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好きじゃない?

俺は、20年前のあの日を思い出していた。


理名さんは、恋じゃないって言っていたけど…。


俺は、ずっと理名さんといるだけで胸がドキドキするんだよ。


今だって、ずっと。


そうなんだよ。


だからって、大好きな二人を傷つけてまで理名さんを奪いたくない。


ただ、一生大切な初恋で、一生好きな人だ。


それは、彼女も同じで。


俺達は、一生叶わない恋をしたもの同士で結婚した。


それでも、幸せなんだ。


彼女も俺も、誰にも理解されないだろうけどね。


20年前ー


まだ、俺が僕って言ってた時、理名さんは、鬱陶しいと言った後で泣いたんだ。


「きて」


「何?」


「いいから、きて」


俺は、理名さんの手をひいた。


コンビニから近い所にある公園は、うっそうと緑が生い茂ってるせいで、誰もやって来ないのを知っていた。


「何なの」


「理名、僕と付き合ってよ」


ベンチに座らした、理名さんに片膝をついて、手の甲にキスをした。


「何の冗談?やめてくれない」


「冗談じゃないよ。初めて、理名を見た時から好きだったんだよ。一目惚れだったんだよ。」


「あの、俊君は何歳なのかな?」


「10歳だよ!」


「10歳?!私は、42歳だよ」


「関係ないよ」


「きっと、俊君のママより年上だよ」


「関係ないって、言ってるだろ」


俺は、ガキだった。


だから、理名さんにキスしちゃったんだ。


ガツン


「イタタタ」


キスというより、頭突きだった。


「ごめん、大丈夫?理名」


唇は、()れなかった。


変わりに、おでこをぶつけた。


「プッ、ハハハ」


理名さんが、笑ってくれたんだ。


「痛かった?理名」


「痛い、痛い。これ、何しようとしたの?ハハハ」


笑いながら、理名さんは泣いてた。


俺は、理名さんをギュッと抱き締めた。


「何のつもりかな?」


「僕が、守るから。だから、付き合ってよ。理名」


「あのね、大人をからかうものじゃないよ。」


そう言って、理名さんは左手の薬指を見せた。


「私はね、既婚者だよ。結婚してる。優しい旦那さんと猫のミカエルと住んでるの」


「こ、子供は?」


「いないよ、出来ないから」


理名は、また泣いていた。


「僕が、理名の子供になるよ」


もう、この際、傍にいれるなら何だってよかったんだ。


「なれないよ。俊君には、ご両親がいるでしょ?」


「こんな事するのに、両親なの?」


僕は、服を捲って体を見せた。


「これ、何?」


理名は、僕の体の痣を見つめていた。


「殴られたり、蹴られたりするんだよ。家から閉め出されたりもする。泣き叫んだって許されないから、もう泣くのはやめた。理名、僕を子供にしてよ」


理名は、痛いお腹の痣に優しく()れて泣いてくれる。


「痛いね。こんな事されて、辛いね」


理名は、思ったとおりの優しい人だった。


「痛いよ。いつだって」


「酷くなるなら、そういう所に連絡してあげるから」


「いらない。理名と会えなくなるのは、嫌だ」


俺は、馬鹿だった。


だから、理名に抱きついた。


子供って、特権を最大限に利用して、理名の胸に顔を埋めた。


暖かくて、柔らかくて、心臓が跳び跳ねるぐらいに音を立てた。


その日、両親は兄と姉を連れて祖父母の家にご飯を食べに行くのを聞かされていた。


「理名のご飯が食べたい」


「えっ?夜、遅いよ」


「いい、家の人。帰ってくるの23時回るから」


「俊君は、一人でお留守番なの?」


「うん、カップラーメンばっかり嫌だよ。給食しか、手作り食べたことない。だから、理名が作って」


理名さんは、驚いた顔をしたけれど、俺のワガママを聞いてくれたんだ。


「何が、好きなのかな?」


「ハンバーグが、食べたい」


「いいよ、作ってあげる」


俺は、理名さんの頬にキスをしたんだ。


「ハハ、可愛いね」


理名さんは、嫌がらずに笑ってくれた。


「手繋いで欲しい」


「わかったよ」


理名さんは、俺のママになろうとしてくれたんだと思うんだ。


多分、冗談だって思ってたから…





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