ローズブレイカー その3の3
私としょうこ♂お姉さま、そして、らいずまい先生の合作『朝霧』を、捨てるにはもったいないので、公開する事にしました。知ってる方も、知らない方も、最後までお付き合いして下さいましたら、幸いです。
どれ程歩いた頃だろう?
目の前を歩いていた北条が、ふと、僕に声を掛けてくる。
「端鷹さんは、この町で起きている事、ご存知なのですか?」
北条の言い方は、何か淡々としていて、まるで時間潰しの様な言葉に聞こえる。
ただ、僕が『端鷹』と呼んでいいと言った事は、少なからず了承してくれた様だった。
「白薔薇戦争の真似事・・・、そんな事を言ってる奴が居た」
僕は、蔵姫の言った事を、そのまま受け売りとして言う。
「白薔薇戦争・・・。そうですわね、その様にも見えますわ」
北条は、事有り気にはぐらかす。
「北条は違うと?」
「まずは、端鷹さんの意見を聞いてよろしいですか?」
北条は、僕の質問に答える事無く、再度、僕の答えを待つ。
「偶然・・・ってのは無いだろうね。薔薇戦争の真似事では無いにしろ、誰かしら・・・何者かの作為は有ると考える。ただ・・・」
「ただ?」
「それが、只一人の思惑でもないんじゃ無いかなって、考えても居る」
僕自身、『アレ』への遭遇率が、異常であるとは思っている。
それを優先事項としていなかったが、それに対する情報としての思考は、つねに行っていた。
偶然なのか、それとも、何者かの作為なのかと。
「それは、貴方以外の・・・と、受け取ってよろしいのかしら?」
北条は、僕をちらりと見るようにして言い、軽い確認をする。
「それは僕の思惑って意味? 僕の思惑なんて簡単な物だから、作為なんて物自体、存在しないけどね」
「そうですか・・・。しかし、本来思惑などと言う物は、簡単な物ですわ。それを実行達成する為に、複雑な作為と言う物をするのですから」
北条は否定するように言い、まるで、その行為を楽しんでいる様に見える。
「残念ながら僕は、シンプルに出来てるんでね」
そう言いながら、軽く手を挙げてみせる。
「まぁ、シンプルと言う事は、端鷹さんはアメーバーの様な単細胞生物と言う可能性もありますわね?」
北条はそう言い、フフ・・と笑う。
「さすがにそこまでシンプルじゃないよ。ただ、そうでは無いと考えてるだけの話さ」
「考えてる?」
北条は、僕のちょっとした言い回しに気が付いたのだろう。
興味を覚えたように、質問をして来る。
「可笑しいか?」
「普通は『思う』ではありませんの? それではまるで、自分の事ではなく他人の・・・いえ、物事の事を言っている様ですわ」
北条の質問は、もっともな事である。
「しっくりこない時があってね、その時は『思う』を使わない事にしている」
僕の言葉に、北条は「まぁ!」などと言い、なぜか嬉しそうに笑う。
はて、僕の言った言葉の中に、笑うポイントなど、在っただろうか?
「もしかして北条は、言葉遊びという物が好きなのか?」
僕のその言葉に、思い当たる事を言う。
意識はして居なくとも、何かを伏せながらの会話とは、その様になってしまうから。
「あら、端鷹さんは、言葉遊びしませんの?」
北条の言葉には、『意外』と言う物が見え隠れしていた。
「面倒だから、あまり好きじゃ無い」
僕は正直な所を言う。
「その割りには、取り様によっては意味が異なる事を、言われて居るようにも見えますわ」
僕はふと、北条がどの事を言っているのだろうと、考えてしまう。
「確信が無いだけで、意図としている訳じゃ無いよ。憶測でしかない物を、決め付けた様に言う趣味は無いんだ」
僕はそう言いながら、人には言えない事も在るさ・・・と思う。
「物は言い様。それ自体が言葉遊びと言う物でしょ。それにその言い回しでは、端鷹さんが自分の事を、反対の意味で『人では無いかもしれない』・・・と『考えている』事にもなりますわよ」
北条は、クスクスと笑う。
「・・・さすがにそれは無いかな?」
北条の言葉に、一瞬の引っ掛かりを感じつつ、いくらなんでも・・・と、僕は思う。
「それは、加々美さんの確信なのですね」
どうやら意味を求めるのではなく、北条は、会話自体を楽しんでいる様だった。
「で、北条は、この町で起きている事を知っているのか?」
僕は話題を元に戻す。
「さぁ?白薔薇戦争の真似事みたいですわね」
そう言った北条は、『この町で起きている何か』・・・と言う話について、自分の意見を言う気が無いらしい。
「へぇ・・・」
僕は声のトーンを落とす。
「所で貴方の刀、名はございますの?」
北条は、話題を逸らすように、少しオーバーアクションを入れながら、聞いてくる。
言う気が無いのなら、それだけである。
「これ?」
僕は朝霧に視線を落とす。
「之・・・と言う刀ですの?」
天然なのか、それとも茶目っ気が有るのか、北条は真面目にそう言葉を返す。
「いや、そう言う訳では無いんだが」
僕はそう言って、本気かどうか判らない会話に、付き合う。
「名前は『朝霧』と言う。銘なのか愛称なのか、元の持ち主に聞いただけだから、本当の所は判らない」
隠す事は無い・・・。
そう考えての言葉だったが、実際の所、僕は朝霧の事を何も知らない事に気が付く。
「それは・・・、本当に朝霧ですの?」
北条は目を丸くする。
彼女の反応・・・、もしかして朝霧は、有名な刀なのだろうか?
