始まり②
翔は召喚されて床に転がっているM40a5とnightforce NX8スコープ、そしてマガジン、.458Win Mag弾を持ち上げた。
そのまま目の前の席に座りマガジンに弾を込めていく。
周りを見てもあんまり銃器を武器にしている生徒はいない。
なんなら魔法を獲得したっぽいやつまでいる。
「やっぱり俺らはこれだな」
ぽんぽんと軽くmk18を叩いてみる。
「そういえばギアつけなくていいん?」
そう言って翔は俺の胸を指す。
「この能力、召喚したいものの正式名称を言わんといけなくて....。ギアはあんまり知らんくてな」
「じゃあ俺が決めてもいい?」
「ん、いいよー」
むしろ助かったと思う。
胴体に何もつけてないのは心配でたまらない。
「ブレザーの制服に合うギアは何がいいかなー。
あっ!5.11 tacticalのTacTec Platecarrier のblackがいい!」
(プレートキャリア:防弾ベストをシンプルにしたようなギア。最低限の部位を守る。
Mollシステムにより様々なアタッチメントを装着する事ができる。やはりサバゲーマーに人気だ!)
言われた通りの物を2つ出してみると確かに制服に合う。
シンプルで動きやすいデザイン、そして黒がネクタイとジャケットと相性がとても良い。
プレートにSAPIアーマーを挿入して頭から被る。
俺と翔はガッチガチの装備に固めて、いつものサバゲースタイル+制服になった。
ツノとクボは体が細すぎてアーマライト系の武器はコントロールできそうに無い。という事でベクターを渡しといた。
そして体躯のいいムッティにはM14のEBRを渡す。
ついでにこのメンバー全員にはプレートキャリアを配った。
「これならどうにか戦えそうじゃん」
誰かがそう言ったが、確かにこのメンバーなら生き残れそうだ。
「おい....。なんか来てないか?」
「誰かが廊下の窓から遠くを覗きなにかを見つけたようだ。
「翔、M40a5貸して」
M40を借りて覗き込むとファンタジー世界定番の雑魚モンスターの群れに見える。
ムッティにも渡して覗くよう言ってみる。
「ゴブリンの....群れ?」
それをさらに翔に返す。
「武器はなにを持ってる?」
翔はスコープの倍率と焦点を弄りながら覗き込む。
「大体短剣だね、あとは弓と斧かな」
「うーんまずいね」
奇譚のない意見を言う
「だよなぁ...」
翔も肯定する。
「なんでやばいん?」
ツノが何がまずいの?と言う顔で聞いてくる。
「俺たちみたいなまともな奴が生き物を殺せると思う?」
これを聞いたツノがはっと何がまずいのかに気づいたようだ。
「そう、しかも俺たちみたいに遠距離武器なんて持ってるやつは少ない」
多分躊躇した一瞬を突かれて殺される。
そして誰かが殺されるまで、攻勢にかかる事は無いだろう。
今いるのは3階、上には1年生と2年生がいる5階と4階があるだけだ。そして考えられる侵入経路は今いる高校理系棟の玄関からもう一つは高校文系棟の玄関か中学棟の男子棟、女子棟の玄関から侵入し渡り廊下を伝ってこちらに移動してくるルートだ。
幸いにもゴブリンの群れはまだ学校の敷地に入ってきていない。
もし僕たちに生徒を統率できるような力が有れば校門と壁をうまく使って侵入そのものを防ぐことも出来たかもしれないが、クラスであんまり目立つ方でない僕たちにはどだい無理な話だ。
「俺たちが守ってやるぜ!」
そんな声につられて声のする方に目をむけてみると、クラスの一角で女子に囲まれて盛り上がっているグループがあった。
そのグループはサッカー部とラグビー部が主の俗に言う陽キャたちだ。
皆が皆なぜか手には剣を持っていた。
多分パワーに自信があったんだろう。
その陽キャグループは廊下で待ってる他のクラスの陽キャグループと合流して下の階に向かっていった。
そして彼らが戦いに行ったと言うことは当然武器を持ってるこのオタク+1グループにも行けという視線が向けられるわけで。
「なんで健くんが行ったのに、高田たちは行かないわけ?」
(ちなみに高田とは高田涼 俺の事だ)
女子陽キャグループの1人が軽蔑の視線でこっちを睨みつける。
周りの女子も一緒になって戦いに行けという。
集団になった女の子に敵う男などこの世にいるだろうか?
