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闇夜ニ其ノ声轟キテ  作者: 鴉柄 明
2/2

群レ成ス異形

集落を出てから何時間かかっただろうか。ひたすら山道を散策するが、異形の姿は全くと言っていい程見当たらない。ましてや、毛1本の痕跡すらもないのだ。

「緋翠、やっぱり変だよ。痕跡のひとつもないなんて。」

「それは俺も思っていた。」

「群れを成すことでなにか変わったのかな?」

「まだ分からない。とにかく今は1匹でも異形を探さないと―」

その時だった。

「きゃぁぁぁぁー!!!」

「人だ、瑠璃!助けに行くぞ!」

「言われなくても!」

声がした方向へ俺達は走った。次第に山を抜け、一般市民の住む住宅地に出た。そこには、既に駆けつけた他の異形狩りの姿もある。

「緋翠!?瑠璃も一緒か?2人とも無事か?」

「ああ、一体何があった!」

「奴ら、ついに民家に入って人を喰い始めた。家の中は血まみれだ。見るに耐えねぇよ。」

「早くも犠牲者が…」

「今、近くにいた同業者が追跡してる。今回の任、簡単には済みそうにねぇぞ…。」

「それはそうと、今回の異形の大きさは?」

「小型だ、恐らく犬型、猫型の異形の仕業だろう。」

「その家、外傷はあったか?例えば窓ガラスが割れていたとか。」

「いや、それが妙なことにどこにも割れた形跡がねぇんだ。」

「…え、ていうことは――」

「ああ、お察しの通りさ。奴らは、犬や猫にそっくりそのまま化けちまったんだよ。それに気づかずに拾って帰って来ちまったんだろうな。可哀想に…。」

「そんな種類が出るなんて…。」

「なに、別段珍しい話じゃねぇだろ。人を喰い始めたんだ。獲物をとらえやすいように進化したんだろう。それとついでに頼まれて欲しいことが。」

「なんだ?」

「この情報をお社様に伝えに行ってくれねぇか?今ここにいる異形狩りは、皆ここら一帯の封鎖で手が回らねぇ。すまないが頼む。」

「分かった。お社様に伝え次第、ここの救援にあたる。」

「助かるぜ。じゃあ、頼んだ!」

「緋翠、行こう!」

「ああ!」

俺達は急いで集落に戻った。水紋師長にこの話を告げ、朱音の所へ向かった。

「朱音、いるか!?」

「緋翠!瑠璃も!そんなに息切らしてどうしたの?」

「どうやら今回の任、ゆっくりもしてられなさそうだ。」

「え?」

俺達は朱音に、先に聞いた話をそのまま伝えた。朱音は、これは仕事モードに入らなくちゃ!、と言って話し方、雰囲気を切りかえた。

「…分かりました。巫女よ、今すぐに社会議の召集を。急ぎ他の社へ伝えねばならぬ事ができました。」

「はっ!直ちに。」

「緋翠、瑠璃。この情報をここまで運び入れたことに感謝します。その異形狩りにも感謝の意を私の代わりに伝えてください。異形の存在が確認された場所へ戻り、急ぎ事の対処にあたってください。事が済み次第、皆をここに集め会議を開きます。

では行きなさい!」

「「はっ!」」

その声と同時に俺達は、被害のあった場所へ駆けた。いや、具体的にいえば駆けようとした。社から麓へ降り、集落に着くや否や、目の前の景色を真実だと受け入れ難かった。


集落の目の前には、小型の異形が群れを成し、この場所が見えているかのように囲んでいた。犬型や猫型、見たことの無いモノまでも、ずらりと並んでいた。一番奥にいた中型の異形の咆哮により、戦いの火蓋が落とされた。


「水紋師長!」

「緋翠、瑠璃!私の背面の補助を頼む!」

「「はっ!」」

迫り来る異形を刀を抜き、銃を握り、屠り、撃ち殺していく。

異形は断末魔を響かせ、黒い灰となり消えていく―――。


どれ程の異形を切っただろうか。撃ち殺しただろうか。

残るは親玉だと思われる中型の異形だけだった。

その形は、遠くからではよく分からなかったが、今ははっきりとみえる。咆哮とは似つかわしくない牛型の異形だった。その表面には歪に発達した筋肉が血管ごと浮き出ていた。

こちら側は体力の消耗が激しく、水紋師長をはじめ、ここに残っていた異形狩りは皆、息切れをし、疲弊していた。

「来るぞ!構えよ!」

水紋師長の言葉に皆構えるが、体はふらついている。

その時だった。

笠を被り、刀を腰に下げた男女が牛型の後ろからゆっくりと歩いてきている。異形はその気配に気づき殺意を、敵視をそちらに向けた――

それは一瞬の出来事だった。牛型が振り向いた瞬間、2人は既に俺達の前まで来ていた。しかも、刀を抜いた状態で。

チリンと彼らの笠に着いた鈴がなると、牛型は黒い灰となり消えていった。

「大丈夫かい?」

「すまない、帰りが遅くなってしまったね。」

「兄さん、姉さん!?」

水紋師長は驚きを隠せず、思わず叫んでいた。

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