「ならば貴方・・・、鑑守の当主ですの?」
「カンノモリ?」
それは、僕の知らない単語。
「加々美・・・、鑑・・・、そう言う事なのですね。ならば、貴方の化け物じみたそれらも、納得出来ますわ」
北条は、考え込むようなポーズを取り、勝手に納得をする。
まぁ、勘違いをするのは北条の勝手なので、害が無ければ、気にする所では無い。
カンノモリ・・・・ねぇ。
それが何を意味するのか、興味深い事では在るが、僕にとってはそれだけの事。
時間の有る時に、さくらさんか蔵姫にでも、聞いて見ることにしよう。
僕は、それまでの北条との会話を打ち切り、視線と意識を移す。
「見つけた・・・」
僕は、ニヤリと笑う。
それは、北条には聞こえない程度の、僕の呟き。
「しかし、幾ら鑑守とは言え、護部に無断で・・・って、どちらに行かれますの?」
自分とは違う方向に歩き出した僕に、北条が声を掛けて来る。
「ありがとう、助かった」
僕はそれだけを言い、北条と別れる事にする。
北条は、役に立ってくれた。
だが、それだけである。
僕は、それ以上を必要とはしない。
「ちょっと、痕跡は向こうですのよ!」
そんな僕に、北条は困惑しているようだったが、何かを察したように後を付いて来る。
「何か見つけましたの?」
僕は答えない。
いや、答える必要が無いと判断をする。
北条は、僕程度の存在に、気後れをした。
答えた所で、これから先、その彼女が役に立つとは到底思えなかった。
僕の視線の先には、空へと立ち上がる結界が写し出されて居る。
たとえ色は違えど、それが強力な物である事は、白華音からの経験で理解できる。
「どう言う事ですの?」
僕は、話し掛けてくる北条を無視したまま、走り出す。
思ったよりも、結界の範囲が広く見える。
誰の結界かは、今の所、判断が出来ない。
しかし、僕に対しての時間稼ぎ・・・と言うのは考え辛く、結界を張った存在は、これから起きる被害を考えて、この大きさの結界を張ったのだろう。
急ぐべきだろう、僕は走る速度を増す・・・。
・・・。
・・・。
如何程走っただろうか、突然、彼女にそれは起こる。
「端鷹さん!駄目です!」
僕を追い掛けていた北条が、ヒステリックに叫ぶ。
僕は足を止め、北条に振り返る。
「ここから先に、入ってはいけません!」
北条は尚も、僕に警告をする。
僕は辺りを見回し、ここが特別な場所ではなく、普通の住宅街である事を確認する。
「北条、自分の言っている事を、理解しているか?」
「人は、ルールを守ってこその存在です!ですから、ここから先に入ってはいけません!」
北条は、何か妄信的に、言葉を発しているようだった。
少なからず、理由を想像する事は出来た。
「北条、この結界は、君が創った物じゃないんだろ」
そう言った僕は、先程から見えていた結界の内へと、既に足を踏み入れて居る。
「はぁ?結界?・・・何の事ですの?」
北条は、結界のすぐ手前で、足を止めているのだ。
彼女に自覚が無いとすれば、結界の効果が北条に影響を及ぼしていると考えて良い。
・・・成る程。
僕は、ほんの気まぐれで、チョットした実験を考える。
あの時、美姫は言った。
『僕が肯定すれば、それは存在する事になる』・・・と。
ならば、それを実行してみれば良い。
「北条のすぐ目の前に、北条・・・お前を拒絶する結界が在る。それを見ろ!」
僕は意図的に、言葉を強くする。
「結界?そんな物在るわけ・・・」
北条の表情が変わる。
「何・・・ですの、・・・これ」
結界を知覚出来たのか、北条は顔を青くする。
「私・・・、何の疑いも無く入ってはいけないと、思ってしまいました。それどころか、当たり前の様に、貴方に進んではいけないと・・・」
北条は、目の前の結界に、気付けなかった事が、少なからずショックだったのだろう。
その場で、ただ呆然とする。
半分冗談での行為だったが、北条には、効果が有った様だった。
美姫の言う事も、あながち嘘では無いのかも知れない。
「まぁ、そう言う事だ」
僕はそれだけ言うと、結界の中心部へと、足を進める。
北条は、「まって・・・」と、小さく呟く。
その一瞬、北条の中で何が起き、なにを考えたかは知らない。
ただ、彼女は何か、失くしてはいけない物を求めるように動き出し、僕と同じ方向へと向う。
北条は、僕に並走して走る。
「だいじょうぶか北条?少し顔色が悪いぞ」
難しい顔をする北条に、僕は儀礼的に、声を掛ける。
「気になさらないで下さい。この程度の結界で、体調を崩したりしませんわ!」
北条は気丈を振舞う。
