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1-5話 一日目が終わりました


「ヨキー! お風呂空いたわよー。ってなにやってるの?」

「ん? 暇だから手伝ってる」

「手伝って貰ってます」

「……へー。じゃ今度は私が手伝おうか?」

「あ、助かります。ヨキさんもありがとうございます」

「おう。じゃ入ってくる」


イルミと交代するように風呂に入る。

思ったよりも広い。規模は小さいが観光地の温泉施設と言われても納得できる設備だった。


「疲れが取れるな……」


ゆっくりと息を吐く。

なんとなく疲労ゲージが見えたなら、回復に向かっているのだろうと思う。

配信は全カットでいいか。


「ま、男の風呂なんてだれも見たくないだろうし、さっさと出るか」

『出たら教えて欲しいのじゃ。一応見ないようにしておるのじゃ』

「……お、おう」


そっか、忘れてた……。AIとは言え感性は女性型か。

そうだよな。そりゃみたくないよな。


俺はそそくさとでると、宿屋の部屋に入る。


「戦闘自体は今の所地味だけど、リアリティがあるな」


一応配信を意識して、声に出す。

実際、このゲームは面白くなるという確信があった。


「ま、とりあえずは今日は寝るか」


装備をすべてインベントリに収め、ベッドに横になる。

あっという間に睡魔がやってきた。




気が付くと、別の場所にいた。

いや、そこは自分のルームだった。


「あ、寝ると一旦ルームに戻るのか」


そう思いながら、ミリンを視線で探す。

まあすぐに見つかるのだが、ミリンは誰かと話しているようだった。


『おお! もう新たに3人も来ておるのか!?』

「――――――」

『そうか、クレア殿よ。ありがたい限りじゃのう』

「――――――」

『この調子でプレイヤーが増えて、ゲームの方も安泰になればいいのじゃが……』

「――――――」

『そうじゃのう。皆が楽しめるように頑張らなければいかぬのじゃ』

「――――――」

『お主の方もうまくいくといいのじゃ』


そうか、もう3人も新規プレイヤーが入るのか。

自分の配信が役に立っているなら嬉しいが。


「ミリン。戻ったぞ」

まだ気が付いていなそうなミリンにこちらから声を掛ける。

彼女はパッとこちらを振り向き、タタタッと近寄ってきた。


『おかえりなのじゃ。どうだったかのう、初日は』

「まあ、驚きの連続だったな。リアルと見分けがつかな過ぎて錯覚を起こしかけた」

『それが持ち味の一つじゃからのう。まあ、これからの楽しんでくれればよいのじゃ』

「ああ、そうするよ」


そう言って、俺は配信画面に目を向ける。

人数は15人……今14人に減った。


あ、つまらなくて移動したかな、と思っていたのだがコメント欄を見て考えを改める。


・ちょっとこのゲームダウンロードしてくる


「ゲーム世界で会いましょう!」


思わず、そういいながら軽くガッツポーズをした。

自分の配信が本当に影響を与えられるとは思っていなかったが、思った以上に反響があったらしい。

まあ、ゲーム自体のポテンシャルは高い。なかったのは宣伝だけだったので知られさえすればプレイヤーは増えるだろう。


『いや。本当にありがたいことじゃのう』

ミリンも頷きながら、俺の言葉に続く。

しかし、ふと思い出したのか、俺の顔を見る。


『あ、そうじゃ、ステータスの更新はこの寝てる間に行われるのじゃ。確認してみるとよいのじゃ』

「あ、なるほど。そういう更新方法なのか」


俺は頷くと、ステータスと確認する。


能力の方は

HP 100→120  MP 10  SP10→12

力12→15 素早さ8→10 体力11→14 知力10 


数値は増えていたが、どの程度強くなったかはわからない。

ま、起きた後に確かめてみたらいいか。


「そういえば、再ログインはどうなってるのか」

『時間がくれば自動的に。ここで一旦止めたければログアウトもできるのじゃ』

「へー。そうすると、時間経過はどうなるのじゃ」

『一応、次の日という形で処理されるのじゃ。ただ、厳密には時間は過ぎているので、色々な所は少しずつ違うのじゃ』

「まあ、そうなるか」


そう言いながら、リルムと話していていた時に生まれた疑問を聞くことにする。


「なあ、ミリン。これ、リアル一日一時間制限だろ」

『そうじゃなぁ』

「再開した時はゲーム内時間数か月くらい経ってそうだが、その辺どうなってるんだ」


その言葉に、ミリンは悩むようなしぐさを見せる。


『その辺の処理は結構複雑なのじゃが……』

「そうなのか?」

『大雑把に言うと、ゲーム内は23回一週間を繰り返していると思っているといいのじゃ』

「あ、なるほど。回数限定のサザエさん時空だと。でもNPCのAIの思考と記憶は人間とほとんど同じなんだよな。

 その辺の処理はどうなっているんだ?」


ゲームのプレイ時間の上限が一日一時間ならそれに合わせてループさせるのか。

問題はその後の整合性をどうとるか、だと思うのだが。

目の前のミリンは、相変わらず難しそうに眉根を寄せて考えながら言葉を発する。


『うちのゲームは毎日AM11:00~12:00までメンテナンスなのじゃが』

「あ、そうなんだっけ」

『大抵の人は仕事や学校がある時間という事で、そこに設定しておるのじゃが。

 まあ、そのメンテ内容に一つに、NPCの記憶の統合と取捨選択があるのじゃ』

「……いまいちよくわからないが」

『NPC視点では気づかないまま1週間を23回繰り返しているのじゃ。その中でNPCにとって良い未来が選択されるということじゃな』

「余計わからない」


本気で難しい内容になりそうだった。


『極端な例を挙げればどこかのタイミングでNPCが殺されたとするのじゃ』

「ふむふむ」

『NPCの復活はないわけじゃが。23回のループの中1回でも生きていれば、それが採用されるわけじゃ。

そうなると次週には生きている状態でNPCが現れるわけじゃな』

「……それだと結構矛盾がでそうだな」

『だから取捨選択と記憶の統合することで、矛盾を最小限に抑えるわけじゃな。それに記憶というのは元々あいまいな物じゃ。

矛盾があっても、気のせいで大抵はすむのじゃ』

「はあー。そういうものか。殺されたはずなのに生きているは軽くホラーだな」

『まあ、その事実を覚えているのはプレイヤーだけじゃ。それにテストプレイでは問題はなかったのじゃ。多分大丈夫じゃ』

「おい、少し自信がなくなってないか?」

「そんな事はないのじゃ」


難しくて結局よくわからないが、ゲームだからで大丈夫だと脳死しておいた方が良さそうだな。


『よくわかっていないようじゃが……そろそろ、次の日じゃな。いってらっしゃいなのじゃ』

「ああ、行ってきます」


そうして再び意識が白み始め……次に気づいた時には、宿屋の天井が見えることになった。

さて、二日目はどうするかな。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] NPCが一週間を23回繰り返してる、ってなってるけど、それだとプレイヤー側に支障が出ないか? 例えば、現実時間でプレイヤーAが18:00~19:00にログインして、プレイヤーBが18:…
[気になる点] 「へー。そうすると、時間経過はどうなるのじゃ」 ↑これ主人公のセリフなんだけど、「のじゃ」はわざとやってるの? 其れとも間違い?
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