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少女の挑戦

 バルガラ王国は富国強兵を掲げる国。

 その中で女性の地位はとても低い。


 女は男に従いなさい。

 男に逆らってはいけません。


 男は強い。

 女は弱い。


 女は男の所有物。

 それが女の幸せ。

 


 私、プリシア・ロックベルクはそう言われて育ったわ。


 いずれはロックベルク家と同等か、それ以上の名家に嫁ぐ予定。

 男の所有物として、面白くはないけど、不自由のない人生を歩むはず。


 でも、それをとてもつまらない、と私は思ってしまったわ。


 同時にこうも考えたの。


 女性の立場が低いのは弱いのがいけない。

 なら、強くなれば、従う必要はない。


 私が十一歳の時、お母様が死んだ。


 お母様はお父様に虐げられていた。

 私は同じ人生を歩みたくない。


 私は男より強くなりたい。

 男の強さを自覚はしている。

 それでも私は屈服ではなく、抵抗を選択する。


 その為に時間がある時は、兄のジーライのお付きとして鍛錬を見て、動きを学んだ。


「プリシア、お前もやっと兄の、男の偉大さが分かったか」


 兄は反抗的だった私が従順になり、満足そうだったわ。

 

 私が素直に従うようになってから、兄の傲慢さは増した。


 顔が整っている私を同世代の貴族に紹介し、召使いのような仕打ちを受けた。


「お前もいずれは名家に嫁ぐんだ。女が何をする生き物を教えてやろうか?」


 兄は下衆な顔でそんなことを言う。 


 でも、私は何とも思わない。

 いずれ、男たちに分からせてやるんだ、と心に誓った。


 十二歳になった時、私は屋敷の本館から別館に移った。

 これは前から、お父様にお願いとしていたこと。

 最近は女性として大人しくしていたので、お父様も「それぐらいの我儘はいいだろう」と承諾してくれた。


 私が別館への移動を希望した理由は一つ。

 ここの方が使用人の数が少ない。

 屋敷を抜け出しやすい。


 別館に移ってから、私は夜、屋敷を抜け出すようになった。

 私は誰もいない森の中で、屋敷から持ち出した練習用の剣を構える。


「剣の持ち方はこうかな?」


 上段から剣を振り下ろす。

 自分でもその動作がぎこちなく、とても弱々しかったことは良く分かった。


「素振りを各型、百回ずつそこから始めようかしら」


 私の挑戦はこの日から始まった。

 初日、素振りを終えた時、明かりとして持ってきていた蝋燭は燃え尽きた。

 それに空は少し明るくなっていた。


 素振りが終わるまでに多くの時間を要した。

 屋敷に戻った時はフラフラだった。


 沐浴をして、少し寝て、兄の付き人をする。

 不審に思われてはいけない。

 日中は今まで通りに過ごさないと…………

 

 睡眠時間が減り、日中はずっと眠かった。

 手のひらはボロボロになり、それを隠すために常に手袋をするようになった。

 それでも鍛錬を止めなかった。


 男の所有物になって、一生が終わるなんて嫌!

 私は一人の人として生きるんだ。

 

 素振りを初めて一か月が経った。手のひらはボロボロになって、痛みに鈍くなった。


 素振りを初めて二か月が経った。手のひらの皮が厚くなり、皮がむけることは無くなった。


 素振りを初めて三か月が経った。昼間、起きているのが辛くなくなった。


 素振りを初めて四か月が経った。素振りを終えても息が乱れなくなった。


 素振りを初めて五か月が経った。

「蝋燭が全然、減ってない」


 やっと自分自身の変化に気が付いた。


 剣を振る姿が様になってきたような気がする


「そろそろ、誰かと戦ってみたい」


 変化を実感する場所が欲しくなった。


 しかし、バルガラ大王国にいる限り、女にその機会はない。


 兄にいきなり〝手合わせ〟を申し込むわけにもいかない。

 どこかに力を試す場所は無いかな?


 しかし、その機会は訪れず、初めて剣を振ってから一年が過ぎた。


「今年もこの時期がやってきましたな」

「そうだな。ジーライ様が今年も優勝するだろう」


 使用人たちの会話が聞こえてきた。

 使用人たちが話しているのは武闘大会のことだ。


 バルガラ大王国の次世代を担う十四歳以下の男子による大会である。

 この年はプリシアの住む王都で行われる。


「これだわ!」


 大会の当日、私は体調不良を理由に武闘大会への同行を断った。

 そして、使用人たちを目を盗んで屋敷を抜け出した


 女であることを隠すために仮面する

 そして、受付を済ませた。

 大会に紛れ込むのは簡単だった。

 金銭さえ払えば、細かい審査もなく、予選の登録が出来た。


 飛び入り参加の私は、まず予選を戦わなければならない。

 

 闘技場に二〇名の参加者が入場する。

 借り物の防具と訓練用の剣を渡される。

 自信溢れる表情の者、緊張している者、、様々だった。


 私はどんな顔をしているのかしら?

 多分、笑っているわね?

読んで頂き、ありがとうございます。


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