しかし、尚も結界は北条に対し、『拒絶』の様な効果を果たしているのだろう。
元々健康的な筈の彼女の肌は、蒼褪め、今にも倒れそうな面持ちを見せる。
勝手に付いて来るのは北条。
足手まといならば、捨てればよい。
僕はそう考え、その事に対し、問題は無いと判断をする。
結界の中心近くまで来た僕は、北条に止まるようにと、手をかざす。
「どうしましたの?」
僕は人差し指を自分の唇に当て、彼女の言葉を止めた。
そして、小さく「気配を消せ」と指示をする。
僕の音は、既に消している。
故に、僕自身の気配は気えていると判断をする。
物陰に隠れ、僕が見ている物を見ろ・・・と、北条に指で合図をする。
「ひぃっ!」
北条は、その風景に露骨に恐怖し、その表情には、後悔と言う文字が浮かぶ。
「ク・ラキ・・・。」
そう呟いたのは北条で、呟いた本人は身体を硬直させる。
昨日、チンピラが蔵姫に恐怖した様に、北条はそれに恐怖を感じている様だった。
ふと僕は、北条の視線に、疑問を感じる。
僕達の視線の先には、蔵姫ともう一人、蔵姫と別れる寸前に見た、あの時の男性が居るのだ。
正確には、蔵姫とその男性が、対峙していると言った所か。
「北条、一つ聞いていいか?」
僕は確認のため、北条に声を掛ける。
・・・。
北条は答えない。
「北条!」
「え?」
北条は、金縛りから解けたように、僕を見る。
「君の知っている蔵姫は、男なのか?」
北条に質問したそれは、僕の純粋な疑問。
『クラキ』と、北条が言った先には、僕の知る『蔵姫』では無い者が存在していた。
「男っ・・・て、それは男性の方に決まっていますわ」
「へぇ・・・」
僕は再び、蔵姫とその男性に視線を向ける。
「所で端鷹さん、あ・・・貴方、あれを見て何とも思いませんの?」
若干、声が震えている北条は、彼等をどんな風に見ているのだろうか?
「さぁ?別に何も・・・」
僕は、北条が期待するような回答を持っていない。
体質の事を、一々説明するのも面倒なので、僕は口を閉じる。
「・・・いえ、さすがは鑑守と言うべきですわね」
北条は、勝手に納得し、悔しそうな表情を浮かべる。
悔しがるのは北条の勝手だろう。
しかし、一度は隠れた物の、これでは目的を果たす事が出来ない。
ならば、止まらずに行動するだけである。
「北条はここで待って居てくれ」
僕は北条にそう言い、彼らに近づく事にする。
・・・その矢先だろうか?
蔵姫が突然、男性に仕掛ける。
何か会話をしていた様子も無く、二人はただ、対峙しているだけだった。
それを、何の前触れも無く、蔵姫は突撃したのだ。
二人の間、十メーター程度であろうか、蔵姫はそれを一瞬で詰め、何かを纏ったフルスイングの右拳を相手に叩き込む。
相も変わらず、容赦の無い行動に見える。
だが男性は、避ける素振りもせず、防壁か何かでそれを止め、まるでゴミを払うように左手を振る。
衝撃波。
軽く左手を振っただけで、空気が震える程の衝撃波とは・・・。
化け物だな・・・と、僕は判断をする。
そして、それに弾かれた蔵姫は、たった今詰めた間合いと、寸分たがわず押し戻された事になる。
「な、な、何ですの今の!」
北条が声を掛けてくる。
「衝撃波だろ?」
当たり前の事を聞く北条に、僕は聞き返してしまう。
「そうでは無くて、もう御一方の女性の事ですわ。溜めも無しに『九汲み矢』並みの技を御使いに成りましたわ!」
『九汲み矢』? 北条の言っている事はよく判らないが、彼女にとって多分凄い事なのだろう。
「あっちの女の子の方が、僕の知っている蔵姫だから、それが普通なんだと思うよ」
僕には説明のしようが無い。
「クラキ?」
北条は、不思議そうに、蔵姫へと視線を向ける。
「そう、ロサ・ムルティー・フローラ」
僕がそう言った後、北条は再び僕へと視線を戻す。
「それが事実かどうかは別として、あの存在を見て『女の子』と言って退ける、端鷹さんの神経を疑いますわ!」
そう言った北条は、彼等へと視線を移す。
そこには、尚も踏み込み、複数度拳を振るう蔵姫の姿が在る。
・・・有効打は皆無と言って良い。
僕が見る限り、蔵姫にとって、あまり良い状況とは、言えない。
「じゃ、動かないで待っててくれ」
僕はそう北条に言い、「やれやれ・・・」などと呟きながら、二人に近づく。
「ちょ、ちょっと端鷹さん!」
きっと北条の目には、揉め事に突っ込んで行く、とんでもない阿呆に映っているのだろう。
実際に、自分自身でも、阿呆だと理解できるのだから・・・。
僕は適当に立ち止まり、彼らを傍観する事とした。
若干、立ち位置が蔵姫寄りなのは、情と言う物だろうか?