いやいない。
というわけで渋々教室を出る。
「翔くんはここで私たちを守って!」
翔の彼女ではない別の女子が翔の腕を掴んで行かせまいとする。
困っている翔を他所に彼女らは真のオタク衆に早く出て行けと言わんばかりに表情を満面の笑みに変え手を振っている。
「これはダメなやつやな」
ツノがボソっと耳元で俺に囁く。
「翔を連れていったら俺たちが後ろから刺されるよ上校〜」
久保もツノの考察を肯定する。
そして俺もそう思う。
ムッティはと言うと
「・・・」
黙ってる。
元々女子が苦手なやつだ。
それならと、グロックのドラムマガジンと9×19mm PARA、そして特定省電力トランシーバーをケースで召喚して渡す。
「翔は上から援護頼むわ」
スナイパーライフルがメインの翔は上に残ると言うのはない話ではない。
「ごめんな」
翔がもし分けなさそうに言うが悪いのは翔では無い。
正直この後に及んでこんな事をする奴らには腹わたが煮えくりかえるほど頭にきてたけれども。
「間違っても他のやつに銃もたさんでくれな、FFされそうで怖いわ」
じゃあっと 手をひらひら〜っとさせて失礼しますのポーズで部屋を出ていくことにした。
「他のサバゲーメンバーとは合流せんの?」
聞いてきたのはクボだ。
確かにできたらしたいところだが、今いるメンバー以外合流できない理由がある。
今いないメンバーの多くは他の学年で階が違う、そして同じ学年の残りのメンバーは多分連れていったら女子に殺される。
カースト上位の女子の双子の兄弟だったり、彼氏だったりするからだ。
まぁ、どうせ銃声が聞こえてきたらそいつらだろうから。
「そうだそうだ、みんなゼロインしとこうぜ〜。ちゃんと硬貨持ってる?」
そう、光学機の調整は大事だ。
狙ったところに弾が飛んで行かないんじゃどうしようもない。
廊下の窓をガラッと開けて外に向かって構える。
「じゃあ、みんなも各自で調整始めて」
各々のタイミングで始めるようにいい。自分はとりあえずの的を探す。
とりあえず50mほど先の敷地の外にあったリンゴほどの木の実にした。
チャージングレバーを引きセレクターをセミにする
体を前傾にし、頬をストックにべたっと付けホロサイトを覗き込む。
レティクルの中心を合わせトリガーを引く。
タァァァン
肩に重い反動が掛かり、銃口が跳ねる。
ガスガン のブローバックの比ではない。
僅か右にあった葉が落ちた。
高さは大体いい感じだ。
サイトにあるマイナスネジに10円玉をはめて回す。
200m程度先にある的に当たるようになるまで繰り返す。
数分後
「みんな終わった?」
他の3人を見てみると、ツノとクボが肩と腕が痛そうにしている。
見た目が骨と皮なだけはある。
まぁしょうがない。
「涼、耳が痛いんやけど大丈夫やか?」
聞いてきたのはツノだ。
確かに、発砲音は聴き続けると難聴になりかねない。
という事で、ここは定番のcomtac2 ヘッドセットとレプリカのPTTスイッチ、ケンウッド製の特定省電力トランシーバーを渡す。
(Comtac2:小さい音は大きく、発砲音のような大きな音はカットしてくれる便利アイテム。マイクが付いていて無線機に繋げることもできる)
ついでにサブウエポンにグロック(G17)とホルスター、そしてマガジン三本と9×19mmPARAを渡す。
サブは必須だ。特に校舎内のような狭いところで戦うには。
今のオタク4人衆はブレザーの制服の上にプレートキャリアをつけ、comtacをつけている。
まるでシークレットサービスか何かのようだ。
ゴブリンの集団はすでに学校の敷地内に侵入してきている。
玄関に行った武器を持った男子勢は玄関の鉄格子のシャッターを下ろしているところだ。
他の玄関も同様にしているみたいだが、文系棟1階の職員室前の玄関はガラス張りのドアでシャッターなどない。
突破されるならまずそこからだろう。
「俺たちはどうする?」
ツノが聞いてきた。
「そうだな、渡り廊下から撃ち下ろすのが1番いいんじゃなね?」
全ての玄関が射界に入り射撃のポジションとしてはベストだがガラス張りになっている渡り廊下は弓で射られる可能性もなく無い。
その隣の階段の踊り場の窓からならば身も隠せて大体の玄関は守ることができる。
大体200から400ほどのゴブリンの群れが正門から生徒がいる校舎へわき目に触れず直進してくる。
距離が50mを切った時、ホロサイトのレティクルが綺麗に目標に合いだした。
「じゃあ撃つよ」
他の3人を見てちゃんと聞こえたか確認する。
3人ともうなづきサイトを覗き込む。
人差し指をクッと引く。
タァァァン
発砲音と同時に狙っていたゴブリンの後ろのゴブリンが倒れる。
反動が制御できていない。
続けて他の3人も撃ちはじめる。
撃てば何かには当たり一体一体と数を減らしていくがキリがない。
「LMGの方が良かったんじゃね?」
ムッティが珍しく意見をを言った。
確かに俺もそうは思ったが
