


フライパンに、ハンバーグを並べた。


理名さんは、火をつけてくれる。


「手が、ベタベタする」


「これね、ちょっと砂糖つけて洗うとね。綺麗にとれるよ」


そう言って、理名さんは砂糖と少量の食器洗剤をつけてくれた。


「やって!!」


俺は、子供の特権を使った。


理名さんは、俺の手を掴んで洗ってくれる。


本当に、理名さんがお母さんだったらいいのにって思ったんだ。


恋心なんか捨てちゃって、子供として理名さんといれたらって思ったんだ。


でも、出来なかった。


「どう?」


「綺麗になった」


「よかったね」


「理名もやってあげるよ」


「えっ?いいよ、いいよ」


「やるから」


まだ、理名さんの手は俺よりも大きかった。


「出来たよ」


「ありがとう」


ゴツン…



「イタタタ」


「ごめん、何度も」


「いいの、いいの。気にしない、気にしない」


この時の俺は、理名さんとどうしてもキスしたかったんだ。


「ただいまー」


「あっ、帰ってきた。」


ガチャ…


「今日は、疲れたよ。」


「お疲れー」


「誰?」


「あのね」


「待て、待て、理名。誘拐してきたのか?」


「はっ?何でそうなるのよ」


「子供が欲しいからって、誘拐はダメだぞ」


「誘拐なんかしてないから」


俺は、理名さんの旦那さんの前に行った。


「僕は、理名が好きだ。お前なんかに絶対負けない」


「えっと」


「プっ、ハハハ。」


「理名、何だよ。これ」


「だから、絶対負けないって言ってんだよ。宣戦布告だ!!」


「そうですか、わかったよ。チビ助」


そう言って、優生さんは俺の頭をポンポンしたんだ。


「本気だからな!僕は、理名が好きだ!本気だぞ」


「頑張れ、チビ助」


そう言って、ガッツポーズをして奥の部屋に消えていった。


「理名、何だよ。あいつのどこがいいんだよ。」


「どこかな?わかんなくなるよね。ただ、一緒にいるのはお互いに楽で、楽しいんだよ」


「そんなの意味ないだろ?」


「意味はあるよ。私が一緒にいたいからいるだけだよ」


「理名が、一緒にいたいのか?あいつと?」


ガチャ


優生さんが、もどってきた。


「シャワー浴びてくるわ。」


「お風呂いれなくてよかった?」


「うん、今日はいいや」


「わかった」


そう言って、優生さんはお風呂に行った。


「理名、どこが好きなんだよ。あいつの」


俺は、この日初めてヤキモチを妬いたんだ。


「どこだろうね?」


理名は、ハンバーグをひっくり返している。


「理名、僕は諦めないから」


「どうぞ」


理名さんは、飽きると思って余裕だったんだと思う。


だけど、俺は一度も飽きなかったんだよ。


20年間、理名さんに飽きた事はなかった。


それでも、理名さんが母親代わりだって思うなら、それも悪くないかなって思ったんだよ。


だって、俺は理名さんと一緒にいれるだけで幸せなんだ。


ただ、理名さんの寝顔を見れるだけで、理名さんの笑顔を見れるだけで、俺は、それだけあれば何もいらない。


それだけは、わかって欲しいんだ。


理名さん…。




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