意識が、こちらへと向けられるのが解る。
北条の言う所の『クラキ』も、例外ではない。
まぁ、それも一瞬の事。
興味が無い・・・、そう言えば、それだけの事だろう。
僕は何をするでも無く、そのまま、在る程度の距離を保つ。
だが、もう一人の蔵姫は、僕の事が気になったのだろう。
確認もせずに、
「邪魔だ!」
と、一言だけ言う。
そんな蔵姫を、可愛い奴だと、思わず笑ってしまう。
邪魔をしに来たのだから、蔵姫の言うそれは、まさに正解と言う物だ。
「あれがお前の兄貴か」
僕の質問に蔵姫は答えない。
まぁ良いさ、僕は蔵姫の兄貴らしい男性へと、視線を向ける。
見る限り、やはり『アレ』では無い。
そう僕が認識した矢先、それは起きる。
ガン!
あまりにも突然に、鈍い音が響く。
それは唐突といって良い。
解っている事は、僕が反射的に朝霧を振って居た事と、彼の持つ長剣との交差が在ったと言う事。
その長剣、恐らくは白薔薇。
僕は距離を取っていた筈だった。
その瞬間、彼は僕の目の前へと存在する。
「ほう・・・、これを受けるか」
彼は、何か面白い物を見るように、邪悪に笑う。
興味が無さそうだった割には、どうやら僕を、敵対存在と認識したようだった。
・・・良い迷惑だと思う。
しかし、この距離を・・・。
僕は、その事実を理解する。
自然体の様に立っていた彼は、離れていた筈の僕の目の前に存在し、円を描く様にその長剣を振るっていたのだ。
正確には、そうであろう・・・との推測である。
僕の視覚では、捉えられないスピードだと、認識する。
「な!」
それを見た蔵姫が、声を漏らす。
それもそうだろう、蔵姫は彼の動きに反応しきれていなかった。
現に、蔵姫が視線を配ったのは、朝霧と長剣がぶつかり合った後なのだから。
ガン!ガン!ガン!
複数度、朝霧と長剣はぶつかり合う。
我ながら、よく受け止める事が出来ると思う。
僕は既に、視覚で追う事を止めていた。
辛うじてと言うべきか、朝霧の情報のみで、それらに対応する。
・・・正直な所、あまり芳しくない。
「どう言うつもりだ!ヴィシャス!」
蔵姫は、感情を露にする。
ヴィシャスと呼ばれた男性は、緩やかに見える動きで、つまらなそうに構えを解く。
もっとも、だからと言って、隙が在るようにも見えないのだが。
「価値の無い物を相手にしても、仕方がないだろう」
僕への攻撃を止めたヴィシャスは、蔵姫へと、冷たく言い放つ。
「一族を皆殺しにし、私のみを殺さなかったお前がそれを言うのか!」
蔵姫は怒気を吐き、僕としてはその台詞から、非常に簡単に蔵姫の事情を理解する事となる。
まぁ、そんな所だろうとは考えていたが、復讐・・・と言う言葉が妥当なのだろう。
「未だ自分に価値が在るとでも思っているのか? 愚かな妹よ・・・」
ヴィシャスはそう言って、蔵姫を蔑み、何か自分の中のスイッチを入れる様に、言葉を続ける。
「このまま相手をするのも面倒だ。ならばお前の勘違い、正すのもよかろう」
その瞬間、空気が変わる。
「へぇ~♪」
僕は感心し、思わずにやけてしまう。
「劣る事を罪とは言わぬ」
そう言いながら、ヴィシャスはそれを当たり前の様に纏う。
白華音と対峙した時、一瞬蔵姫が見せた『恐怖』
それ以上の物を僕に見せる。
ヴィシャスの纏ったそれは、余程のプレッシャーなのだろうか?
