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祭りの後

 ここはどこかしらね?


 目を覚ました時、私は拘束されていた。

 目隠しもされている為、何も見えない。

 猿轡をされているのしゃべれない。


 複数の足音がした。


 それが私の前で止まる。


 そして、目隠しと猿轡が外された。


「プリシア・ロックベルク様でお間違いないですか?」


 男たちは酷く緊張していた。


「間違いないわよ。ロックベルク家の令嬢たる私がなぜこのような仕打ちを受けているのかしら?」


 私は不敵に笑ってみせる。

 

 男たちは驚いていた。

 

 男がオドオドする姿を見るのは愉快だわ。


「あ、あなたには裁判を受けて頂きます」


「裁判?」


「ロックベルク家の炎上と二十八人の殺害の嫌疑が掛けられています」


「へぇ、二十八人。結構殺したわね。楽しかったわよ」


 私は明るい口調で答える。 


「では、間違いないのですね?」


「ええ、間違いないわ」


「……かなり厳しい判決が出ると思ってください」


「覚悟はできているわ」


 私が全く動じていないのに、男たちは顔を青くする。

 



 次の日の裁判で私は『死刑』の判決を受けた。


 この国では午前中に死刑判決が出れば、即日執行される。


 執行方法は斬首刑。


 判決の瞬間、「刑が軽すぎる馬引きに処せ!」という怒号が飛んだ。


 私が名門令嬢であり、まだ子供だったことによる配慮みたい。


 私は昼過ぎに最期の食事を済ませると、執行人が迎えに来た。


「失礼します。本日、あなたの刑を担当するシヤサン・ギーヴァと申します」


 罵られることを予想していた。

 

 けど、目の前に現れた執行人は礼儀正しく、私に一礼する。

 女性を馬鹿にしている様子がなかった。


「ギーヴァ? どこかで聞いた気がするわ」


「息子が先日の武闘大会であなたと戦いました。あなたとはいつか会いたいと思っていたのですが、このような形になって残念です」


 あの時に青年のお父様だったのね。

 言われてみると顔が似ているわ。


「刑の執行の際に髪が邪魔になります。切らせていただいてもよろしいですか?」


「あなたのやりやすいように任せるわ」


 シヤサン・ギーヴァは、私の髪の毛に優しく触れ、短く切り添えていく。

 こんなに優しい散髪は初めて。

 

「これに着替えてください」


 シヤサン・ギーヴァは白地の服を渡す。

 私は素直に従い、それを着た。


「手は縛らなくていいのかしら?」


 私の言葉にシヤサンは少し驚く。


「気遣いは無用よ。いつも通りの手順でやってちょうだい」


「……分かりました。失礼します」


 シヤサン・ギーヴァは丁寧に私の手を後ろで縛った。


「失礼と思いますが、首筋に触ってもよろしいですか?」


「なんの為かしら?」


「…………」


「今更、気を使わなくていいわよ」


「首を確実に落とすためにあなたの首の太さや骨の発達を確認したいのです」


「そういうことなら、ぜひ、お願い。何度も斧で斬りつけられるのは嫌だもの」


「…………それでは失礼します――――――痛くはないですか?」


「ええ、大丈夫よ。あなたは男なのに女の扱いが丁寧ね」


「男女は対等なものだと思っています」


「あなたの息子も同じことを言っていたわ。素晴らしい考えだと思う。その考えが広がることを私も願っているわ」


「はい、そうすれば、あなたのような悲劇を繰り返さずに済みます」


 シヤサン・ギーヴァは哀れむ視線を、私に向ける。


「悲劇? いえ、これはとても楽しい喜劇だったわ。第一幕が武闘大会、第二幕が屋敷炎上、そして、これからが第三幕、いえ最終幕ね。一緒に踊って頂けるかしら?」


 ここまで言うと、シヤサン・ギーヴァは苦笑する。


「あなたはとても豪胆ですね…………お付き合いしましょう」


 私は部屋を出て、馬車に乗せられる。


 民衆の怒号が聞こえてきたわ。


読んで頂き、ありがとうございます。


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