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私と優生の過去

リビングに、優生が布団をひいてくれた。


「ちょっと話す?」


「うん」


私は、優生とダイニングに向かい合った。


「俺より、理名の方がわかるだろ?俊君の気持ち」


「でも、家はヒス起こした時は殴られたけど、常時ではなかったし。基本は、ネグレクトだったから。生かさず殺さず、食べ物を与えられてた感じだったから」


「俺は、殴られてたけど。虐待って程じゃなかったな」


「何で、そんな事されてるのかな?」


私は、カフェインレスの紅茶を飲んだ。


優生は、ビールを飲む。


「通報した方がいいんだろうな。本当は…」


「でも、安易に出来ないよね。近所の人言ってたでしょ?」


「ああ、そうだった。三沢さんとこだよな。戻ってきてから、酷くなって殺されかけたって話」


「そうなんだよね。俊君が酷い目にあったらって思うとね」


「だよな」


私と優生は、間違ってるって言われたって小さな手が必死に私達に助けを求めた気持ちを無下には出来なかった。


「理名は、お父さん出てってからネグレクト酷くなったんだよな」


優生は、そう言って私を見つめる。


「そう。不倫相手に行かないように繋ぎ止めたくて作られた子供が私だったから…。父は、5歳で出て行った。それからは、お前を産んだのに父さんは出て行った。お前なんか産むんじゃなかった。って言われてたね。」


「ショックだよな。そんな風に言われたら…。」


「だからさ、あの人が病気で死んだ時に喜んじゃったんだよね。私。最低だよね。本当、最低。だから、子供出来なかったのかな?」


「そんなの関係ないよ。理名が、そう思ったから出来なかったんじゃない。それに、理名の境遇だって関係ないよ。だから、自分を責めなくていいんだよ」


そう言って、優生は笑った。


「気持ち悪かったんだよ。本当は、自分が…。繋ぎ止める為に作られた子供だって知ってね。母親にとって利用価値がなくなったんだよ。私は…。それでも、死なれたら困るからギリギリで生かされてた。俊君も、そうなんだろうね。ギリギリで生かされてるんだろうね」


「でも、もうギリギリじゃないだろ?俺達がいる。それに、俊君の虐待がもっと酷くなったら、考えよう。なっ?理名」


「そうだよね」


「もう、寝よう?」


「そうだな」


「歯、磨いてくるね」


「わかった」


私は、食器を下げに行った。


洗面所で、歯を磨きながら、考えていた。


どんな形でも、俊君が私と出会った事には意味があったのではないか…。


告白から始まって、俊君の気持ちが今も本気だとしても、それでも私は、大人として人として、俊君を守ってあげたい。


初めて、そう思った。


歯磨きが、終わって寝に来ると優生は眠っていた。


カシャ


俊君が、優生に抱きついてるのを見て写真を撮ってしまった。


やっぱり、優生はいい父親になれたよ。


私は、電気を消して横になった。


「ミカエル、おやすみ」


暫く眠っていたら、目が覚めた。


「ごめんなさい」


俊君が、泣いてる声で起きた。


「どうした?」


「ごめんなさい、うわぁぁぁ」


「おねしょしたのか?」


優生は、起き上がった。


「嘘」


確かに布団が濡れていた。


「ごめんなさい」


「したものは、仕方ないだろ?服、変えあったけ理名」


「そこの袋に、パジャマはいってるよ」


「じゃあ、着替えるか」


優生は、洗面所に連れて行った。


私も11歳の時に生理がきて、おねしょしちゃったんだよね。


母親に見つかったら、殴られるからどうにか自分で洗ったんだ。


私は、布団をあげる。


「いいよ、いいよ。俺がやるからさ」


「ありがとう、優生」


優生みたいな親だったら、あの時の私は救われてたと思うんだ。


「回すのは、また後でするわ」


「うん」


「ごめんなさい、怒らないで」


「怒らないよ、布団はないから床で寝なきゃだけどね」


私は、俊君の頭を撫でた。


「理名、ありがとう」


私にしがみついて泣いてる。


可愛いな、俊君は…。


本当に、可愛い。


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