「く!」
ヴィシャスの言葉に、蔵姫の顔が、青ざめる。
「まぁ、かろうじて合格か・・・」
僕はヴィシャスに対し、値踏みをする様に呟く。
少し足りないが、僕が楽しめる程度の恐怖が、そこには在った。
離れている筈の北条は、そのプレッシャーに当てられたのだろう。
嘔吐し、その切ない声がここまで聞こえる。
「大変だな、北条・・・」
僕は、思わず苦笑いをしながら、独り言を呟く。
「見ろ、この少年を。何処で知り合ったかは知らぬが、顔色一つ変えぬぞ」
そうヴィシャスに話掛けられた蔵姫は、何かに縛られる様に硬直し、耐える様にする。
そしてヴィシャスは、続ける。
「それに引き換え、この程度の恐怖で臆するとは・・・、我が妹ながら、出来損ないは出来損ない。ゴミはゴミと言う物だ」
ヴィシャスのその言葉には、ゴミ虫を見る様な、哀れみまで混じっている。
「それとも、力を発動させれば、どうにかなるのか?」
尚も続けるヴィシャスは、緩やかに蔵姫に近づき、いとも容易くその首を鷲掴みにする。
「かはっ!」
動く事が出来ない蔵姫は、なすがままに、その表情を歪める。
絶体絶命と言った所だろうか?
「さて、始めてみようか」
そう小さく呟いたのは僕で、二人のやり取りなどには関係なく、行動の宣言をする。
僕は急ぐ事無くバルブを開き、僕を構成する全てを絞り出す。
軽く首と肩を回し、リラックスを意識する。
出し惜しみは、彼にとって失礼と言う物だろう。
ガン!
間合いをつめた僕の大振りの一撃を、ヴィシャスは、その長剣で容易く受け止める。
「何のつもりだ?」
ヴィシャスの質問に、答える気などは無い。
僕は後ろへと回り込み、尚も朝霧を振る。
ガン!
ヴィシャスは半身を捻る様にして、それを弾き返す。
蔵姫は尚も、もう片方の腕にその動きを縛られて居る。
苦しそうにもがく事しか出来ない・・・と言う所だろうか。
「卑怯とは言わないが・・・」
ガン!ガン!
ヴィシャスが何かを言おうとして居るが、僕は関係無く朝霧を振るう。
「・・・」
そんな僕に、彼は言葉を止める。
ヴィシャスは何か癇に障ったのか、不意に剣の軌道に、蔵姫を差し出す。
そうすれば、僕が剣筋を止めるとでも思ったのだろうか。
・・・・だから?
それが僕の感想。
僕はヴィシャスの致命傷となる一振りを、蔵姫ごと葬るその一撃を、何の躊躇いも無く選ぶ。
勝負はそれで決まる筈だったから。
・・・筈。
ヴィシャスは蔵姫を盾にし、僕は蔵姫ごとヴィシャスを切ろうとする。
結果、その一振りの一撃を防いだのは、盾にされた蔵姫だった。
蔵姫にとっては・・・多分、『またか!』と言う、僕の行動。
それは、僕の考えた結末とは、違う結果。
無理やり身を捻るようにした蔵姫は、白薔薇で朝霧を防ぎ、その衝撃で無理やりヴィシャスの腕から逃れる。
不本意とは言え、美姫のお願いを、少なからず達成している事となるのだろうか?
「ちっ」
僕が舌打ちをし、
「げほっ、げほっ」
と蔵姫が酸素を求め咳き込み、
「あははははははは!」
それを見たヴィシャスが高笑いをする。
「その存在、土地神でも現れたのかと思って居たが、そうでも無いようだ。少年・・・、何者よ?」
ヴィシャスは何か、面白い物でも見つけたかのように、僕に視線を固定する。
「礼儀知らずの人間に、名乗る名を持っていない」
僕は北条が僕に言った様に、先に襲い掛かってきたヴィシャスに、感情を込める事無く言う。
「ほぉ・・・、我を人間扱いするか・・・少年」
僕の言葉が以外だったのか、ヴィシャスは楽しそうに笑う。
「ふざけるな!」
言ったのは蔵姫で、そう言いながら、僕とヴィシャスの会話に割り込んでくる。
動ける所を見ると、何かの束縛から逃げ出せたのだろう。
しかし、そんなに睨まなくても良いだろうと言う位、蔵姫は僕を睨む。
「どいつもこいつも私を馬鹿にする!あぁー使ってやるよ!力を!」
蔵姫は余程頭に来ているのか、普段のクールガールな衣を捨てる。
その『力』の意味は判らないが、ヴィシャスにほんの少しの関心の様な物が見える。
僕としても、不完全な恐怖よりも、そちらに興味を覚える。
僕はヴィシャスと共に、一歩引き、その力とやらを確認する事にする。
「後で覚えていろよ・・・」
蔵姫は小さく呟く。
彼女に乙女チックな所が在るのであれば、それは僕に対してなのだろうか?