「誰かベルトリンク方式の給弾できる人ー?」
そう、これが問題だった。
基本的に我々は実銃を扱ったことがない。
アサルトライフルの基本的な操作が分かるのはガスガン で遊んだことがあるからというだけだ。
撃っても撃ってもキリがないゴブリン達はついに文系棟と理系棟の玄関に下されたシャッターに取り付き始めた。
斧を持った個体がシャッターを叩き、剣を持った個体がシャッターの隙間に剣を突っ込み生徒達と戦い弓を持った個体がシャッターの隙間から矢を射ている。
下からは痛みに慣れていない生徒達の叫び声が聞こえて来る。
「弓持ちを撃て!」
無線を通じて他の3人に伝える。
弓を持った個体はシャッターから少し離れた位置にいるから狙いやすいのではあるが、ゴブリン全体に言えることだが、腹を撃っても即死しない。 正確に頭を撃ち抜くか四肢を吹き飛ばさないと無力化できない。
弾が足りない。
『涼、聞こえる?』
無線で翔が連絡を入れてきた。
「クリアに入ってる。どうした?」
『中学棟に人影が全く見えない』
「まじ!?」
『あぁ』
生徒が全員一緒にこっちに来てると思っていたのは思い込みらしい。
そうなると、もしゴブリン達が中学棟から高校棟に駆け上がってきたら玄関の生徒達は前後から挟まれ、教室にいる戦う術がない生徒達は嬲り殺しに遭うかもしれない。
もし、ゴブリンの生態がファンタジー小説、特にゴブリンス○イヤーにかかれている通りなら女子生徒は巣に連れ帰られるかも知れない。
「移動して中学棟玄関のチェックにいくよ!」
その場にいる3人を連れて渡り廊下を走り文系棟の廊下を抜ける。
文系は女子の割合が多いためか、殆どの生徒が教室に篭っているようだ。
さらに走り抜け文系棟と中学棟を隔てる防火扉の前まで行く。
防火扉に1番近い教室は補講室になっていて多少ドンぱちしても大丈夫そうだ。
「翔、文系棟玄関はまだ大丈夫?」
無線で連絡を入れる。
『まだ大丈夫だけど、持って10分くらいと思ったら方が良いかも。玄関辺りが血が散って紅くなってる。
もしかしたら死人が出ているかも」
「わかった、今から文系棟の防火扉を開けて中学棟に突入して扉をチェックするから文系棟の扉が破られたら教えて」
『わかった、無理はするなよ』
防火扉に銃を向け、ムッティに扉を開かせる。
先に静かに扉の鍵を解除する。
頭に拳を当て2回頭を叩くモーションでブリーチングの指示を出す。
ムッティの巨体から繰り出される渾身の蹴りによって防火扉が勢い良く開く。
開けると玄関が真っ赤に染まっている。
制服姿で立っているのは3人。対して生きているゴブリンは役40体。
廊下が狭くてゴブリンが詰まっているのが不幸中の幸いだった。
すでに10人の男子生徒が事切れて転がっている。
首を刺されて首から鮮血を拭いているもの、腹を斬られ腸が出ているもの手足が無いものなど様々だ。
頭を砕かれ脳みそが露出しているものもある。
玄関の窓のはゴブリンと生徒の鮮血が付いている。
床は血で足を取られそうになっているほどだ。
彼らは引き返そうにも扉の鍵が閉まっていて動けずここで戦うことを余儀なくされたのだろう。
「ムッティ、誤射に気をつけて撃ち込んでくれ」
「OK」
落ち着いた句調で返すと静かにM14EBRを構えた。
ダァァン ダァァン ダァァン
7.62×51弾がセミオートで撃ち出され、発砲音が廊下で反響する。
弾は数体のゴブリンの体を貫いてやっとそのエネルギーを消費し終わる。
「そこの二人早くこっちへ!」
生き残りの2人を助け出したい。
「あいつらに連れて行かれた俺の彼女を助けてくれ!」
生き残りの片方がゴブリン達はの奥を指して叫ぶ。
「無理だ!お前達も死ぬぞ!」
そうしている間にも、ゴブリン達は詰め寄ってくる。
一気に攻めてこないのは単に銃が怖いからだろう。
俺は手にM67グレネードを召喚し脱出に備える
「多分女子は殺される事はない、後で助けに行こう」
殺されないのは嘘じゃないが大事な事は言ってない。
今はとにかく彼らを連れ出すのが先だ。
生き残りの片方が彼を説得をするが言うことを全く聞かない。
『涼、文系玄関がそろそろやばそうだ』
「わかった、そっちも脱出の準備を頼む。これ以上ここにいたら死ぬ。廊下奥の非常階段から脱出しよう。
翔、銃創の治療はできるか?」
『おう、スキルでバッチリだ』
彼女をさらわれた方の生き残りはまだここに残るつもりのようだ。
「悪いな、もう時間がない」
彼の方に静かに近づきグロックをホルスターから抜く。
パンッ
乾いた音が廊下に響く。
俺が無言で彼の太腿に9mm弾を一発撃ち込んだ。
撃たれた彼は当然その場で悶絶しているが、計算通りだ。
「ムッティ、こいつを防火扉の中まで引きずって行ってくれ」
無言でうなづき彼の脇を抱えて引きずっていく。
「ツノとクボは援護!とにかく弾をばら撒け‼︎」
「おう‼︎」
ゴブリンを牽制しつつ防火扉まで後退し、鍵を閉める。
「