その瞬間、ヴィシャスがしたように、蔵姫は恐怖を纏い、その光をどす黒い物へと変貌させる。
ただ違いがあるとすれば、ヴィシャスの様に瞬発的な物では無く、緩やかに、流動的にその姿を変える。
「まずいな・・・」
僕はそう呟き、その対象である蔵姫は、地を蹴る。
そのスピードは、ヴィシャス同様、僕の視線では追えない程となる。
それは、化け物だと認識した上で、さらに感嘆の意を表して良い物だった。
そして複数度の衝突音。
先程とは比べ物にならない程の、土煙と、その衝突による衝撃波。
ヴィシャスは白薔薇を振り、蔵姫は容赦の無い打撃を繰り返す。
見た目的には蔵姫の押す形となるが、朝霧の情報は、それと反する情報を僕にくれる。
・・・。
・・・。
本気の蔵姫に、ヴィシャスは手を抜いている。
なんだろう?
僕は自分の中に、苛立ちを覚え始める。
弄ばれて居る・・・、そんな所だろうか?
僕が蔵姫を弄ったり、殺そうとするのは別に良い。
だが、他の奴に弄ばれている蔵姫を見ていると、なぜか面白くない気分になってしまう。
「蔵姫」
僕は空気を読まず、蔵姫を呼ぶ。
蔵姫は尚も、ヴィシャスへの攻撃を止めない。
「蔵姫!」
僕は尚も、蔵姫を呼ぶ。
自分の感情が、これ程高まっていく事に、僕は違和感を覚える。
「蔵姫!!」
僕は蔵姫を呼ぶ。
尚もヴィシャスへの攻撃を止めない蔵姫に対し、そろそろ僕の感情は限界へと近づく。
「蔵姫!!!」
僕は、これ以上無いと言う怒鳴り声で、蔵姫を呼ぶ。
多分、僕としては、それが最終勧告。
「な!?」
蔵姫は間の抜けた声を出して、僕を見る。
それまでのヴィシャスへの猛攻は、まるで嘘のように止まり、一瞬の沈黙が訪れる。
ヴィシャスは冷やかに、その状況を見ていた。
「蔵姫、お前では無理だ」
僕は冷やかに、高圧的に言う。
根拠が在った訳では無い。
僕としてはありえない事だが、そう感じたのだ。
「じゃ、邪魔をするな!端鷹!」
蔵姫は尚も恐怖を纏ったまま、僕の言葉に狼狽する。
彼女は今、自分に何が起きているのか、理解出来ずに居るのだろう。
ヴィシャスを目の前に、何故自分は、何故僕の声で拳を止めたのか・・・と。
「可能性の一つとして、生かして置いたが、とんだ茶番だったようだ」
ヴィシャスはそんな蔵姫を見、残念そうに呟く。
「可能性?」
僕はオウム返しに呟く。
何に対する可能性なのだろう?
「貴様の理屈など、私には関係ない!私は私の目的を果たす!!」
蔵姫は、らしからぬ大声をたて、何かを振り払おうとする。
「だまれ雌。 いや・・・、雌豚か。お前が我に近い存在だと言う事実に反吐が出る」
ヴィシャスは嫌そうに、蔵姫を蔑む。
蔵姫は地を蹴っていた。
恐らくは渾身の一撃を放つつもり。
「愚かな・・・」
ヴィシャスは薔薇と思われる長剣を大きく構え、それを迎え撃つ。
「北条!!死ぬ気で結界を張れ!!」
僕は蔵姫ではなく、北条へと声を掛ける。
正直、朝霧からの情報は、僕の思考的に『逃げろ』と、判断するに十分な物だった。
これ程か・・・。
蔵姫を弾き飛ばしたヴィシャスは、その力を解放したのだろうか?
『アレ』を超える『恐怖』を纏う。
・・・。
いや、そうでは無い・・・。
それは在る意味、美姫の・・・美咲の綺麗な光に近い物と識別をする。
「あ・・・、あ、あ・・・」
弾かれた蔵姫は、立ち上がるも何か呆ける様に、虚ろにヴィシャスを眺める。
「馬鹿が・・・」
僕はそう言って舌打ちをする。
蔵姫は、力を解放したヴィシャスに、ヴィシャスのその力に当てられて居るのだ。
しかし、ヴィシャスの放つ『恐怖』とは、それ程なのだろうか?
そう思い、北条の方を確認する。
無事なようだが、彼女は一切動こうとはしない。
たぶん、結界を全力で使っているのだろう。
「クラキの名を持つ物が、他者に心を奪われたか・・・、出来損ないどころか、ゴミ以下で在ったか」
ヴィシャスは不意に、寂しそうな表情を見せ、剣を振るおうとする。
これで終わりだなと、僕は判断をする。
蔵姫は間違いなく、切り殺される。
・・・、
・・・、
・・・、
何故だろう?
僕は、今までした事の無い程の瞬歩・・・いや、縮地を自分の身体に強制する。
ザク!
腹部に鈍い痛みを感じる。
その感覚と共に、昔感じた、懐かしい匂いを思い出す。
・・・あ、これは致命傷。
僕は、自分の身体に起きた事を、瞬時に理解する。
僕は、ヴィシャスに切り殺される筈だった蔵姫を、突き飛ばしていた。
助けた理由は・・・、解らない。
その結果、僕はヴィシャスに、切り殺される事になる。
蔵姫をつき飛ばした瞬間、「えっ・・・」と言う、何かに驚く少女の声を聞いた。
それは、今まで聞いた事の無い、蔵姫の声である。
僕は恥ずかしい程に豪快に倒れ、突き飛ばされた蔵姫は、その脇でただ僕を見詰める。
「在りえない・・・」
僕は呟く。
僕は、人生で初めて、後悔と言う言葉を理解する。
僕は自分の行動が、理解できない。
僕は自分の状況が、理解できない。
僕は自分の思考が、理解できない。
「消滅しないだと?」
僕の思考とは別に、ヴィシャスは困惑の表情を浮かべる。
その意味を考える事は無意味で、僕の生命活動は、着々と終焉へと近づいていく。
そんな時だろうか?
それは起きる。
ドーーーーン!
派手にその音は響き渡る。
起きたと言うよりは、現れたと言うのが正解だろうか?
衝撃と共にそれは飛来し、土煙を上げながらの強制制動で、その場に着地していた。
その場に居る全員が、その存在へと、意識を向ける。
「さくらさん・・・?」
「喋るな端鷹!!」
倒れたままの僕の呟きは、振り返る事無く言われたそれに、静止される。
「ルゴサ・・・いや、神喰らいだったか?」
ヴィシャスは冷やかに、それでも威嚇するように、さくらさんを睨む。
「そうね、クラキ・・・いえ、今はヴィシャスだったかしら?
私の事を覚えて居るのなら、それだけで良いわ」
さくらさんは静かに、それでも高圧的に、ヴィシャスと対峙する。
ヴィシャスを目の前にしてのそれは、さすがと言うべきなのだろうか。
・・・、
ただ、今までに無い程怒っているのは、僕に対する怒気で、なんとなく判る。
「これ、私の知り合いなの。それも、とぉ~っても大切な。言ってる意味、判るわよね?」
さくらさんは、上から目線でそれを言う。
だが、さくらさんの光の揺らぎ・・・、
少なからず、それが虚勢である事の表れなのかも知れない。
「先に手を出したのはそれら・・・、しかし、白薔薇戦争の立役者であろう貴様の言葉、無下にする事も無いと言う物」
ヴィシャスは何か、含みの在る言い方をする。
「あら、貴方の言い振り、端鷹が先に手を出したのかしら?」
さくらさんは、高圧的にヴィシャスへと言葉を投げ掛ける。
「違うと言うのか?」
ヴィシャスは怒気を強める。
「そこに突っ立っているだけの、貴方の身内と一緒にされたら、いい迷惑だと言っているの」
さくらさんは、蔵姫を一瞥し、ヴィシャスへの視線を強める。
どうやら、彼女は二人の関係を知っている様だった。
「くっくっくっく」
ヴィシャスは面白そうに笑う。
「楽しそうね」
「いや、失礼。あのルゴサが必死に庇うのでな」
「大切・・・って、言ったでしょ」
さくらさんは、つまらない事を言われた様に、短く言う。
ヴィシャスは僕の方に視線を向ける。
「少年、・・・我を呼んだのは、貴様か?」
ヴィシャスは何か考えるように言い、それと同時に、刀を収める。
その問いに、僕は意味と答えを持っていない。
「まぁ良い。 どちらにしろ、我が目的の糧となる事に、変わりは無いのだから」
ヴィシャスはそう言って、何事も無かったかのように、背を向ける。
開放されていた力は元の鞘に納まり、今は、僕の感じる事の出来ない『恐怖』を纏っているのだろう。
「引いてくれるのね」
そのまま立ち去ろうとするヴィシャスに、さくらさんは高圧的とは言え、感謝めいた事を言う。
「寝言を言うか?ルゴサ」
ヴィシャスは瞬間、邪悪を絵に描いたような笑みを見せ、楽しそうに笑う。
「わが進化の糧、人ならざる者を目の前にして、それはナンセンスと言う物だろう?」
人ならざる者・・・・。
「残念だけど、端鷹は人間よ」
さくらさんは敵意を隠す事も無く、ヴィシャスを睨む。
「うぬは、理より外れし者を『人間』と言う・・・。悲しいかな、それは己までもが人間と言う事ぞ、ルゴサ」
「・・・問答をしている気は無いの」
さくらさんはその言葉を、切り捨てる。
「まぁ良い。 その少年が何であれ、もう少し楽しむ事にしよう・・・」
ヴィシャスの言葉は、穏やかと言って良いほど、緩やかな物となる。
「この町には、興味深い存在が非常に多いな。いやいや、面白いと言うべきか何と言うか、そうであろう?覗き込む少女よ」
誰に対しての言葉なのか、ヴィシャスは空を見上げながらそう言い、その場を後にする。
さくらさんは、ヴィシャスが視界から消えるまで、その注意を向けている様だった。
「端鷹さん!今手当てしますわ!」
そう言って、北条が駆け寄ってくる。
ヴィシャスが力を収め、離れた事によって、彼女は本来すべき行動を取ったのだろう。
基本的には、良い娘なのだと、認識する。
北条が僕に対し、両手をかざす。
何か、術の様な物を発動させて居るのだろうか。
「悪・・・い北条、多分・・・無理だから・・・」
僕は、そろそろタイムオーバーかな?などと考えつつ、必死にそれを続ける北条に、笑いかける。
「大丈夫です!私、実はこちらの方が得意ですの!」
僕の身体の事情を知らない北条は、そう言いながら、その発する光を強めていく。
そんな時だろうか?
パチーン!と、やたらと響きの良い音が鳴り、僕はその方向を見る。
ヴィシャスの姿は既に無く、さくらさんは蔵姫の目の前に立っていた。
「弱いのね貴女、それじゃぁ端鷹に心を別けて貰う資格・・・無いわ」
蔵姫が頬を赤くし、さくらさんは、右手をスイングさせていた後だった。
いわゆるビンタ? または平手打ちと言う奴だろう。
蔵姫は何も言わず、叩かれるままにして居たようだった。
あの蔵姫が?・・・どうしてなのだろう?
「どうしてですの!」
ふと、僕の疑問に呼応する様に、北条が声を上げる。
「どうして傷が塞がりませんの!」
北条は、血の止まらない僕の傷口に手をかざし続け、その表情を凍てつかせる。
残念ながら、僕にその状況を説明する暇は、もう無かった。
「邪魔よ」
・・・?
いつの間に側に来て居たのだろう。
さくらさんは北条に、冷たくそう言う。
「え?」
北条はその声に驚き、次の瞬間、「きゃー!」と言う声と共に、弾き飛ばされる。
さくらさんが裏拳を放っていたのだ。
「護部、御前達の対処できる次元など、とうの昔に超えている」
さくらさんは、北条に視線を送る事無く、淡々と言う。
「どう言う意味ですの!神の代行者で在る護部にその言い草!貴女のこの土地での行動に、制限を掛ける事も出来ますのよ!」
北条は、さくらさんに対し、威圧するように強く言う。
「桜守としての権限を行使する。それでも邪魔をするのであれば、貴様らの言う『神』諸共、私がこの世界から抹消する」
「桜守ですって?」
北条はそう言って、僕へと視線を向ける。
「朝霧の所有者と桜守・・・。そうでしたの・・・、初めから枠の外でしたのね・・・私達」
北条は、そう言って肩を落とす。
彼女は何に納得し、何に落胆したのだろう?
「端鷹・・・、もう少し持たせられる?」
さくらさんの声に、僕の疑問は掻き消える。
「まぁ・・・、出来ない・・・事は・・無い・・・かな?」
僕は、途切れ始めた息を使い、事実を伝える。
それを聞いたさくらさんは、僕を軽々と持ち上げ、両手で抱える。
少し恥ずかしいが、お姫様抱っこ・・・と言う奴である。
「悪い・・・」
僕は、それだけを言う。
恐らく、僕にとっての『最善』をしてくれる筈のさくらさんに、感謝の意を込める。
「喋らないで。貴方は一秒でも長く延命をする努力をして」
そう言ったさくらさんは、凛とした言葉とは裏腹に、何かを恐れるように怖がる様に震えている。
それがヴィシャスの『恐怖』の為なのか、それ以外の『恐れ』なのか、僕には解らなかった。
そして、地面が砕ける音と共に、僕は心地よい重力を感じる事になる。
目を閉じ、身体コントロールに集中していても判る。
さくらさんは僕を抱えながら、必死に、これ以上無い位の速度で駆けていた。
『ありがとう。大好きだよ、さくらさん・・・』
僕は心の中で、もう一度さくらさんに感謝の言葉を言う。
「ばか」
意識が落ちていく中で、さくらさんが本当に言ったかどうか判らない言葉が聞こえる。
僕は、それを聞きながら、僕の世界へと帰っていく。
それは何時もの事・・・。
そう・・・、何時もの事。
・・・。
・・・あれ?
僕は、何処に存在しているのだろう?
僕は、何処に帰るのだろう?
意識が消える寸前、陽炎じゃあるまいし・・・と言う僕の言葉に『そうでしょうか?』と言った北条の姿を思い出す。
・・・、
・・・、
まぁ良い。
・・・・・・・・・・・。
僕は・・・僕の世界へと・・・落ちて行く。
もう少しだけ、続きます。




